――――これは甘えだ・・・
吹雪はそう思っていた。
健吾と色々あって、自分を慰める為・・・癒す為に最初は千尋といた。
しかし、切なすぎるほど彼女に優しく接する彼にこれ以上甘えられないと彼女は思いはじめていた。
確かに千尋と一緒にいるのは居心地がいい・・・だけどそんな勝手な都合で千尋を振り回す訳にはいかないのだ。それは彼に対してとても失礼な態度をとっていることになる。
いてもたってもいられなくなった吹雪は急いで用意をすると、千尋の家に向った。
かわいらしいチャイムの音がすると、反射的に千尋は玄関のドアを開けた。
今日は午前の講義で終わりなので、自宅に早めに帰っていたのだ。
「ハイ・・・吹雪ちゃん?どうしたの??」
慈しむような目で吹雪を見ると、そのまま彼女を通す。
「あの・・・今までごめんなさい・・・私・・・千尋に酷い事してた。」
「突然何言ってるの?オレいきなり言われてもわかんないよ?」
千尋の服にしがみついたまま、泣きそうな顔をしている吹雪をなだめるように彼は言った。
「だって、私アンタが何も言わないのをいいことに、甘えてたから・・・。
自分の事しか考えてなかったから・・・。だからもう千尋とは居られないよ。」
「・・・そんなことで悩まないでよ、吹雪ちゃん・・・」
彼女の肩を支えながらそう言うととりあえず彼女を家の中に案内する。
「あんな状態で自分以外を考えることが出来れば、それは偽善だよ、吹雪ちゃん。大体の事情は健吾クンからも聞いてるけど・・・」
千尋は『健吾』の名前を出してしまったことを少し後悔しながら、吹雪の顔を再度見た。やはり少し動揺しているようだ。
「・・・そう・・・」
彼女は静かに返事する。
「オレ、吹雪ちゃんが悲しむよりは、オレを利用してくれた方がいいと思うよ。」
「え・・・?何言ってるの??」
「だって、吹雪ちゃんが泣いてるのオレやだもん。せっかくの美人が台無しだよ。」
千尋は熱いココアを入れると、そのままリビングに運んだ。
「千尋・・・でも私だからってこのまあアンタの傍にいるわけにはいかない。」
意志をはっきりもって彼女はそう告げた。
「・・・それだけは言って欲しくなかったな・・・」
「え?」
「例え利用するでもなんでもいいから、オレを一人にするなんて言わないでよ。そのほうがよっぽどツライよ。すくなくともそんな状態の吹雪ちゃんでも、傍にいるだけでオレもすくわれたんだから・・・。」
「千尋・・・」
「遠慮なんていらないから。少しでもオレといることを望むなら、一緒に居てよ。あの日君を呼び止めたのもオレのワガママなんだから・・・」
「でも甘えるわけには・・・」
「甘えてよ・・・。せめてオレにくらいさ。」
そう言って千尋は右手で彼女の体を引き寄せた。
吹雪も最初は抵抗しようとしたが、少しすると力を抜き、彼の腕にもたれかかった。
「一度甘えたら甘えっぱなしになっちゃうじゃない・・・」
「吹雪ちゃんにはそうでもオレはオレで吹雪ちゃんの存在に甘えてるんだから。お互いさまだよ。」
「そうかな」
「うん、オレを信じなよ」
いたずらっぽく微笑みかける彼を見て、彼女の表情も自然にほころぶ。
「アンタは変わらないね、昔から・・・」
「そうでもないよ。変わらないものなんてないんだから」
千尋は優しく彼女の髪を撫でる。
「オレたちもいい方向に変わっていけばいいんだよ。」
そうしてまるで子供をあやすように、そう言った。
「そうだね・・・」
最初は千尋とはもう会えないということを伝えに来たはずなのに、なぜか今二人の未来のことを考えてしまっている自分を不思議に思いながら吹雪は頷いた。
――――これも千尋の「罠」なのかな??
でも今はこの居心地のいい「罠」に包まれて、
未来を見てみたい・・・
勝手なワガママかもしれないけど、今確実に
私はいい方向に変わりつつあるから・・・
Fin
written by Tsuna
【あとがき】
うーん。このシリーズ書き始めるとはまりますね。
すっかりシリーズ化してしまいましたが、しーのさん、毎度お受け取り頂きありがとうございます。
一体いつまで続くのか?
そして一体健さんは何を???・・・という質問が「かなり多数」寄せられたため、このシリーズの
健さんバージョンを別に作っています。
またそちらもお楽しみくださいませ。
いつも読んでいただきありがとうございます<m(__)m>
【管理者より一言】
きゃーvvv
つなさんからのちーさん&吹雪ちゃんSS第3弾です。
ちーさんは相変わらず優しい♪
少しずつ吹雪ちゃんが前進していますね。でももっとちーさんに甘えて〜。
『二人の未来のことを考えて〜』……どんな未来を考えているのでしょうか。
しあわせな未来でありますように♪
つなさん、お忙しい中、ありがとうございました。
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