読書録

シリアル番号 596

書名

又蔵の火

著者

藤沢周平

出版社

文春文庫

ジャンル

小説

発行日

1984/11/25第1刷
2002/1/15第22刷

購入日

2003/09/04

評価

蓼科高原での避暑中に読む。

藤沢周平初期の短編集。「又蔵の火」、「帰郷」、「賽子無宿」、「割れた月」、「恐喝」の5編を収録。全般に暗い作品である。「又蔵の火 」、「帰郷」を読んだだけで4年間積んで置く。2007に「又蔵の火」、「帰郷」を再読。「賽子無宿」を除き残りの2作品を旅先でよむ。 帰宅してから結局「賽子無宿」も全て読む。

「又蔵の火」は血の繋がらない、叔父と甥の同族相討つ凄愴無残の果し合いの一部始終。そういう時代もあったという感慨はあるくらいだが、筆致は抑制されてはいるがインパクトのある描写ではある。

しかしこの文庫本に収録されている「帰郷」のほうがより面白かった。舞台は木曽路、主人公は若き頃、福島の塗師(ぬし)、後渡世人になった宇之吉、老年になって故郷に帰るが、そこでかっての女に産ませた娘を見つけて、その窮地を身をもって救出して贖罪し、静かにいずこともなく立ち去るというストーリー。巣山正春先生の「木曽高木屋物語」を思い出しながら読む。

「賽子無宿」は千住宿で行き倒れたとき介抱して助けてくれた女への恩返しの話。

Rev. March 20, 2007


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