読書録

シリアル番号 1101

書名

十字軍物語 3

著者

塩野七生

出版社

新潮社

ジャンル

歴史

発行日

2011/12/10発行

購入日

2012/2/18

評価



塩野七生氏のローマ帝国史は愛読したがしばらく、お休みをいただいていた。年末のTV番組をみていたら彼女のインタビュー番組があった。インタービュー アーがカエサルについで魅力的な男はだれかと聞いたとき時、彼女は「十字軍物語3を読んでいただければわかります」と答えた。

そこで俄然興味を持ち、ちょうどロンドンに1週間でかけるときの読み物にとこの高価な本を購入。行きの英国航空のなかで獅子心王リチャードを読み終えた。 帰りにはヴェネツィアの元首ダンドロを読んだ。まだのこりは読んでないが、アッシジのフランチェスコは抹香くさいし、皇帝フリードリッヒやフランス王ルイ とも思えないので多分リチャードなのだろう。

今回のロンドンは短期間で一晩ピカデリー・サーカスにでかけただけで、国会の前のリチャードの騎馬姿の銅像は見るチャンスはなかった。

皇帝フリードリッヒ2世はなかなか調味深い人物だった。神聖ローマ帝国皇帝ハインリヒ6世を父とし、シチリアのノルマン家の王女コンスタンツェを母として 生をうけるが両親を幼くして失う。養育は一人の修道士だけだったが、独学で6ヶ国語を学び、科学に強い関心を示すようになった。また、フリードリヒは肉体 面においても馬術、槍術、狩猟で優れた才能を示した。ドイツ諸侯を自ら説得して、神聖ローマ帝国皇帝になる力量を示す。ローマ法王が希望する血を流す戦闘 に持ち込まず、交渉で妥協点を探る。持って生まれた語学の才でアラビ ア語を操って直接交渉するという方式で交渉相手のアル・カミール(サラディンの甥)に信頼されて成功した。中世で最も進歩的な君主と評価される。

逆にフランス王ルイは敬虔なる信 者の愚かさの代表のような人物だ。彼の完敗により、ヨーロッパの十字軍への情熱は消え去るわけだ。塩野はアル・カミールを褒めて「情報とは、その重要性を 認識した者にしか、正しく伝わらないものである」との名言を吐く。

こかしこの後、ヨーロッパはウィーンまで攻め込まれ、かろうじて守ったということになる。

フランス王フィリップ四世は十字軍に行きたくないためテンプル騎士団を弾圧し、その資産を没収してしまう。

神の聖戦こそなくなったが、21世紀のいまでも正戦意識は残っている。正しいということはどういうことなのか?信仰と同じくらいの意味しかないと思うのだ が。

2013/12塩野はフリードリッヒ大王上下を出した。高価な本なので本屋で立ち見すると、カエサルについで魅力的な男は皇帝フリードリッヒということのようだ。

Rev. December 26, 2013


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