〜 約束の季節 〜

 

 
「どうしても謝りたい。これから会えないか?」
 久しぶりの健吾からの電話だった。

――――吹っ切れたはずだったのに・・・

 吹雪は言われるまま、駅前の時計の前で待っていた。
 前に健吾と言い合いになった場所だ。

――――嫌なことばかり思い出すなぁ・・・

 吹雪は遠い目をした。

「吹雪!」
 健吾が時間丁度にやってきた。
「・・・久しぶり」
 寂しそうに吹雪は挨拶した。
「ああ・・・」
 健吾も申し訳なさそうに挨拶する。

 健吾が今日吹雪を呼び出すに至った経緯は数日前にさかのぼる。
 その日、健吾の大学の正門の前に千尋が来ていた。
 どうやら健吾が出てくるのを待っていたらしい。
 あの日の光景を見ていた健吾は千尋の姿を目にすると、バツが悪くなって、
そのまま素通りしようとした。
「ちょっとそりゃないんじゃない?健吾クン」
 いつものように挑発的な態度で千尋は健吾に話し掛けた。
「待ってたってのにさ。」
「誰も待てなんて言ってない。」
「まぁそうなんだけどね、何でオレがここに来たのかはわかってるみたいだね」
「・・・ああ」
「二人の間に何があったのかを吹雪ちゃんに聞くのは失礼だから
 君に聞きにきたんだ。オレにもプライドってもんがあるから、
 はい、そうですかって彼女の心の隙間に入る気なんてないしね。
 だた、オレ吹雪ちゃんと健吾クンが付き合うときに、『泣かせたら
 貰うよ』って言ってたでしょ? 一応確認しにね」
「お前が悪いんだぞ」
「何が?」
「あの日オレあいつに『オレのことなんか見てないくせに』のような
 ことを言って泣かせたんだ。あいつがオレだけを見ないのは
 半分以上お前に責任があるんだからな。いつも会話の中に、
 お前の話が出てきて・・・正直いつもあいつが彼女な気がしないんだ。」
「まぁ、そりゃ同じ学校だからね、ネタになってもしょうがないんじゃないの?」
 千尋に指摘されて、健吾はむっとした。
「彼女が本当は誰を見てたのかもわかんないようじゃ、健吾クンに彼氏の資格なんてないよね。」
 そう言うと、千尋はその場を去った。

――――アイツが誰を見てたか・・・・・???

 酷く後悔の念を感じた健吾は、せめて彼女に謝りたいと思い、電話をかけるに至ったのである。

「この間はすまなかった」
 健吾はそう言うと吹雪に頭を下げた。
「やめてよ、こんなところで・・・それにもう済んだことだし。」
 吹雪は慌てて健吾の動きを遮ろうとした。
「済んだ・・・?」
 それを聞いて健吾は怪訝そうな顔をする。
「あの時までは私なりに精一杯アンタのことが好きだったよ。
 誤解させてたかもしれないけど、アンタとずっと一緒にいようと思ってたから。」
「今は・・・違うのか?」
 吹雪は一息ついてから、
「私を困らせないように、包んでくれている人がいるんだって思ったから、だから・・・」
「だからもう済んだことのか?」
 健吾は吹雪の腕をつかんだ。
「ちょっと、痛い、離して・・・」
「何でそれがアイツなんだよ・・・」
「健吾・・・」
「健吾クン、吹雪ちゃんを放してあげてよ。」
「千尋・・・」
 健吾と吹雪の視線の先には、いつものように不敵に笑う千尋の姿があった。
「ごめんね、吹雪ちゃん。登場が遅くなって。」
「ちょっと、なんでアンタがこんなところに・・・」
「吹雪ちゃんのことなら何でもわかるんだって」
 といいながら、吹雪の腕から健吾の手を離した。
「女の子の腕に痕を残しちゃだめだよ」
 優しく、しかしはっきりと意志をもった目で千尋は健吾を見据えた。
「わかった。吹雪、本当にすまなかった。
 コイツが嫌になったらいつでも戻ってこいよ。オレ待ってるから。」
 健吾は諦めたという感じでその場を去って行く。
 複雑な表情でその後姿を見つめる吹雪の肩を千尋は優しく抱き寄せた。
「ちょっと・・・」
 と一瞬抵抗しようとしたが、すぐに諦め、その腕に身を任せた。
「吹雪ちゃん、ありがとう」
「え?」
「オレを選んでくれてありがとう」
「バカ言ってんじゃないわよ。まだ決まってないわよ」
 吹雪は照れた顔を隠しながら一歩先に進んだ。
「ハイハイ・・・」

――――いつか吹雪ちゃんの口から『好きだ』ってきけたら
    まぁいいか・・・。
    暫くはゆっくり二人で歩いていけたら・・・
  

 Fin

written by Tsuna


【あとがき】
 お待たせしました。一応4部作の完結編です。
 この曲のイメージというだけで、ストーリーには最後の一節以外全く関係がなくなったのですが、ゴス兄さんたちの歌が使えてよかったということで。→ヲイ!
 ちなみに一応健吾クンが登場していますが、まぁ傷つけた程度のことですが、
純粋で生真面目な吹雪ちゃんにはアイスピックでグサってくらい
衝撃が大きいことだろうということでこんな感じになりました。
 なんだか消化不良になりましたが、ちーさんお誕生日オメデトウ&幸せになってください
ということで、このSSを捧げます。
 最後にいつもこのような駄作をお受け取り頂いたしーのさん、本当にありがとうございました。

【管理者より一言】
 きゃーvvv
 つなさんからのちーさん&吹雪ちゃんSS第4弾ついに完結編です。 
 なんと言うか、けんさん、吹雪ちゃんの気持ちを疑っちゃったんですね。
 相手がちーさんではけんさんも嫉妬してしまう気持ちもわからないではないですけれど。
 ついに吹雪ちゃんはけんさんと決別した訳ですが、まだちーさんを『好き』とは
言ってくれてませんね。
 早くその日が来ることを祈りつつ♪
 つなさん、お忙しい中、ありがとうございました。



Special Thanks!