寛永17年(1640)、駒ヶ岳の大噴火によって生まれた大沼。湖上に大小126の小島が点在している。
「大沼」の地名は、アイヌ語の「ポロ(大いなる)・ト(湖沼)」に由来する。


大沼湖畔にある駒ヶ岳神社の一ノ鳥居。


大岩の高さは約5m、直径約25m。お椀を伏せたようなドーム状の形をしている。


いくつもの岩塊が積み重なっているようにも見えるが、巨大な溶結凝灰石のメガブロックが、
節理や風化によって割れて、現在の姿になったものと考えられている。


大岩の右が、胎内くぐりの出入り口。ここから岩をくぐると木道に出る。
 函館市中心部から北に向かって約20km。北海道七飯町(ななえちょう)、内浦湾(別名「噴火湾」)の南岸にそびえる北海道駒ヶ岳(1,131m)に麓に、周囲約24kmの湖沼「大沼(おおぬま)」がある。
 湖上には「流山(ながれやま)」と呼ばれる大小126の小島が散らばり、特異な景観をつくり出している。

 大沼の成り立ちは、寛永17年(1640)7月31日(旧暦6月13日)駒ヶ岳の大噴火からはじまった。もとは1700m級の富士山のような円錐形をしていたが、山頂付近で山体崩壊が発生。この崩壊によって南斜面に岩屑(がんせつ)なだれが起こり、同岳の南を東流して内浦湾に向かう折戸川(おりとがわ)が堰止められ、現在の大沼、小沼、蓴菜(じゅんさい)沼の大沼三湖が出現した。
 続いて、東斜面でも山体崩壊が起こり、岩屑なだれは内浦湾に流れ込み、大津波が発生。津波は対岸の有珠(うす)の善光寺(伊達市)まで到達し、100余隻の昆布取舟に乗っていた約700余人のアイヌや和人が犠牲となった。噴火は3日ほどつづき、その後は急速に鎖静化し、70日ほどでおさまったという。

 寛永の大噴火以降も、元禄7年(1694)、安政3年(1856)、昭和4年(1929)と現在までに3回の大噴火がみられ、最近では平成8年(1996)に小規模な噴火が起きている。
 ちなみに1600年代(17世紀)は、北海道で巨大噴火が集中した時代だった。1640年の駒ヶ岳噴火に続いて、1663年 有珠山(うすざん)、1667年 樽前山(たるまえさん)でも大噴火が発生し、地形や海岸線、人々の生活に大きな影響を与えた。

 現在の駒ヶ岳の火山活動は「噴火警戒レベル1(活火山であることに留意)」で概ね静穏とされ、大正4年(1915)に「新日本三景」に、昭和33年(1958)には大沼国定公園に指定されている。

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 この日はあいにくの曇り空で、剣ヶ峯(1,131m)、砂原岳(1,113m)といった複数のピークとなだらかな裾野から成る、秀麗な駒ヶ岳の山容を見ることはできなかった。
 大沼駒ヶ岳神社は、大沼を一周する道道338号「大沼公園線」沿いにある。鳥居と小さな社殿があるだけの無住の神社ゆえ、参拝者はまず来ないだろうと思っていたが、湖畔に整備された周遊サイクリングコース内にあるためか、レンタル自転車に乗った外国人の親子連れやカップルが次々にあらわれて、自然散策を楽しむリゾート地の様相をみせている。

 当社の創建は大正3年(1914)、駒ヶ岳の鎮守として、山頂近くの噴火口の断崖に石室を築いて、山の神・大山祇神(おおやまづみのかみ)を祀ったことがはじまりとされている。その後、昭和4年の大噴火で、山上での祭祀が困難となり、昭和48年(1973)に現在の大沼湖畔へ遷座された。

 遷座地として当地が選ばれたのは、境内に鎮座する「大岩」の存在によるものだろう。大岩は、寛永17年の大噴火で噴出した巨大な火山岩塊(溶結凝灰石のメガブロック)で、高さ約5m、直径約25m、推定重量約230トン。お椀を伏せたようなドーム状の形をしており、岩のわずかな隙間から幾本もの木が生えている。

 一見すると、いくつもの岩塊(ブロック)が積み重なってできたように見えるが、地質学的には積み上げられたものではなく、一つの火山岩が、冷却するときに生じた節理や風化によって割れて、現在の姿になったものと考えられている。

 大岩の左に木道があり、その下に駒ケ岳からの湧き水が流れている。この木道を大岩に沿って歩くと「胎内くぐり」の割れ目があらわれ、岩の隙間を通り抜けることできる。胎内くぐりは、岩の間をくぐることで無病息災や再生を祈願する信仰だが、ここでは割れ目を通り抜けることで、登山の安全、受験の難関突破がかなうという。

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 日本の火山信仰では、「岩神の飛石」(群馬県前橋市)など、大噴火が残した巨岩や溶岩流を神聖視する例は多く見られる。
 人類がはじめて人知を超える存在として「神」を実感したのは、驚異的なパワーをもつ自然現象に遭遇したときだろう。噴火する山、揺れる大地、海面を走る巨大な波の塊は、自然の力の象徴として畏怖の対象とされてきた。大岩は、火山への畏敬を象徴する自然の記念碑(モニュメント)、またはメルクマール(標識)のような存在であるといえるだろう。

 毎年、春(例年5月下旬から6月頃)には、登山者の安全祈願。駒ヶ岳の噴火鎮静。大沼地域の安全と観光振興を祈願する「 開山祭」。秋(10月頃)には、1年間の登山安全への感謝。山の神への感謝。冬季の静穏。地域の無事を祈願する「閉山祭」が行われている。

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2026年7月2日 撮影


祠には、山の神である大山祇神が祀られている。


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