ノースウエスト・アース・フォーラム

川上私記 回想のアフガニスタン

ザヒール・シャー元国王の帰国

    タリバン政権のあとにどんな政権ができるか、世界が注目したそのとき、突如浮かび上がったのが、元国王ザヒールシャーの名前であった。この報道を目にして、私は、亡霊が現れたか、と仰天した。彼が1973年にクーデタでアフガニスタンを追い出されて以来、日本の報道にその名が登場したのは三十数年ぶりであった。私もまったく忘れていた。2010年の今も収まらないアフガン政情の混乱は、そもそもあのクーデタによる国王追放劇、旺盛の崩壊から始まったのだった。

   元国王は、イタリアのローマにある別邸滞在中に,従兄弟の元首相ダウドのクーデターで王冠を失ったのだった。ダウドは実権を握ったものの間もなく暗殺され、元国王は自国に帰れぬまま三十数年をローマで生きていた。その名は世界のジャーナリズムからも忘れられていた。2002年4月ザヒール・シャーは国民の歓呼の声に迎えられて帰国した。米軍の侵攻とそれによる政情混乱が元国王にもたらした予期せぬ里帰りであった。一部には国王待望論もあったが、むろん王政復古はならなかった。彼は米国の支配と政情混乱の中で、平穏な時代への国民の郷愁に支えられ、「国父」の待遇のうちに2007年7月、92歳で死去した。

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March 12, 2010


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