プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントというと日本ではまだ、設備投資型プロジェクト(Capital Project)に関する管理技術との誤解があるようです。しかし、人間が組織を作って行う活動のうち恒常的でないもののすべてをプロジェクトと理解し、これを管理する技術という理解が世界的に一般的になってまいりました。「変化の制度化」とか「革新のエンジン」ともいわれております。ご興味のある方は、プロジェクトマネジメントの啓蒙と普及のために1998年12月9日に設立された日本プロジェクトマネジメント・フォーラム(Japan Project Management Forum, JPMF)はプロジェクトマネジメント資格認定センター(PMCC)と2005/10/5に組織統合を行い、日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)となった。

なおプロジェクトマネジメントを職業にしている人の米国の団体はPMI(Project Management Institute)といい、ヨーロッパの各国団体はIPMA(International Project Management Association)という上部団体を作っております。

1998

Rev. July 5, 2006


1998年当時グリーンウッド氏は日本にプロジェクト運営を普及させようとJPMFという会員組織の立ち上げに参画し、会員募集キャンペーンを担当して企業を回って折伏していたことがあります。そんなある日、米国駐在経験があり、プロジェクト運営に興味をもっていた某I自動車会社の取締役氏にプロジェクトマネジマントに関し講演するように依頼されました。藤沢にある巨大な湘南工場は辺鄙なところにありますので、多少気がとがめたのですがクライスラー社のジープ・ラングラーに乗って訪れました。自動車工場ははじめての経験でしたのでその規模に驚いた思い出があります。

工場のエリート達にプロジェクト運営はタコツボに入って惰眠をむさぼる人々の目を覚ませる効果があって、社員を目的にまい進させる有効な組織原理だと説明しました。しかしタコツボの安楽さを体験した人々は自ら穴から這い出てはこないので、トップダウンで導入しないと根付かないだろうと話ました。これはグリーンウッド氏のエンジニアリング企業での経験から言ったことでした。

エンジニアリング企業はプロジェクト制で運営されているため、一つのプロジェクトが完了し、新しいプロジェクトに任命されるまで企業内失業者になります。待っていても任命されない場合は自らプロジェクトを作り出すことすら必要となります。かくしてダイナミックな企業活動が生まれるのです。

その時のI社のスタッフの反応は、「プロジェクト運営の長所は理解したが、居心地のよいタコツボを出る気にはならない」というものでした。グリーンウッド氏をよんでくれた取締役氏はニヤニヤしているだけでした。「部下にはソッポを向かれ、トップマネジメントを説得できないので、あなたを呼んで匍匐前進しようとしているのだ、わかってくれ」と彼の顔に書いてあるように感じてグリーンウッド氏はこの巨大工場を後にしたのでした。

時が移り、6年後の2,004年4月23日の朝日新聞をみると、I社もGMの傘下に入り、生き残りのためにディーゼルエンジン開発を担当することになった。GMからスタッフが10人乗り込んできて、プロジェクト運営しているとのことでした。結局、強いリーダーシップがない場合、外圧でしか、居心地のよいタコツボから這い出る気持ちにはならないということのようでした。いまだタコツボ運営をしているらしい某M自動車は外圧も霧散して自発的に更生できるのでしょうか?

まえじま氏が「ニッサンから始まり、いすず、三菱ふそうに至る自動車会社はいずれも戦前から軍用トラックを作っていた名門ではないでしょうか?戦後派のトヨタや、ずっと後発のホンダとは対象的ですね」と指摘されていますが、まさに役所的恒久的タコツボが企業の組織原理であり、組織論をはなれても国家需要のマーケットが縮小して行く中での苦境といえるかもしれません。

余談ですが、個人的にもプロジェクト運営はメリットがあります。グリーンウッド氏は北緯60度以北と南緯60度以南以外、地球の裏側まで自力航海できる小型船舶1級免状を持っていますが、この資格を得るためには22日間休暇をとって実習しなければなりません。企業内失業時なら長期休暇も取得できるわけで、ダイナミックな人生をおくるための準備も可能となるわけです。

Rev. 2004/5/24


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