読書録

シリアル番号 636

書名

文明の多系史観 世界史再解釈の試み

著者

村上泰亮

出版社

中央公論社

ジャンル

歴史

発行日

1998/7/10初版

購入日

2004/06/19

評価

鎌倉図書館蔵。

一見多系的に見える梅棹忠夫の「文明の生態史観」も自成的発展をみせたのはヨーロッパと日本だけという一元的な進歩主義で結局、マルクスの発展史観とおなじ単系に過ぎないとする立場。これに対し循環史観という考え方もある。

一般システム理論を歴史記述に適用している。すなわち自己組織的システムの適用である。資源・気候、の変化、他社会からの侵略などの巨大な外的衝撃が加わる時、自己組織化という人間能力が動員され、社会全体はそれまでとは異質な方向にゆっくりと分岐しはじめる。衝撃が比較的小さかった社会や自己組織化能力の小さな社会は比較的従来に近い方向をたどるに留まって世界全体のなかで枝別れが生じる。農業化・工業化といったような大技術革新、国家形成・帝国形成といったような大組織革新は巨大な分岐化の例である。

一旦分岐が生じたのちしばらくは新しい技術や組織原理が細部にわたって浸透してゆく。組織は新しい原理の下で次第に安定化し、物化し、またあらゆるレベルで原理の応用が試みられる。小規模な自己組織化と自己維持の共同作業となる。
外的な衝撃のありかたが恒常化され、システム内での相互作用が進行する場合は、機械論的モデルで歴史は記述できるようになる。

ヨーロッパと日本の中世封建制の定義として
@政治的に集権されていないこと
A文化的には有史文明に起源をもつ穏やかな統一性をもつこと
B主要な財に関する分配が、主として当事者間の社会的交換によって定まったこと。土地に関する権利が多くの階層の間に分散していること。


トップ ページヘ