その2、デンマークの高齢者福祉
北欧高齢者福祉の見学(2002年5月21日から5月29日)
第1章 デンマークの概要
宗教は新教(ルター派)
国土は4.3万km2
人口は525万人
立憲君主国(国王)
政党は 社会民主党など
所得税 min40%
海抜 147m max
特色
クリスチャン4世国王在位
オランダ風ルネサンス建築
16%が風力発電
年金 5000クロ-ネ/月 基礎
7000クロ―ネ/月
1クローネ=16円
1167年にアプサロン司教がコペンハーゲンを作った。
コペンハーゲン市 50万人 政令都市
フレデリックベア市 コペンに対抗 政令都市
政令都市 市税 20%
県税 10%
(その他)
@アンデルセンの国として知られている。
Aロイヤルコペンハーゲン(陶器)が良く知られている。
ドイツから王家に嫁いだ人が最初にこの陶器を作った。
Bカルツベルグ(技術者)がビールを作った。
基金あり(カールスバーグ)
Cこの国には未だ貴族制度がある。
Dスカンジナビアタバコ(財閥)と言うタバコ会社があり、若い女性は地位が上がっても喫煙している。
Eナチスがデンマークを一時占有していた(これにより親ナチスの国と誤解されていた時期があった)。
F1800年代は農業人口が70〜80%であった。
G労働協約については政府不介入の歴史を持つ
Hサッカーは国技。
I1397年カルマル同盟で スウェーデン、ノルウエーを支配していた。
2002.5.26 (日) AM9:30〜
第2章 デンマークの高齢者福祉
(Ms.Lene Hollander の概要説明)
本講師はコペンハーゲン市の在宅ケアで25年経験し、 10年前から日本の在宅ケアについても研究している。
1. 高齢者介護(Elderly Care)の概要
デンマークと日本の人口比較 520万人 対 1.3億人
デンマークの平均余命(life expectancy) 77才(次の理由により余命を短くしている)
タバコを吸う
よく食べる
運動しない
part of population 20%(60才以上の人口は20%である)
(政府の構成は次の3層構造)
国
県 14 counties 国の方針で独自に健康・保健・病院政策を実施
市 275市 地方分権が良く進んでいる。
在宅ケア及びナーシングホーム(特別養護老人ホーム)を運営している。
ローカルの問題はローカルで解決する考えである。
税金 国 20% 基礎控除あり
県 10% 基礎控除あり
市 20% 基礎控除あり
この25年間に高齢者の活性化を計っている(具体的には次の方針を立てている)
寝たきりは良くない(床づれが出来、天井のみ見る生活となる)
朝起きて、寝たきりではなく、 起きた生活をする
出産直後に退院など、手術後はすぐに動く生活を勧めている。
高齢者の入居施設(介護施設:Residental nursing homes)は、45000室(1987)から30000室(1999)へ減少している
入居施設には次のような設備である。
個室でシャワ-ルームつき
家具 キッチンつき
介護施設を「介護の家(プライ エム)」と呼ぶ
以前の2室を改造して1室にしたので数は減少した(1室の面積を倍にした)。
職員数は入居者1に職員1(全ての職員合計で)の割合である。
痴呆施設についての方針
正常な人と一緒にCareしている。
重度痴呆はそのユニットに引越しをする。
その職員比率は1.2〜1.25となる
住宅の改造を行い、在宅ケアを増やすので介護の家の数が減った。
・ 以前は、ホームヘルパーが時間を決めて介護をやっていたのでプライエム(介護施設)が必要であった。
・ 24hrs 在宅ケアサービスが可能となったので在宅が増えた。
・ 現在、プライエムは痴呆や不安な人が入居している。
・ 身体介護だけなら在宅でOKだ(在宅ケアの完備によって)。
2、高齢者福祉の現実
高齢者福祉にEnd of tradition(過去との決別)と言う新方針をデンマークでは打ち出している。
10日間(1980年)〜 5日間(2,000年) に1回あたりの入院日数が短縮している。
その間、120病院から85病院に病院数が減っている。
集中的病院(intensive hospital)と在宅ケア(home care)の協力が必要であり、
病院看護には在宅ケア知識が必要である。
Home doctor と在宅ケアでほとんどの事が行える。
(この関係は次の通り)
病院
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GP user 在宅ケア 以前は病院が采配を振っていた。
この人が主人公である。
ホームドクター
・ 病院が減って病院は喜んでいる。理由は、医学に専念できるからである。
病院には個人の生活のスペースが無いが、自宅には無論そのスペースがある。
・ ホームドクター(GP)General Practitioners(開業医)が一次医療を担当している。
・ 在宅看護者は、医師とは独立した判断を行っている。
・ 3者の協力が大切でそれを実行している。
・ 入院1〜2日で退院日を決定する。(病院から在宅ケアにTelするのみで、在宅ケアが受けられる)
・ 退院後、在宅の食料などをヘルパーが手配し、病院からGPへも連絡する
・ デンマークでは、病院にケアマネージャ存在しない
・ 市にケアマネージャがおり看護者と一緒にいる。
・ Elderly Policy : Home as long as possible(出来るだけ在宅ケアするのが高齢者への取組み方針である)
・ デンマークでは、65才で国民年金を受ける
・ 子どもが親を扶養する義務はない。社会で扶養するためである。(この事については驚いた。以前は扶養義務があった)
3、高齢者住宅の概要
高齢者住宅:4万戸 (アパートの広さ:65m2/戸)( Elder friendly apartment 65m2)
居間・寝室・キッチン(ダイニング含む)がある。
シャワールーム、庭 又は ベランダがある。
バスタブを無くしてシャワールームとした。(この方が機能的である。高齢者はバスタブを利用しない場合が多いので)
職員がサービスを24時間提供している。
入居者は家賃を払うが、収入の25%(自治体により異なる)以上は払う必要が無い。
名称はプライセンターである(給食の機能などを含んでいる)。
身体介護は市の責任である。
個人に家事・看護(nursing)を市が提供する。
・ Community must provide home care service(市は、個人に在宅介護を提供する義務がある)
・ それは、必要に応じて、税金にて負担する。(デンマークでは保険方式ではなく、スェーデン同様に、税方式である)
選挙で選ばれた議員が政策を決めて、その政策が駄目なら議員は落選となる。
民間委託では民間業者と市の競争が行われる。
民間委託は、2002年4月(一ヶ月前)に法定化された。
昨年、政権が自由・保守政権となり法定化された。
しかし、社民党はこれに反対した。反対理由は、市の介護を希望する人が多いと思うとの事。
・ 法で、75才以上の人には予防をかねて訪問がある(介護を受けてない場合)。
・ 非常アラームは6000人が利用している。
・ 高齢者は我慢する人が多い。高齢者は遠慮してはいけない。アラームを受けた人が気を使うべきだ。
・ リーダーは、高齢者を歓迎する組織作りをするのが仕事である。
・ ホームドクターは夜間当番制である。
4、その他
爪などの手入れを含めて、高齢者の足のケアが大切である
共通の言葉で表現し、自治体間の比較をし易くする (Common language)事が大切である。
・ これを、点数制にして比較し、レベルT〜Wなどと評価している。
・ このような評価によって、どこまで利用の権利があるか否かがはっきりしてくる。
・ 看護婦(士)がケアマネージャでありこの人達が良く働く
・ 家庭医はその株を買って、家庭医の仕事を出来る。 家庭医は大体、1400名位を受け持っている。
・ 診療内容により県から金を受け取り、本人からも治療で金を受け取る。
・ 患者は医者を簡単に変えることができる。
5、教育について
教育期間
・ home helper 14ヶ月 1/3理論
・ Care assistant 34ヶ月
・ Nurses 45ヶ月
☆ リーダーの責任として次のものが要求される。
・ 運用がスムースに行われるようにすること
・ 見える存在であり何かあったらすぐに対応するのが大切
・ 現実をしっかり把握すること(現状満足では駄目)
・ やる気のある人を育てること。
・
☆ 高齢者の権利(Elderly peoples rights)として、次のものがある。
・ 他の市民と同じ権利を持つ
・ 高齢者の声を聞いてから政策を作る
・ 不服も聞く必要あり
・ 高齢者は大体満足だが清掃を20%位増やしてほしいと思っている。
・ The press as guardian (マスコミの監視が大切)
6、まとめ:
Home care has come a long way (在宅介護は長い道のりをたどってきた)
・ 高齢者は受身でなく積極的に暮らそう
・ 24hrs ホームケアを行うべき
・ 職員満足はユーザの満足となる
・ チームワークでプロが協力し合うべきである
・ 組織同士の協力も大切である
・ 以上のことにより同じ金でも多い価値が得られる。
・ But more hard work is still required(しかし、更なる努力が必要である)
7、〔質 問〕
・ 女性の活躍は? 女性は75%が就業している
・ 女性議員は 1/3
・ 委員会には女性の参加率を定めてるものもある
・ コペンハーゲン市は政令市で県と市の機能を有する。
・ 各部門に局長(市長)がおり、議員がなっている(地方自治体の議員内閣制と言える)
・ 昨年、福祉局にスキャンダルがあって局長が落選した。
・ 情報公開と質問への回答はよく行われている。
・ 選挙の投票率は 75〜80% と高い。
・ ホームドクターは専門クリニックに紹介もするし病院も紹介する。
・ 社民党には、民間排除の考えがある。(公営の考えが強い)
親の扶養義務について
・ 30年前から女性が社会に進出した。
・ それ以前に親の扶養義務は無く、親の扶養義務は昔の事だ。
・ 遺産の内50%は相続人が受け取れる
・ 介護の専門員に子は介入しない。(介護専門員に介護をまかせる)
第3章 特養(デイケアセンター併設)の訪問
(説明 アーネギュング氏)
1、概要
OK基金(民間)と言う、ケア基金(全国に支部75あり)により運営されている。
訪問した施設は、1979年に建設(デンマークの建築家が設計)され、プライエム(特養)として利用されている。
窓が低く、車椅子でも外が見える構造になっている。
以前のサンルームをBarに変えた。バンド演奏もあり、町の中のパブを感じさせる。
入居者は24名×4棟、年齢は34才〜102才。
若い人の施設がまだない。 若者と一緒の施設も良い。
2、このプライエムの特色
町中にあり普通の人が周囲に住んでいる。 普通の住宅の一階にには、ケアの必要な人が住んでいる。
敷地が広く、入居者の活動量の増加が期待できる。
リハビリとして、作業療法に60名がデイケアにきている
OK基金は15施設持っている。
市が運営費を出している
OK基金と市が話し合って経営している
市が職員を雇う。
OK基金の理念…・人が中心である。人の為に理事会がある。入居家族もメンバーである。
市の今年の方針…質の高いケアを!
ISO同様な質の確保がある
市支出額=9千万クローネ⇒1.6億円
OK基金…・バス旅行の援助などをする。
トローニング(創立者の名前)センター:ここで住民のデモクラシーを守っている。
職員への不備も話し合っている。
コンタクトパーソンは6人ぐらいを担当しその人を充分知っている。
希望者は3ヶ月以内でどこかに入れる。それが不備なら空きが出てから入る。
職員は200名(事務も含む)で、準看護士が多い。
2002.5.27
3、プライエムの内部を訪問
1)各居室の広さは16m2あり、入居者は活動的に過ごしている。
2)作業療法の室があり、作業療法士が2名+補助1名がいる。
治療プログラムの作成(療法士)、活動プログラムの作成(療法士)を行っている。
3)痴呆療法の室
30〜40年前風の家庭的室であり、
昔を思い出す室である。
図書館で古いものを借りて来て、その当時の思いに浸る事ができる。
4)デイケアの内容
60人/日が来る。
担当医、看護婦、家族のすすめにより来る。
できるだけ長い間自宅で暮らすのがデンマークの方針。
ここではネットづくりをして、旅行などにつき、家族へアドバイスをする。
8時〜9時に 自宅を出て、 2回/Week来る(土・日・祝休み)。
特に事前にやる事を決めていない。
この方が各自の希望を生かしてゆけるし、各自の責任が出る。
第4章 福祉機器事務所を訪問
1、福祉機器事務所
この事務所は県と市が運営している(展示室(2F)と倉庫(1F)がある)。
機器具は市が買い、コンピュータ管理し、メンテもする。
2Fで 試してみることが出来る。
必要なものは無料で貸し出している。
老いへの兆戦をしている
職員 15名
14000貸/年、11000戻/年、
6000件の申請有、3000品を買い入れる。
2千万クローネ/年を購入などに当て、600万クローネをその他に使っている。
車椅子・杖・歩行支持機など品数多し。
第5章 訪問介護の説明
@ ミェ モーゲンソンさん(看護婦)による説明
(在宅ケアのチーフ:こちらで12年働いている)
地域ケアは政策で管理されている。
ケアへの目的は政治家が決める。
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構成
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5000人がヘルプサービスをうけており、職員は830人いる。
ホームヘルパーは内527人。
ホームヘルパーグループは20〜30ある。
A アネッタ ヨーグさんによる説明
次のサービスを行っている。
日常サービス+個人サービス
長期サービス
短期サービス
介護受ける権利があるか審査に行く
介護の契約は、市と本人が契約する
ホームヘルパが働き易いかも審査する
契約変更には審査が必要である。
年齢に関係なくサービスをする(ヘルプが必要な人にはサービスする)。
ヘルプは18才以上(孫・娘など)であればそれを評価する(金を与える)。
末期看護も給料をもらえる。
保険でなく社会で介護をしてゆく姿勢(政治的判断)をデンマークでは取っており、これが良いと思うとのこと。
困っている人を助けるのが私達の姿勢だ。削るのは文化活動などを削っている。
必要な所に必要なサービスを与えている。(1クローネは16円)
物価 家 200万クローネ
おむつ 100クローネ
託児 3000クローネ
ホームヘルプサービスをするには学校へゆき、教育を受けなければならない。
訪問介護は政策的にこのことを行っている。
ヘルススホと言うITシステムでチェックしており、 大項目は20程あり 細かくすると数千項目となる。
娘が介護を代りにやっていれば(例えば買い物など)、それを記録しておき娘の旅行時などには対処する。
痴呆については病院で判定してもらう。
経験(20年)によりかなり判断出来る。
ホームヘルプの歴史は40年経っている。 (主婦の仕事の肩代わり)と言う名称が使われている。
6、予防訪問法(1996年制定)
1)「予防訪問」についての説明
予防は経済的でもある(税金を節約出来る)。
実際に効果があるし、または安心感も出来る。
75才以上に行う。
本人が持っている能力を発見してやる
そしてそれを使ってやる
痴呆の早期発見をする
理学療法士・作業療法士・ソーシャルワーカなどが行くそして協力し合う。
転倒骨折が多かったが、予防訪問によって12%も減った。
めまいを起こす薬を飲んでいる人も居るので、注意をしてあげると効果的である。。
強化パッド
チーズ+牛乳 カルシウム+ビタミンDを取る
大腿骨骨折防止パンツあり。(右図参照)
被訪問者と話した内容は守秘義務あり。
被訪問者とは、市に報告する内容も話し合う。
調査結果は政治家へ回る。これによって政策を考える。
階段での骨折は少ない。Eメールでも質問に答える。
2)労働組合とヘルパーについて
(Mrs Lisbeth スウェーデン人 による説明)
1)労働組合
98%が組合員である。
ホームヘルパーなどは一緒の組合である。
女性の就業は37hrs/weekが殆どである。
女性が就業しているために、家族のケアができない(家庭でのケアに経済的価値を与えた)。
自分で出来ることは自分でやってもらう。
3)ヘルパー教育
ホームヘルパは当初8Weeks講習だった
現ヘルパーは14ヶ月教育で、次の事を学ぶ。
生理学 アナトミー 解剖学、教育文化的背景、デンマークについて、英語、デンマーク語、数学など。
準看護婦教育は、生理学、病気についても学ぶ。
日勤の人は3Weeksに一度休日勤務あるが、代休は取れる。現在、人不足である。
4)ヘルパーのスケジュールと賃金など
7:45 出勤
8:00から 地域へ行き 移動に5〜10分使う
12:00〜12:30 昼食は30分 インフォメーション取得
この後 午後のひとの鍵を受け取る
昼食の準備(冷凍を暖める)
清掃
15:00〜16:00 地域詰め所に帰る。
ヘルパーに対して、知識(教育を進んで受けるように)を得るように指導している。そして、病欠(ヘルパー自身の健康に注意し)を防ぎ、長期に働くように指導している
新人ヘルパーにはベテランが同行する。
職員への足もみサービスあり(足が疲れるので)
50クローネ/月でアスレチックが出来る。(1クローネは約16円)
初任給:300クローネ/月だが、その後上がる
SOSヘルパーの給料は、16400クローネ/月
若者が入ってこないのが悩みである。
教育のために、学生給(教育を受けながら給料がもらえる)を導入している
組合を通した年金1800クローネ/月(給料 16400クローネ/月)がある。
市の職員数は、5000〜6000人であり、このうち、ホームケア担当者の人数が一番多い
全国平均の年収は20万クローネ/年である。
職員の昼食時間も有給となっている(昼食時間も労働時間に入っているので、食べながら仕事をすることもある)。
以上。