魔法学講座



目次
1,世界を構成しているもの
2,魔力と魔法
3,神
4,妖精王と魔王
5,魔法学的視点から見た時代分類
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 ラテの図書館で行われた、魔法についての市民講座のメモです。




1,世界を構成しているもの

 世界は精霊と魂によって構成されています。精霊と魂がある秩序にしたがって融合したものが存在であり、物質であり、生命です。


■魂魄とは

 存在は魂と魄で構成されています。

魂は世界に一部の隙もなく満ちています。
しかし一定量で一単位として固まって存在し、それがぎゅうぎゅう詰まっている状態です。
魂は存在するためのエネルギーです。精霊は魂と結合すると、この世に存在できます。
精霊が魂を使い果たすと存在の寿命が切れます。
しかし、結合期間が終了するだけで、どちらもなくなりません。
別の精霊、別の魂と新たに結合し、新たな存在となって世界の歯車は繋がっていきます。

魄は翠の精霊と、翠の精霊が集めた緋の精霊で作った一団の、存在の設計図です。
単一の緋の精霊で表現できない複雑な存在(水は単純な存在、人間は複雑な存在です)には精霊ではなく魄が魂と結合しています。
魄は死後一定期間分散せず残ることがあり、これが俗にいう幽霊です。
魄は設計図ではありますが、実際にそれが存在した時の性格などは、魂魄の結合期間のみ発現されます。
(同じ魄が別の魂と結合しても、個性は保存されません)

■精霊とは

 精霊とは、物質の存在のデザインを構成するものです。
 実体を持たず、世界中をふわふわとさまよっています。
 魄を構成するのが緋の精霊、魄をデザインするのが翠の精霊です。


・緋の精霊
 火・土・水・風の四大要素があります。これが組み合わされて、石や金属や空気や水やらの精霊が生まれます。
 意志・魔力はなく、最も基礎的で無力な存在です。


・翠の精霊

 緋の精霊とは根本的には違う存在です。
 翠の精霊は、生物発生の動機となります。

 存在を構成する為の緋の精霊を集め、生物の精神と形状をデザインします。
翠の精霊のデザインしたかたまりは、魄と呼ばれます。 翠の精霊は魂と魄を結びつけます。
 翠の精霊は名前を持ち、緋の精霊を集めるための魔力もあるとされています。

 緋の精霊に比べると大変数が少なく、意志や魔力を持ちます。しかし人間のようにはっきりした自意識を持った存在ではありません。





2,魔力と魔法


■魔力とは

 魔力とは、意志によって精霊もしくは魂に干渉する現象です。

 翠の精霊の意志力が高い程、世界の法則と秩序は乱れます。この乱れや歪みが魔法の本質です。また歪みの大きい場所では翠の精霊は意志力をもちやすくなります。

 翠の精霊の意志がなく、世界法則の秩序が高ければ、魔法は生じず、より完璧な世界となります。

 魔法とは世界そのものの揺らぎ、歪みであり、混沌の力です。

 生物の魔力の強さは、魄を構成する翠の精霊の意志力の高さによって違います。

・ゆらぎ
 ゆらぎは、ふだん秩序にしたがって活動する精霊達の本能を狂わせる圧力です。意志力の高い精霊ほど、世界の秩序にたいして鈍感です。
意図的に撚ったゆらぎは霧状になり、魔法の霧と呼ばれます。
この状態だと、存在の境界があやふやになり、意志力が通じやすくなります。
ゆらぎがおおきくなると、魂の密集に穴が生じます。
ゆらぎを生じさせる要素は、魂の質によります。

・意志力
 精霊が意志を他の精霊に伝える力です。翠の精霊は意志力を用いることによって、他の精霊に命令したり意志を通じ合わせたりできます。
これは魄を生成するために組み込まれた翠の精霊の要素ですが、世界のバグでもあります。
意志力がより強い精霊が上位・高位となります。

 人間は自分の中の翠の精霊の意志力を意識することで、魔法を使えるようになります。

 おそらく悟りを開く時みたいな修行をして、魔法使いはその感覚をつかむと思われます。意志力の行使がいわゆる魔法です。

魔物の魔力と魔法使いの魔力の質の違い
 魔物の魔力は、ゆらぎで生じた魂の裂け目に堕ちた精霊や魄の意志力です。裂け目を助長し、存在の境界を不安定にしやすいです。
 杖に宣誓した魔法使いの魔力は、ゆらぎが少なく、意志力が洗練されています。
ゆらぎそのものを凪ぐ技術や、裂け目を閉ざす技術も持っているといわれています。

・大陸東西の魔法の質の差
天山山脈をはさんで、東側の方は、世界がゆらぎやすく、裂けにくい性質。
西側(レーン・ラテ側)は、揺らぎにくく、裂けやすい性質をしています。
東側では魔法を使っても魔物が生まれにくく、世界も壊れにくいです。
精霊術や魔法科学が発達し、戦争にも魔法が盛んに使われ、
魔物を魔法で作り出し、多彩な技術が生まれました。
西側では魔法の制御が難しい割に、裂けや意志力の強い翠の精霊が多く、
魔法の技術が繊細で強度の高いものになりました。




■魔法分類学

 魔法は大別して4つの方法があります。
 精霊術、真呪、魂使い、神術の四つです。

 普通、魔法というと、精霊術の事を言います。精霊術は人類全体の2〜3%という大変高い割合の人間が使うことが可能です。

 真呪は扱うものが少なく、才能が必要です。QDには出てきません。

 魂使いも才能が必要です。精霊術使用者よりさらに発現率が低いです。

 神術はアレインが白の国の魔法と呼んでいるものです。
QDの世界で神術に分類される魔法の使い手は、百鬼の女王です。

精霊系の魔法
・精霊術
 自らの翠の精霊の意志力で、緋の精霊のみを使役し物理的なことができる魔法です。
緋の精霊は自意識がないので命令する言葉(意志力)があれば、使うことができます。

 相手の魄を操作したり、魂と結合させて水や火を生むことができます。

 魄を操作といっても、翠の精霊ではなく緋の精霊にしか影響を与えられないし、害意ある魔法は相手の翠の精霊にガードされるので容易ではありません。

 また魄に関する魔法はとてもデリケートで、根性と冷静さのある人しかできません。

 相手を病気にしたり障害を与えたりといった作用を生みます。よいことに使う時は、怪我や病気で失われた精霊を魄に補充して治したりします。

 火や水を生むといった魔法は単純で、攻撃をする際には大量の緋の精霊を使って、とても瞬発力やパワーのある魔法を使うことができます。

 最初はこういった無機物を操る訓練から入ります。
ただしこういった精霊魔法はゆらぎが生じやすいのでラテの図書館では原則使用を禁じられています。

・真呪
 精霊の名を呼び、操る魔法です。精霊術にはできない、翠の精霊の操作が可能です。

 これは精霊術の一方通行的な魔法ではなく、精霊とコミュニケーションをとって行う魔法なので、素養が必要です。

 素養とは、上位の翠の精霊が生成した魄の持ち主であり、翠の精霊と意思を同一させた魔法の素養と、自身にゆらぎを集める高い魂の力と、名前を知る力です。大変難しいです。

 火や水を生む、といったことはできませんが、津波や地震を止めたり、火事をおさめたりと、精霊王の暴走(自然災害)に対して交渉できます。

 また翠の精霊を操ることは、相手の精神を操ったり、疑似生命を作り出すなど、様々な応用がききます。



魂系の魔法
・魂使い
 精霊ではなく、魂を操る力を持った特殊な人達です。超能力者などと言われる部類の人です。ただし大変に珍しい才能であることは上に述べた通りです。

 魂を集めれば長命になることもできますし、他のエネルギーに変換して空を飛んだり、また精霊術とは違う方法で水や火を操ることもできます。更に精霊術と組み合わせると、実に多彩なことができるようになります。

 因みに『王様の宝物』に出てきた偉大な魔法使いエニアンは、精霊術に加え、魂使いであったと思われます。
魂使いが開発した魔法に、寿命の均等化があります。魂の奇形者たちが、長く生きることによって魂のゆがみを均す魔法です。


その他
・神術
 これは、神様に仕える巫覡が使う魔法です。

 神の依代として神の力を授かり、神の代行を行う魔法使いです。どんな人間でも、動植物でも、神に選ばれれば使えます。つまり神に選ばれないと使えないわけです。

 どんな魔法かは、その神様次第。特殊な例も出ている珍しい魔法です。
百鬼の女王は、"レーン・ラテの平和と繁栄への祈り"を神格化して、魔法としています。


3,神


 神と呼ばれる存在も何種類かいます。位というか、力の強い順に挙げていきます。ちなみにどの神様から力を与えられてもそれは一様に神術と呼ばれます。


■宇宙の中心にいる神様

 宇宙の中心に一対二人います。しかしQDには出てくるはずもありません。きっとお二人は人間という生物も知らないでしょう。宇宙の中心の、翠の神と緋の神です。


■放浪神

 “神”と呼ばれる、宇宙を放浪して成長する一種の精神生命体です。世界では原初の神々と呼ばれます。

 竜に力を与え、星を去ったの神様達の一派です。


■精霊神

 星につき、星に住む神様。地方によっては精霊王などとも言われます。

 各精霊が同種同士で集合し、緋の精霊までもが意識をもつに至った、精神生命体に近い強大な存在です。しかし放浪神ほど強大ではありません。

 精霊をつかさどる神様です。

 土の精霊王、風の精霊王、海の精霊王、大地の精霊王など、多彩な神様であります。翠の精霊王達もいます。

 彼らは彼らなりに世界を操り、人間とは別の次元で策謀し、暮らしています。

 絶大な魔力と意志を持ち、生物や竜とは別の方法で世界を治めています。

 彼らは人間や生物の世界に干渉することもありますが、普段は生命の少ない場所で都市を作って暮らしています。

 この話には出てきません。


■信仰神

 もっとも素朴で、人間に馴染み深い神様です。

 ゆらぎが世界に薄く、全体的に広まり、人間の意志力が高まり、魔法が日常的になった時代に生まれます。人間の間で宗教が流行ると、その意志力が信仰の対象に集まり、一種の疑似生命体になります。それが信仰神です。

 人間はこれを生むのがとても上手です。

 竜紀末はこの神様と人間達によって戦争が続きます。その頃には竜はすっかりなりを潜めてしまっているからです。



4,妖精王と魔王

 神もいるなら悪魔もいます。ただし彼らはどの神とも対立していません。強いて言えば、人間と対立している存在です。
魔物はゆらぎによって生じた魂の裂け目、魂が存在しない座標に精霊や魄が堕ちて発生します。
魂と結合していない精霊や魄は魂を透過するのですが、
裂け目に堕ちた精霊や魄はその境界を越えることが出来なくなります。
魂と結合していないので、厳密には存在していないのですが、
その境界を持つことによって、可視され、触れられるようにすらなります。


■東の魔王

 大陸の東の端、トゥケイラ周辺に出没する魔物達の王です。トゥケイラの東の海に浮かぶ島には、シリィゼという魔王の治める魔物の国があります。

 そのためトゥケイラでは勇者信仰とも言うべきものが盛んで、今まで十数人の魔王が勇者によって倒されました。

 東の魔王の眷属は人間に悪意をもつものが圧倒的に多く、凶暴です。

 彼らの社会はかなり組織化が進み、トゥケイラを初めとする大陸東の高度な魔法や科学の文化は、魔物達に対抗するために生まれ、はぐくまれたのです。


■西の魔王

 ラテ地方に住む竜族の一人が、ラテ地方の魔物を統括管理するために作った魔物の主です。
人間に好意的な存在として作られますが、ラテ地方では魔物の安定存在が難しく、精神を保つのは容易ではありません。
QDの時代では、百鬼の女王が西の魔王に当たります。


■妖精王

 大陸の西の内陸側、グンナ、マチオといった国々の周辺にいる妖精達の王です。レーン・ラテから見ると南東側の国々です。

 精霊王と混同しないよう願います。

 妖精王は陽気で、一度も人間に倒されたことがない程強大な、女性型の生き物です。

 妖精は人間に好意的なものが非常に多く、時には人間に仕え、伴に暮らすものもあるようです。妖精王は人間と結婚したこともあるとか。

 ただし好意を持つといってもろくなことはしやがりません。



5,魔法学的視点から見た時代分類

 魔法は時代ごとに大きく性質が変わってきます。

■古代…竜の時代

 魔法の力が竜と神に限定されていた物理秩序の強力な時代。


■中世…魔法使いの時代

 魔法使いが新しい力・魔法で強大な権力を得るようになる時代。王様の宝物は中世のレーン・ラテが舞台。


■近世…魔法の一般化時代

 魔法使いの人口が増える一方、悪魔が増大し、世界が不安定になった時代。戦争などが続き、信仰神が盛んに生まれ、人々は自分達で生んだ信仰神を中心とした国家を築いていった。


■現代…信仰神の元の秩序の時代

 沢山の信仰神が生まれ、ゆらぎは信仰心に集約され、世界に物理秩序が取り戻されて新たな秩序がもたらされる。しかし悪魔の力の増大化は止まることがなく、凶暴な魔物や妖精がかっ歩する危険な時代。