家談義

グリーンウッド氏はかっての職場の上司が声をかけてはじめた職場仲間をメンバーとする非公開のラウンドテーブル21(一種の掲示板)に参加して経済、環境、戦争、教育、世相などをテーマに自由な意見の交換を楽しんでおります。以下メンバーの一人、 にしのさんと交わした家の設計についての意見交換のうちグリーンウッド氏の発言をまとめたものです。

にしのさんのお嬢さんが建築家になり自宅の設計をお嬢さんの門出のトレーニング用に提供して美術館のようなシャレタ家に住まわれている。グリーンウッドの家は既製品で住んでから手を入れぬと住めたものではないという苦い経験をもっている。そこで家談義がはじまりました。エンジニアリングの専門家同士なので話題は意匠設計より熱、塗装、空力、換気、腐食、化学物質汚染の方に偏りがちであった。


家談義、面白く読みました。同じ化工屋としてみるところはみているなとうれしくなりました。 ここで触れられていない話題を提供しようと思います。数年前に外断熱についての本「日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク」を読んで目からうろこが落ちたのでご紹介します。まあ木造建築には顕著な差はでないのですが、外断熱にするとコンクリート造りの建物ではコンクリートが畜熱材をなって快適は生活を送れます。北欧は外断熱が建築基準となってますが、日本の建築基準法は内断熱が標準でです。かって英国で1年生活したとき、寝る前にストーブの火を落としても一晩暖かいにはなぜかと調べると、暖炉が入っているレンガ壁が余熱を出しているからでした。木造建築に適用すれば畜熱効果は低くとも、結露の露で構造体の木材が腐敗しないので家の寿命は格段に伸びるでしょう。日本の建築科の教育はどうなっているのでしょうね。

車庫も家と一体構造にすると税金が家並にとられるなど税制が建築の姿をきめているという説まったく同感です。ですからガレージが貧相になったり、車が屋外で早く劣化するなど国家的な損失になってますね。京都の、間口が狭く、奥行きが深い街並みも間口税の結果とか聞いた覚えがありますがあれと同じですね。車も人間と同じと錯覚している税務当局の頭の中はどうなっているのでしょう。税を取るにしても、率は差をつけるべきでしょう。全部車庫ですと申請する悪者が出る対策ですかね。ベランダも同じ発想でしょう。民は馬鹿でワルだという発想ですね。

景観とは関係ありませんが、アルミサッシのJIS規格はお粗末ですよ。高層ビルではJIS規格はおすすめしませんがと東急不動産の設計者は言っていました。西野さんがお嬢さんにすすめられた物だと同じでしょう。お上が保証してくれた規格なのだから問題ないだろう、ぜいたく品をうりつけようとしているのではと勘違いした私はJIS規格でよろしいといってしまいました。

これはミスジャッジでした。私の家の立地は高台です。高層ビルに吹く風とおなじ強い風が吹きます。サッシ自身が細すぎて台風の時、風圧で折れそうになり、肝を冷やしました。サッシを交換するのは費用がかかりすぎますので即ガラスを1.5ミリから3ミリに交換して対処しました。資源の無駄づかいですね。またサッシの下の水シール深さが1インチしかなく、台風の時、風圧で雨水がサッシを越えて室内に流れ込むのです。大体台風は夜上陸しますので台風時は徹夜でこの水と戦うハメになりました。

台風の翌朝は会社はお休みとして寝ておりました。JIS規格などこんなお粗末なものなのです。業界はこの不都合を知っていながらJIS規格を改訂する声をあげないのです。以後、私はお上が支持している規格は徹底してうたがうことにしました。だいたいお上という言葉はしいたげられた民がエリートの官を皮肉を込めて呼んだ呼称ですね。

金もないので数年ガマンしましたが、雨戸の代わりに取り付けたアルミとステンレス製のはずであったベネチャンブラインドのヒンジの直径数ミリの心棒が鉄製で、これが海から吹き付ける潮風で腐食し、溶けてなくなったのを機会に撤去し、JIS規格でないサッシ窓をもう一つ外側に2重に取り付けることで解決しました。雨戸の代わりです。これが実に具合がよろしい。結果2重ガラスと同じですから遮音、断熱効果バツグンで大成功でした。防犯にも有効で両隣が空き巣に入られてもいまだわが家は安泰です。コストも雨戸より安い。大体雨戸は障子を使っていたころの遺物でしょう。遮光は遮光カーテンを使ってます。

西野さんも指摘されたリシンといわれているアクリル系樹脂外装塗料は数年でだめになります。数回ぬりなおしてあきれました。塗りなおしの人件費が高価ですから、たとえ高価でもウレタンゴム系の外装塗料にして大成功、10年以上は持つのではと期待してます。

石膏ボードにペンキ塗りをしただけとは前衛的ですね。建築家となった娘さんの意気込みがわかります。ロフトの雰囲気ですか。水性ペイントを使えばシックハウス症候群もなくなるでしょう。石膏ボードは遮音性にすぐれプライバシー上は好ましい素材ですね。我が家も下地は石膏ボードですが、化粧に壁紙を張ってます。25年も経過するとはがれたり、よごれたりしてみすぼらしくなります。そこで壁紙張替えプロジェクトを考えたのですが、アルデヒド系の溶媒を使う接着剤はまだ市場に出回ったいるとのこと。もう一年待てば、使い切って無害の接着剤になるのではと様子見してます。

高齢対策として全て1階で処理できる設計はいいですね。我が家は風呂とトイレが2階なので、もうろくしたら2階から降りられなくなりそうです。というか早々に施設に送り出されてしまうでしょうね。階段にそろそろ手摺をつけようかと思案してます。

やはり、建築家が設計したものはちがいます。「まるで美術館みたい」はけだし名言です。でも、少し肩が凝りません?パッシブソーラーハウスのようで冬の昼間は暖房が不要になるのではと思いますがどうですか?一方夏は冷房費がかかりそうですがいかがですか。冷房費を節約するためには部屋の上層部の空気を自然対流で抜いてやるなどの工夫が必要な気がしますが。どうでしょうか。全体に角張っていますので風の騒音が大きいような気がしますが。我が家の外形は全て角がとれてますが、それでも台風時は恐ろしい感じです。

外見についてですが、この七里ガ浜に25年前、私が下見板を使うニューイングランド方式を持ち込んだところ、白モルタル・赤瓦のスパニッシュ・コロニアルと白壁に黒い樫の柱が映えるチューダー様式の家が建ちました。その後、北欧系、レンガ壁のジョージアン様式も出現し、一時は不動産業者がモデルハウスとして輸入建材を使い、米国人大工に作らせたニュネザーランド様式の家もできましたが、あまり人気がなかったのか取り壊されました。軒桁を支輪のような組み物で支えるイタリアネート様式の家を建てた人はまだおりません。

日本の伝統的なものでは白川郷にあるような巨大な民家を移設した方もおりましたが、ご主人が亡くなられたら、さっさと転売され取り壊されてしまいました。

大部分はしかし日本の伝統様式でもなく、外国の様式でもないニュートラルな外見の建物が多いですね。 それにコンクリート製の味気のない箱型もあります。耐久性を買っているかというとそうでなく、土地が転売されると新オーナーは壊してしまいます。家屋は一代限りという文化は蓄積を無視し、フローだけの安建築をはびこらせると思うのですが。

耐震設計に関してはその後検討した。

April 15, 2003

Rev. December 13, 2007


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