読書録

シリアル番号 1328

書名

ハーバードが教える 10年後に生き残る会社、消える会社

著者

ジョセフ・バウアー、ハーマン・レオナード、リン・ペイン

出版社

徳間書店

ジャンル

経営学

発行日

2013/4/30

購入日

2018/02/25

評価



鎌倉図書館蔵

原題:Capitalism At Risk :Rethinking the role of business  by Joseph L. Biwer, Herman B. Leonard & Lynn S/ Paine 2011

日本語のタイトルは売らんかな主義で適切ではない。著者の関心事は市場資本主義が問題を抱えているという意識である。

言わんとすることはビジネス界の指導者は他者から与えられたシステムを私益のために利用する単なる参加者として振る舞うだけでなく、システムの保護と向上 と活性化に責任を負う指導者などだと自己認識する必要がある。神の見えざる手によって市場システムは自律的に機能はしないし、政府の介入が市場を救うとも みなしていない。自分でそれをになわなくてはいけないのだ。

ハーバード・ビジネス・スクールは当初、米国の鉄道業などの経営者を育成する理論を構築するために100年前に設立され、大勢のすぐれた経営者を産業界に 供給してきた。MBA資格のないベンチャー企業の経営者の成功率が10%なのにMBA卒業者のそれは50%になる。ハーバード式はケーススタディーと実地 調査を重用視する所が特徴。

●市場資本主義の特徴
資産の私有権
人命と財産の物理的安全性保障
民間契約が尊重される
金融制度が健全な通貨を提供
価格設定の自由
自由貿易
●市場資本主義の促進条件
教育を受けた国民
良好な公衆衛生
有効な法制度
アカウンタビリティーを果たす政府
●ビジネスリーダー達が懸念をしました関心事
所得増加がしばしば不平等拡大になっている点
環境汚染と気候変動と大量移民

20世紀後半は人類史上前代未聞の繁栄期だった。特に中国とインドが発展し始めた。ソビエトが居たおかげで、戦勝国は敗戦国を収奪せず、再建して共産国化 を防止しようとした。おかげで西ドイツと日本がテークオフした。ベルリンの壁崩壊は更に多くの国を市場システムに参加させた。輸送の高速化と通信の改善が 後押しした。そして関税などの貿易障壁が縮小された。こうして前代未聞の成長を達成したのだが、これは持続的なものだろうか?世銀などの見方はいまだ持続性があるというもの。

先進国は問題ありと言えども理由は途上国はまだ成長の余地あり。世界的に中産階級も拡大する余地あり。

ただサブサハラ以南のアフリカの成長が遅いのと所得格差の拡大という問題が残る。また社会的流動性の障壁が高くなっている。途上国から高所得国への移民の 増加。途上国での多量の非熟練労働者の失業。気候変動。淡水不足、品質の悪化。コモディティー価格上昇。中国、インド、ロシアなどの国家資本主義の台頭。 テロ、戦争、伝染病。価値創出の能力が最大化される場所に絶えず移動することになるがそれはアメリカ以外の国に移動することを意味する。こうしてアメリカ は不利になる。

ポスト資本主義時代はすでに始まっている。従来の経済学はパレートの法則を前提にしており、一部の人々がより高い教育を受けた場合には、残りの人はそれによって生じる価値の減少を受け入れねばならない。

正直者が得をする社会。


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