人口問題

◎ 環境汚染 男の赤ちゃん減らす?

 

出生児に占める男児の割合が、過去四半世紀の間に特定の市町村で目立って減っていることが、環境NGO(非政府組織)「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」(会長 立川 涼元高知大学長)の全国16都道府県を対象とした市町村別調査の中間報告で明らかにになった。
  減少した地域は、環境汚染が問題視されているところが少なくない。同会議は、ダイオキシンなどの環境ホルモン(内分泌かく乱物資)と出生比率との関係についてさらに調査するとともに、国に本格調査に乗り出すよう提言している。

  男児の割合は0.516〜0.517とされ、女児より約6%多く生まれる。ところがここ20年〜30年間に先進国では男児の割合が徐々に低下し、日本では1990年後半に0.513まで下がった。
  その原因を探るため、同会議し16都道府県を対象に、人口動態統計の手法が現在と同じになった74年から97年までの計24年間の出生性比の推移を調べた。
  は虫類のメス化など環境ホルモンが生物の性に介入することが知られており、こうした化学物資がヒトの性にどう影響するかを調べる目的もあった。
第1期(74〜81)第2期(82〜89)第3期(90〜97)に分け市町村別に傾向を調べ、今回の中間報告では、神奈川県、静岡県、奈良県の解析結果が出た。
  男女比率が逆転し、女児の出生が男児を上回る地域が、1期には3県合わせて10市町村だったのが、3期には24市町村に増えた。
  神奈川県は、河川に流れ込む工場排水による7年近いダイオキシン汚染が明るみに出た藤沢市や、ゴミ処理施設のある秦野市、大都市圏の横浜市などで、減少傾向が表れた。とくに秦野市は、1期の0.519が3期には0.506に減った。
  静岡県は、三島市が1期の0.511から3期の0.492に下がり男女比が大きく逆転した。異常値を出した市町村の多くで、海の関係が示唆された。平地の農業で使われた農薬との関係が疑われる地域もあった。
  奈良県では、大和郡山市など佐保川流域に減少傾向が表れた。産業廃棄物の最終処分場や自動車の排ガスなどとの関連が疑われる地域もあった。
化学工場の爆発によってダイオキシン汚染が広がった地域で男児出生比が0.35まで下がったイタリヤの例がある。