職業訓練大学校校長として初檄を飛ばしたドクターM
今回の震災等で日本人が見せた行動は本当に素晴らしいものだ。ミネタ元運輸長官が日本人の中にある「仕方がない」、その仕方のない環境の中で日本人は一生懸命に努力する、その根性が素晴らしいと云ってた。これは日本の風土や士農工商で農業が痛めつけられてきた状況が大いに関係していると思う。幕末の開国時、日本は農業国家で近代産業もなかったのに、諸外国の方々は日本の田舎を歩いて非常に感動した。小ざっぱりした質素な木綿の着物で、贅沢なところはないけれども、道行く人に笑顔で挨拶を欠かさない。そんな姿を見て「心が洗われるようだ。日本という国は素晴らしい」と絶賛したという記録が残っている。
ドイツの世界的建築家ブルーノ・タウトが来日したのは1933年(昭和8)。京都の桂離宮に案内された彼は、大きな衝撃をうけ、「実に涙ぐましいまでに美しい」と書いている。その後、日光東照宮にも行ったがそこでは感銘を受けなかった、インチキとまで言い放った。タウトは、伊勢神宮と桂離宮を「天皇趣味」と呼んで、日本建築の頂点とし、対極に「将軍趣味」の日光東照宮をおいた。「日光の大がかりな社寺の如きものなら世界にも沢山ある。それが桂離宮となるとまるで違ってくる。それは世界にも類例なきものである」「純真な形式、清新な材料、簡素の極致に達した明朗開豁(快闊でも良いと思う)な構造、これこそ伊勢神宮が日本人に対し、また我々に対して顕示するところのものである」そのシンプルさ、素朴さこそが日本の文化であるとまで云った。
そんな日本人の心根は経済大国になった後も、消えていなかった。それを知って非常に誇りに思ったのは私だけではないはず。しかし日本人が世界遺産にしようと、平泉や、そして富士山までも動いている。富士山などは日本人の象徴です。それに登録されなくても良いではないですか?日本は人も含めて日本全体が全て世界遺産なのだと思って生きるべきだ。今回のような日本国全体の危急存亡の時には、世界遺産申請や政局などで日本を汚してはいけないが、単にスマートで上品なだけでは駄目だ。何くそ!という野人のごときバイタリティや強さも必要だ。
リーダーというのは、教授であれ、社長であれ、組織をいつも元気づけるのが役目だ。リーダーが持っている人間性や思いを組織に浸透させ、組織を動かしていかなければならない。その時に一番大事なことは、己を捨てることだ(死ぬこと)。日頃から云う、一に学生、二に学生、三に学生、四、五がなくて六番目に息子が、七番目に母が、八番目に嫁が来るくらいでないと。リーダーが利己的な自分というのを少しでも持つと、組織を間違った方向に動かしていく。だから、フェアで公明正大でありながら、全身全霊で組織に元気を吹き込まなければならない。それは平時においても必要。そうすれば、いざ鎌倉という時にもひとつの方向に向かって組織が団結できるはず。
仕事というのは自分自身の心を立派にしていくために必要だ。どんな仕事でも良い、家事でも、その仕事が自分を磨く材料であり、道具だ。今回、地震や津波、放射能に見舞われたが、回復には何年も掛かるとは思うけど、未来への希望を持ち、不平不満をもらすことなく、「仕方ない」という環境の中で、精一杯努力をする人には必ず美しい未来が来る。行動の原動力は人間の心の状態で決まるはずで、何とかしようという強い意志を持って、何をも恐れず必死で実行していく。皆がそれぞれがリーダーになって、それぞれの持ち場で、くそっー!と奮起して、中国にも韓国にも負けたくない、負けるはずがないと必死になるしかない。