読書録

シリアル番号 1332

書名

「西武王国」崩壊 カリスマ断罪と再生への迷走

著者

共同通信社経済部 編集

出版社

東洋経済新報社

ジャンル

ビジネス

発行日

2005/11/3

購入日

2018/03/02

評価



鎌倉図書館蔵

日本経済の陰の部分をえぐった力作。

堤康次郎が創業し、義明がつぶしたコクド(前身は箱根土地)。1/3のペイジが康次郎に割かれている。このコクドは会社役職員の名義をつかって自社株を購 入し、あたかも彼らは一般株主のように装っていたが全て本人は名義を使われることを了解していただけ。この体制を2代目の義明も引き継いだ。

株主と経営者が「同一人物の場合、監視人がいないと本能のままにふるまって破綻にまっしぐらという構図になる。まー!銀行も貸しこんで、最後は身ぐるみは ぐ。この法に外れる行為は義明の代に白日の下にさらされ、長年虚偽記載でやってきたのだが2005年に発覚し、東京地検特捜部の捜査が本格化して国土は崩 壊した。

そもそも堤康次郎が土地開発業に目覚め、土地の値上がりの含み資産で銀行融資をうけて会社をまわしてゆくというスタイルを開発した。バブル期には含み土地資産は12兆円に達した。こうして康次郎は1964年死去する。

それにしても堤康次郎の精力はすざましい。内縁の妻は5人居で実子は7人いる。その他も大勢らしいが数えるのも空しい。義明だってその血を受け継いでいて有名女優を囲っていると聞く。

義明は引き継いだ後、池田隼人のアドバイスで土地開発から手を引く。これは正しかった。義明は父が買った土地に上物のプリンスホテルを建てるとい うことで事業の拡大をはかった。しかし基幹事業の西武鉄道に興味を持つことはなく、最低限の投資ですまされる。このため東急の田園都市線とその沿線開発や 京王の多摩ニュータウン開発のようなものはない。したがって西武、東武沿線はダサいイメージ。鎌倉の七里ヶ浜東、西鎌倉などの住宅地開発もあるが鉄道開発 とリンクはしていない。

義明が手掛けた開発は北海道や新潟の過疎化する地帯のスキーリゾート開発などでバブルが過ぎるとすたれる類のものだった。故にバブルの破裂とともに消え去ったのだ。


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