読書録

シリアル番号 1241

書名

この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた

著者

ルイス・ダートネル

出版社

河出書房新社

ジャンル

サイエンス

発行日

2015/6/30初版

購入日

2015/08/12

評価



朝日新聞の書評(評者:島田雅彦)

著者は英国レスター大宇宙局の研究者

冷戦下の米映画「渚にて」は核兵器で世界文明が崩壊したあとの地獄のような世界を描いたが、本著は現代の極端な分業化した社会で はどの個も生存のためのものつくりのノウハウを持っていない。ではそのようなときのためにどうすべきなのかというテーマを深く考察した成果だという。横浜の放送ライブラリーに1982年のTV映画 「終わりに見た街」を見に出かけた折に購入。生き残った人々のために今できることは何かを考察したもの。

結局、工学部、医学部、薬学部、理学部で教えていることをすべておさらいする羽目になった。問題は工学部、農学部、医学部、薬学部、理学部で教えている知 識がすべて手に入るとしても、現在の高度に分業化した世界を再興できるかという問題が残る。そこでててくるアナロジーは中国のほうが技術的に進んでいたの になぜ西洋が追い越したかの考察から導かれる。すなわち人手による手工業をあえてやめて資本を投じ、複雑、かつ高価な機械や工場を作ったのはイギリスに石 炭という安価なエネルギーがあり、労働力は高賃金で、資本は安く手に入ったからである。労働者は自動化された紡績機や織機にとってかわられたのだ。中国で は労働力がやすく、そのようなインセンティブが無かったからそこで平衡状態になったというわけだ。知識があっても収穫逓減の法則がでてきて天然資源を持続 的に利用できるかぎり、文明は平衡状態になるということなのだろう。

日本も目下この平衡状態に達し、製造設備に投資してもリターンがないという状態になっている。中国の人件費が安すぎるのだ。したがって投資先を何にするかだが、人ではないのか?しかし、人といってもどのような人に育てるかが問われているのだろう。

Rev. August 20, 2015


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