シリアル番号 | 703 |
書名 |
風の男 白洲次郎 |
著者 |
青柳恵介 |
出版社 |
新潮社 |
ジャンル |
伝記 |
発行日 |
2000/8/1発行 |
購入日 |
2005/6/25 |
評価 |
良 |
妻の友人の推薦。
藤沢市民病院図書室蔵。
鹿児島出身の海軍大将樺山資紀(すけのり)伯爵の孫娘にして随筆家の白洲正子さんの夫の伝記。正子女史が友人の成城学園講師の青柳恵介氏にたのんで書いてもらったもの。
白洲次郎は三田藩の儒学者の家系に生まれケンブリッジ大卆、9年の滞英中に英国のストラッフォード伯爵と生涯の友人となる。吉田茂駐英大使とともに開戦阻止に動くがならず、開戦前に敗戦を予想して野に下り、鶴川村に引きこもり英国流カントリー・ジェントルマンとして戦後の再起を図る。予想通り、戦後吉田茂に見込まれて 側近として終戦処理を裏方で支援した人である。 新憲法作りに立会い、輸出立国のために通産省を構想して作り、電力業の分割民営化し、自ら東北電力の会長となり只見川系の水力発電の開発を指揮した。前田建設の又兵衛との出会いも面白い。
敗戦後に近衛に早く自発的に主権在民の新憲法を作るべきと進言したが、起用した憲法学者が怖がって、天皇主権を掲げたため、風向きがかわり、近衛は戦犯に指名されてしまういきさつとか有名なジープ・ウェイ・レターをホイットニー宛てにだした 逸話が紹介されている。目的地は同じだが米国のやり方(Your Way)をエア・ウエイとし、日本流(Their Way)をジープ・ウェイとした。自分はあくまで第三者という立場である。
登場人物はこのほかにも池田隼人、宮澤喜一、佐藤栄作、永山時雄、松永安左エ門、今日出海、河上徹太郎、小林秀雄、吉田満、犬丸一郎など多数。
1925-1926の冬季休暇にはストラッフォード伯爵と2人で1924年式W.O.ベントレー3リッター・スピードモデルを駆ってヨーロッパ一周をしている。そのルートはSouthampton, Le Havre, Le Mans, *Tours, Poitiers, Bordeaux, *Biarritz, *San Sebastian, Vitoria, *Burgos, Valladolid, *Madrid, *Toledo, Valdepenas, Jaen, *Granada, *Seville, *Gibraltar, Marseille, Aix, Grenoble, Aix-Bains, *Geneve, Dijon, Chatillon, Fontainebleau, *Paris, Amiens, Abbeville, Boulogne, Folkestone *印は泊地。パリではシャトルまで未舗装の道路を時速100マイルで往復し、ホテルリッツに帰着したときは砂塵にまみれていたと同乗した女性が思い出を語っている。
私欲で動く人を嫌い、常に高所より判断し、行動した人ですばらしい人生を送った人だ。
彼が徳川家の直系の御曹司に人生についてのアドバイスをたのまれたとき、「なにも教えるようなことはないが、確かにいえることは人間は皆死んで腐るということだ」といってから思いなおして、私はケンブリッジでJ・J・トムソンとケインズに学んだ。J・J・トムソンの家のパーティーにも招かれたが、一般的な話題しかしてくれなかったので、自分は評価されていないなと感じたものさ。ケインズの奥さんリディア・ロポコーヴァはロシア人のバレリーナでいつも変った服装でケンブリッジの町をあるいていたことを覚えていると話してくれたそうだ。
鶴川の旧白洲邸、武相荘は町田市能ヶ谷町
1284に現在もあり、一般公開されている。