読書録

シリアル番号 1190

書名

職業としてのジャーナリスト

著者

本多勝一

出版社

朝日新聞

ジャンル

ノンフィクション

発行日

1984/3/20第1刷
1990/12/20第7刷

購入日

2014/04/22

評価



娘の蔵書

何気なく手に取っていくつかの章をつい読みふけってしまった。例えば;

「小説家はなぜ堕落するのか」では三島由紀夫はアナクロニズムのハラキリ小説家、今東光が自民党から立候補したとき選挙事務長になったり、元警視総監・秦 野章候補を応援したり、最後はガス自殺した川端康成、靖国神社復活のファッシスト集団のメンバー石原慎太郎、都知事選に立候補した石原慎太郎を応援した小 林秀雄、釣り評論家になりさがった開高健、後半生に保守的になった石川達三と江藤淳らが槍玉にあがっている。全く同感。石原を支持し、尖閣で困っている日 本人も東京都民もファッシストに踊らされたドイツ人となんら変わらなかったということになる。

「菊池寛賞を拒否する」では文芸春秋社を日本の右傾化に熱心に取り組む雑誌社として弾劾している。なるほど朝日と仲が悪いわけだ。そして山本七平氏を噴飯ものとけなしている。そして本多は菊池寛賞を返上した。

「菊池寛賞を改めて拒否しなおす」の章では文芸春秋は戦中ペン部隊を軍部に売り込み、戦場に送りだした会社なのだ。いいかえれば文芸春秋に売文している作家は文学売春夫とも言うべき人士だときつい。

この本を読んで朝日と文春は仲が悪い理由がわかった。1970年代初頭、朝日新聞社の大株主の村山家を排除した広岡知男社長や森恭三論説主幹の指導によっ て安保調査会が結成され、反米親中を旨とする編集方針が定まると共に思想的転回を遂げたとされる。だから戦中・戦後を通じて権力の御用雑誌を出してきた菊 池寛創立の文春と仲がわるいわけだ。

ところで広岡知男社長は東京帝国大学法学部卒だが野球選手としても活躍。現在のテレビ朝日系列(ANN)の形成にも大きく関わっている。社長、会長在任中 は、社長時代に2度訪中するなど親中国共産党路線を推し進め、文革など一切報道されなかった。折からの中ソ対立が朝日新聞社内にも波及して親ソ連派の反発 を買い、「反広岡」で手を組んだ村山社主家と渡辺誠毅社長、秦正流専務取締役ら親ソ連派幹部らによって失脚させられた。森恭三論説主幹も東京帝国大学法学 部卒。

まー!マスコミは互いに監視していないと信用できないのでよいのだが。

本多は信州は飯田の出身。京大農学部出で理系。善光寺で修業した越後の僧「月性」の信州人の特性はズバリ本多にも当てはまる。


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