増えている大腸がんと大腸内視鏡検査


消化器科・外科 川合クリニック 川合千尋



 最近日本人の大腸がんがとても増えています。これは食物線維を多く含む昔ながらの日本食から、肉類中心の欧米型の食事に変わってきていることが主な原因と考えられています。

 早期の大腸がんはほぼ100%完治しますが、この段階では自覚症状はほとんどありません。したがって、どうやって無症状の時期に発見するかが重要となります。大腸がん検診の代表的なものは便の免疫学的潜血反応(便に血が混じっていないかどうか)で、食事制限の必要がなく便を取るだけで分かります。ただこの検査が陽性だからといって、「大腸がんがある」ということではありませんし、逆に陰性でも「大腸がんがない」ともいえません。新潟市大腸がん施設検診ではこの方法を2日間行い、1日でも血が混じっている場合には精密検査が必要としています。

 精密検査には注腸X線検査と大腸内視鏡検査があります。おしりからバリウムと空気を入れて検査する注腸X線検査は、がんやポリープの影を見る検査ですので、異常があった場合さらに大腸内視鏡検査を受けなければなりません。また小さなポリープやがんは見逃される可能性もあります。一方ファイバースコープを入れて検査する大腸内視鏡検査では腸の内部の様子が画面に写し出されますから、微妙な色調の変化や極めて小さなポリープやがんまで発見することができます。また検査を受けている本人が直接テレビ画面を見ながら医師の説明を聞くことができます。病変が見つかった時には、組織を一部取って悪性かどうか調べたり、がんに変わる可能性のあるポリープをその場で切除することも可能です。注腸検査では検査の前日から下剤や便量を少なくする食事を取らなければなりませんが、内視鏡検査では検査の2〜3時間前から腸の中をからにする特殊な液体を2リットルほど飲むだけで済みます。近年は内視鏡そのものや挿入技術が進歩し、検査の苦痛もずいぶん軽減されてきています。

 大腸がんの発生は50歳くらいから多くなりますし、無症状のうちに見つけることが大切ですから、40歳を過ぎたら便潜血反応(検便)を年に1度は必ず受けたいものです。陽性ならもちろんですが、陰性であっても、便が細くなる、残便感、腹痛、下痢と便秘を繰り返す等の症状があったり、親族に大腸がんの方がいらっしゃる場合には積極的に大腸内視鏡検査を受けましょう。また食事内容を今一度見直して、肉類や動物性脂肪を減らし、食物線維の多い野菜や果物を多く取るようにしましょう。これは生活習慣病一般の予防のためにも大切なことです。


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