Trouble maker
(『聖・はいぱあ警備隊』より)

Trouble1

 待合せ時間から5分過ぎた。
 あたりを見渡し、待合せ相手の姿が見えないのを確認した高屋敷は、またか、と思う。
『今日は絶対に時間通り行くから!』と約束したというのに、これである。
 少し呆れながらも待つ事には慣れているので、まだこの時点では何も心配していなかった。
 さらに5分。
 周りにいた、同じ時刻に待ち合わせしていたと思われる人達はもうどこかに行ってしまし、高屋敷だけが取り残されているようである。
 とはいえ、この程度ならいつものことなので、まだ慌てる事はない。
 そう思いながらも高屋敷はため息ひとつつく。
 ……そして、さらにじっと待つ事20分。
 さすがにここまで時間が過ぎてしまうと何かあったのではないかと心配になる。
 遅れるなら遅れるで携帯電話に連絡が来るはずなのだろうが、その気配はまったくない。
 事故か何かあったのではないだろうかと、高屋敷は少し青ざめながら電話をかけた。
 コール2回でつながった。
『はい?』
「梨本か?!」
『あれ、高屋敷?』
「今どこにいる?!」
『今? コンビニだけど』
「コンビニ? そんなところで何しているんだ?! 待合せの時間はとっくに過ぎてるんだぞ!」
『嘘?! もうそんな時間?』
 携帯電話の向こうで慌てている様子が伝わってくる。このぶんだと本当に時間が過ぎたのがわからなかったらしい。
 高屋敷は内心ため息をつく。
「そこで待ってろ。今行くから」

 つぶらがいるというコンビニは、待合せ場所から5分ほど歩いたところにあった。
 コンビニに入るなり、つぶらの姿を発見した高屋敷はホッと安堵の息をもらす。しかし、すぐに軽く睨むような視線をつぶらに向けた。
「そんなに睨まないでよぉ」
 肩をすくめ、上目遣いにつぶらは目の前の高屋敷を見上げた。
「で、コンビニで何してたんだ?」
「えっと、あのね、口紅見てたの」
「口紅?」
「どこかで落としちゃったみたいなの。お化粧直そうと思ったらないんだもん」
「口紅なんかいつもつけてないだろう?」
「そうだけど……。でも今日は口紅したかったんだもん……」
「何故?」
「コンビニコスメなんて安っぽいかなぁなんて思ったんだけど、してないよりはいいと思ったし……」
「だから、何故した方がいいんだ?」
「だって……」
 視線を横へ向け、言いにくそうにするつぶら。理由を言うのが恥ずかしいのか、ほんの少し頬が赤くなっていた。
 そんなつぶらの様子に、高屋敷は自分が彼女を強く責めているようで、逆に悪いことをしているような気分になる。けれど、30分も待たされたのだから理由を聞かないわけにはいかなかった。
「だって……なんだ?」
 少し口調を強めて問いただす。
「……今日は高屋敷とのデートだよ? お化粧して、かわいくなって、それでデートした
かったんだもん!」
 つぶらの顔は真っ赤になり、こんなことを言わせた高屋敷に向かって小さく『高屋敷のばかぁ』などとつぶやいていた。
 高屋敷の方もまた、つぶらと同じく顔が赤くなる。
「あ、阿呆、そんなことで……」
 冷静を装いつつも、つぶらの言動があまりにも可愛くて、今すぐこの場で抱きしめたくなる。けれど、ここでそんなことをしてしまえば、つぶらの平手打ちが飛んでくるのは間違いない。そんなことになってつぶらに帰られでもして、せっかくのデートを無にするわけにもいかない。
 高屋敷はなんとか表情をこれ以上崩さないように無愛想を装い、陳列棚の口紅を一つ手に取った。
「……この色でいいな? 買ってくるから待ってろ」
 高屋敷はつぶらの返事を待たずに、それをレジへと持って行った。
 手に持った薄いピンク色の口紅を見つめた後、グッとそれを握りしめる。

 化粧なんかしなくてもかわいいのに。

 と思うものの、この口紅をつけた唇を想像し、思わず顔がゆるんでしまいそうになる高屋敷であった。

                                  Fin


<ちょっとフリートーク>

らぶらぶな2人です〜。
いや、もうこの2人を書くと、勝手にしてくれ〜って感じです(笑)
実は今回のこのSSにはモデルとなる曲があります。
ちなみに、高橋直純さんの『トラブルメーカー』という曲です。
これの歌詞ではもっと男のコが女のコに振り回されています。
ふとこの曲を聴いていて、強気でわがままを言っちゃう女のコと、どんなわがままも許してしまう男のコっていうと……、と考えていたらこのカップルが浮かんできたんですよねぇ。
このSSは1番の歌詞をモデルにしているのですが、2番の歌詞でも話を作ろうと思っています。
ということで、モデルの曲を聴くと、このSSをもっと楽しめるのではないかと思います。
『トラブルメーカー』はただ今発売中のミニアルバム『〜kiss you〜』(2,200円/税込)
フルアルバム『A to Z』(3,150円/税込)のどちらにも収録されています。
最寄りのCDショップ(声優コーナー)またはアニメイトにてどーぞ♪
ではよろしく〜(笑)

  


 

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