地に堕ちた理研

小保方スキャンダルを見ていると理研(利権)の研究者という のもどうしようもない保身の集団だという印象をもった。ただこれも文部大臣から早く小保方氏を始末しないと「特定国立研究開発法人」にするための法案を国 会提出できないとせっつかれて逆上した野依理事長の不始末のようだ。2014年5月8日夜、東京・内幸町の富国生命ビル23階。理化学研究所が設置した外 部有識者による改革委員会の席上、委員長の岸輝雄は理研側に 「(結論が)早すぎるんじゃないか」と迫った。ノーベル学者でも文系支配でおかしくなってい る。理研理事6 名のうち、文部省からの天下りは2名とのことで文系支配は歴然。

昔々、バイオテクノロジー事業部を率いていた時に、実験動物施設の設計建設の仕事で理研とつきあったことがあるが、嫌な雰囲気で付き合いたくないと思った ものだ。今回のごたごたをみていると理研はますます悪くなっている。国立研究機関なんてこんなもの。原研だってそうだったと森永先生に聞いた。同じころ農水省傘下の研究所の予算分捕り合戦の場に居合わせ たこともあるが、大の大人の研究者が中央からきた若き女性の予算分配担当に卑屈にぺこぺこしてる姿がいまだに脳裏にこびりついている。ノーベル賞学者の野 依氏もすっかり理研を「特定国立研究開発法人」にするための法案を国会提出しようとしている文部省に媚びているようだ。

小保方さんのネイチャー投稿論文に疑惑が生じたと聞いてうろたえた理事長が理研内部に石井俊輔上席研究員を委員長とする調査委員会を組織して調査させ、捏 造と改竄があったと公式発表した。委員会の発表を聞いた瞬間、直観としてこの断定はおかしいと感じた。

今回の騒動は理研と産総研という2つの国立研究所に高給の研究者を招聘できる「特定国立研究開発法人」にするための法案を国会提出するために文部省が理研 の調査委員会の尻を叩いで早期決着させようとして間違った結論を出したというのが真相のようだ。それが小保方氏の思わぬ名誉棄損という反撃で判断に疑義が 生じたということと思っていた。

そうこうしているうちに2014/4/25に小保方さんの論文は画像を捏造・改竄した不正研究だと断定した理研の調査委員長だった石井俊輔 上席研究員も自らもネイチャー投稿論文の画像入れ替えをしたことが発覚したという。というわけで調査委員長を辞任した。理研の研究不正ガイドラインには、 「悪意がなければ不正でない」と規定されている。だが、「悪意と故意は同義」という論理で、小保方の画像加工が意図的だったとして「不正」と認定した。不 正を審査した調査委員会6人のうち、前委員長の石井俊輔を含めて4人に切り貼りの疑惑が持ち上がっているのだ。これ裁判官が結論を捏造したと同じ 罪であろう。だが捏造・改竄にはあたらないという。

とこ ろで不当な小保方いじめをしたマスコミは権力に媚びた石井俊輔上席研究員に記者会見を要求して捏造・改竄の定義を正すべきではないのか?もししないなら非対称行為だ。マスコミは都合の悪いことは報道しない。

このようにマスコミを巻き込んでトップダウンの弱いものいじめしていれば、日本の研究はますますだめになる。そして女性蔑視もなおらない。小保方さんはこ んな国に未練もたず米国のハーバードの研究所にさっさと移るべきだろう。

理研の理事長の野依なんて権威主義的体質のいけ好かない爺だ。そして理研を管轄する文部省はお粗末。力不足の研究者に全て押し付けて逃げの一手。まさに自 分の権威だけに生きているような亡者だ。安倍首相の三本の矢の一つに独創的な技術開発があるが、このような体質ではおぼつかない。

いい研究者を手にいれるには、このような金で釣ることをしただけでは不十分。今回のように天下に恥かかせられるなら高給につられる研究者はいないのではな いか。戦後の日本 の発展は米国の技術を入手できたが故の快進撃だったが、こ給与を良くし世界に冠たる技術をきずいて国家の力を増そうという文系的待遇改善施策はまったく見 当違いであると言わざるをえない。アベノミックスは必ず失敗する。

90年代半ば、バブル崩壊の荒波は「55年体制」を転覆させ、自民党は政権の座から転落する屈辱をなめる。野党として国政を動かすには、議員立法しかな かった。自民党科学技術部会の会長だった尾身幸次は、68年に廃案になった「科学技術基本法」に目をつけた。極度の経済不振に陥っていた日本にとって、科 学技術は「成長力を復活させる唯一の手段」に見えた。95年秋、法案が提出されると、共産党まで賛成に回って、わずか2週間で成立する。こうして理研バブ ルが発生しだした。

この法案が、巨額の研究予算を生み出すようになった。96年に作成された第1期科学技術基本計画は、それまでの5年間を3割も上回る17兆円という巨額の 予算を実現した。科学技術という名目ならば、予算が通りやすい時代が到来した。次の科学技術基本計画は、予算が24兆円に拡大。「科技族」と呼ばれる族議 員が生まれていった。科学技術の世界は、部外者が立ち入れない「聖域」と化してきた。

理研や各大学の研究所などに付けられ る科学研究費補助金(科研費)は、1995年に900億円だったが、10年後の2005年度には1800億円強に倍増、2013年度には2318億円に達 している。しかし、その効果は疑問符がつく。例えば、スパコン京。専用の6階建ての巨大ビルには今も210人が勤務し、毎年100億円を超える維持運営 費、内電気代だけで20億〜30億円を費消しているが計算速度を上げる開発が止まり、世界4位に落ちている。にもかかわらず今年4月に予算が復活し、 2020年ごろまでに「京」の100倍の計算速度を目指して、理研に1400億円が投じられる。

理研の30代を中心とする若手研究者は、急激に膨張する科学技術予算が産み落とした「科学技術バブル世代」と言える。91年から文部省(現文部科学省)が 進めた大学院重点化施策(通称「博士倍増計画」)によって、大学院生が10万人から26万人に急増。そのため、国立大学でも博士課程の大学院生の定員を埋 めきれない時代が到来した。ポスドク1万人計画は、その5年前に文部省が描いた博士倍増計画の受け皿を作るびほう策に見える。理研は博士を取得したが、大 学や民間企業で定年制の職に就けない人の一時避難場所として使われている。「理研のやり方は、203高地の乃木将軍のようだ」。理研の元研究者はそう表現 する。兵(若手)を突撃させるが失敗して撤退、するとまた次の兵を送り出す。結果的に、多くの犠牲者を生み出す。

1995年頃、私も化学工学会理事をしていて、研究は有期であるべきだとは考えていたが雇用も有期では人は育たない。そこらへんの制度設計は東大法学部出の官僚にはできなかったのだろう。

April 25, 2014
Rev. May 13, 2014


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