ある日の夕方、雨の中立ち尽くす彼女がいた。
普段の彼ならそのまま素通りしていただろう。
でもそのときは違っていた。他の相手なら、むしろ放っておいてやろうという気持ちが働いたが、彼女に対してはそういう彼の中での普通の感情が覆される。
手にしていた傘をそっと彼女の頭上にかざすと、空いた手で優しく彼女を抱きしめた。
「・・・・・とりあえず、うちで暖かいお茶でも飲もうよ。
これじゃ家に帰れないでしょ?」
彼はそういって彼女を自分の家に招いた。
ずぶぬれになった彼女にシャワーを浴びさせ、その後で彼が用意した母親の服に着替えさせた。
「落ち着いた??」
千尋はミルクから煮立てた「チャイ」という形式のお茶を吹雪にすすめた。
「ミルクからおこしてるからあったまると思うよ。」
吹雪は軽く頷くと、カップに手を伸ばし、口をつけた。
「・・・おいしい」
「よかった(笑)」
千尋は本当によかったという顔をした。
「・・・何も聞かないの??」
不思議そうな顔をして吹雪は千尋に尋ねた。
「聞いてもしょうがないでしょ?オレには多分関係ないことだもん。」
あっけらかんと千尋は応える。
「それもそうだね・・・(笑)」
その返答にすっかり安心しきった彼女はやっと笑顔を見せた。
「よかった・・・」
「え?」
「笑ってるならそれでいいんだ・・・」
吹雪は以前同じような言葉を千尋の口から聞いた気がしてまた不思議そうな顔をした。
――――あ・・・高2の時確か小林クンに・・・
「吹雪ちゃん・・・」
優しく千尋が言う。そしてその優しい眼差しに吹雪はうっかりすると吸い込まれてしまいそうになった。
「オレなら吹雪ちゃんを泣かせないのに・・・」
――――オレと一緒にいてよ・・・
声にならない声が唇の動きで僅かに感じ取れた。
彼女もそれをさっして身動きが取れなくなる。
「今じゃなくてもいいから、吹雪ちゃんが気持ちの整理ついたらでいいから・・・」
彼はやさしくそう告げる。
彼女はそれを肯定も否定もせずにそのままたたずんでいた。
お互いに何か変わる・・・その前兆だけを感じながら・・・
――――今は君が恋人じゃなくてもいい
君が癒される為にオレの未来を提供できるなら
それを喜んで捧げよう
・・・・・ずっと好きな君のためなら・・・・・
Fin
written by Tsuna
【あとがき】
健さん&吹雪ちゃんが主流となっている「Tsuna缶」では考えられないようなストーリーになってしまったため、千尋さまファンクラブのメインサイトともいえるしーのさんのところに進呈させていただきました。
なんだかドラマみたいなストーリーになってしまいましたね(汗)
これはゴスペラーズの「You'll be mine」という曲をイメージして作った作品ですが、ちーさんが絡むとまたぐっとオトナっぽくなってしまいますね(汗)
場面は大学生の二人・・・という設定になっていますが、一体健さんは吹雪ちゃんを泣かすような何をしたんでしょうか?
(私が考えていない辺りが恐ろしい)
なんだかよく判らなくなってきましたのでこの辺りで(汗)
健さん派の方ごめんなさい<m(__)m>
【管理者より一言】
いいです!
ホントに、このお話素敵です!
めちゃくちゃ優しいちーさん、きゃ〜vvv
つなさんのおっしゃるように、ドラマの一部を見ているようで、ちょっとシリアスぽっくて、
とにかく私は気に入りました。
ちーさんの台詞がまたいいです!
『笑っているなら〜』の使い所も抜群。
お互いに何かが変わる前兆を感じる……く〜(>_<) もう言うことなしに素敵です。
けんさんと何があったのかわかりませんが、悲しむ吹雪ちゃんに優しくするちーさん。
もう私はメロメロです〜vvv
つなさん、お忙しい中、ありがとうございました。
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