読書録

シリアル番号 532

書名

恩讐の彼方に

著者

菊地 寛

出版社

-

ジャンル

小説

発行日

-

購入日

2002/10/22

評価

ハンガリー国立オペラ座が来日公演中で東京文化会館でバルツアがプリマとなったオペラ、カルメンを鑑賞した折、歌劇「青の洞門」の広告をみた。原作菊地寛とある。

そういえば若い頃、実在する「青ノ洞門」とそれを掘りぬいた僧がいたという話は子供向けの読み物で読んだ記憶がある。この実話を菊地寛が「恩讐の彼方」という小説にしたという話も深い記憶からおぼろげながらよみがえった。
読んでみようと近くの腰越図書館にでかける。日本文学全集で菊地寛を開くと「恩讐の彼方に」が収録されていた。短編なので小一時間で読んだ。

市九郎という侍が主人を殺して主人の妾と駆け落ちし木曽の鳥居峠あたりで追いはぎをしていたが、いやになり岐阜の浄願寺で出家し了海という僧になる。修行にでて北九州は中津藩の耶馬溪にたどりつき、地元の人のためと21年かけて洞窟を掘りぬくわけだが、親の仇と市九郎を追ってきたかっての主人の息子が地元民の抵抗で洞窟が完成するまであだ討ちを延期するところから「恩讐の彼方に」のテーマが鳴り響く。

さてモデルとなった実話を百科辞典で調べると一人の禅海という旅僧(六十六部)が1721年に掘り始め、30年かかって完成。長さ185mという。僧の俗名は福原市九郎という旧高田藩士。完成後は通行料をとって80才まで生き百両を蓄え、近くの羅漢寺に寄付したという。


トップ ページヘ