読書録

シリアル番号 1089

書名

ゲーム理論による社会科学の統合

著者

ハーバート・ギンタス

出版社

NTT出版

ジャンル

経済学

発行日

2011/7/21第1刷
2011/10/5第2刷

購入日

2011/10/15

評価



原題:The Bounds of Reason by Game Theory and Unification of the Behavioral Sciences by Herbert Gintis

朝日の9月4日の書評に山形浩生がべたほめ。クルーグマンの著書を読むようになったのも山形氏の影響がある。今回も経済をうまく説明できない経済学が少し はよくなるのではないかとの思いとたまたま総合知学会に所属して荻林千葉工科大教授のエージェントベースモデリングで経済政策を検証する手法に期待を持っ ていたこともあり、高価な本であるが買い求めて、1日で読破。といってもむずかしいゲーム理論はとりあえずパス。

著者はもともと数学から経済に転向した人でハーバート、MIT、サンタフェ研などの教授。

英文による本のタイトルは「bounds of reason」である。物質の化学的・生物学的性質が素粒子のせいしつから 分析的に導かれなとと同じように人間社会は、相互作用する合理的主体の分析的 に導かれることはありえない。社会規範を含めた創発性を備えた系だからである。

合理的主体モデルやゲーム理論は利己性を仮定していない。人々が利己的であるという生物学者や経済学者の古びた偏見は急速に消えつつある。

行動科学の統合は
(1)遺伝子と文化の共進化
(2)規範に関する社会心理学理論
(3)ゲーム理論
(4)合理的主体モデル
(5)複雑系の理論

経済学、人類学、社会学、心理学、政治科学、生物学を統一できるということだが、経済学と社会学の理論を統一し、必要な施策を世界に適用して多少はましな 社会を作ってほしい。

友人のWは東大の経済出身だが、引退後、この本と同じゲーム理論の社会科学への適用を模索している。彼によれば全ての社会科学は理系が使うような便利な数 学がなく、計算をつかっての分析ができないので科学になっていない。ギンタスの試みは正しい。日本の官僚のエリートの大部分が東大法学部出身なのは、国の 形を作っている段階では必要であったがその後も、官僚機構の中枢に居座っているのは後進国のすることで弊害が大きいという。

Rev. May 9, 2014


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