水彩画の技法メモ
水彩画の技法はいろいろ本やネットで紹介されていますが、私の多用している方法や、見聞きしてビックリした方法などをまとめておきます。基本的に自分のためのメモです。
いろいろな描き方があるもので、下絵なしでいきなり水彩で描く人、鉛筆で克明に書き込んで薄く一塗りする人、透明水彩をグアッシュのようにこってり塗る人、パステル・ペン・色鉛筆などあらゆるものを援用する人、一応禁じ手となっている黒や白をガンガン使う人と多様です。
ある教室の指導の先生が生徒の絵に手をいれたあとは、紙の上が池のようになり、道具もナイフや筆の尻・ポケットの隅から取り出したスポンジのかけらなど何でもありです。
とくにコンテスト目当ての人の表現方法の追求は特別です。
私としてはいまのところおとなしく、透明感のあるにじみを生かした画をマスターしたいと思っています。
神の声 「技法ばかりでは絵はかけんぞー」    ハハーっ
1.にじみ・ぼかし
ウエット オン ウエット とか垂らし込みといって、水あるいは彩色で紙を濡らしたたうえに、絵の具を塗ってにじみこませる。影など色の連続的的変化に有効。水彩ならではの技法で透明感のある甘い画に貢献する。十分に濡れた上にさらにたっぷりと垂らしこむと、前の絵の具を排除しながら広がり、強いエッジのにじみむらが出来てしまうので注意。垂らし込むときの湿り具合の読みが難しい。下の水分が多いと、時間がたつと完全に混ざり合ってしまうのにも注意。適当なところでドライアーで乾かしてしまうのが吉。
ドライ オン ウエットというそうであるが、かなり濃い絵の具で垂らし込むと、周辺部のみわずかにじむが、中央はその色のままで乾いてしまい、きついコントラストのあるにじみができて、良いアクセントになることがある。

2.リフト

雲や葉っぱの光ったところなど色を薄くしたいとき、色を塗ったあとすぐに、あるいはあとで水でぬらしてティッシュなどでふき取る。左手にはいつもティッシュを握っている。鼻輪をしたティッシュ配りには必ず近寄り手を出すこと。彩色を失敗した時もすぐに拭けば消せるが、食いつきの激しい紙や安い画用紙はこの手は使いにくい。
ティッシュの替わりにカット綿を使う人もいる。雲を表すときに良く使う手である。
折角塗った絵の具をほとんどふき取ってしまうときもあり、ああもったいない。
花瓶が机に写ってるとか、水面に景色が反映しているような時も縦にふき取る。
乾いたあとでもぬれた筆でこすってからきつくふき取れば、ある程度可能。
細く筋状にふき取りたい時は、ティッシュでは困難なので、筆の根元をティッシュで巻き、筆先で吸い取っていく。でもこれは面倒でやっておれん。綿棒でこすりとると、細かいリフトが出来る。。
鶴太郎がテレビでやっていたが、こよりで吸い取ると白い線が現れる。これも使えそうである。
リフトも紙の性質や絵の具によりうまく出来ないことがある。

2.塗り残し
明るいところや、ビンの光っているところは白く塗り残し、そのままにするか、乾いてから薄く彩色をする。塗ってすぐにティッシュなどで拭き取っても同様の効果になる。これが白を使わない(でもいい)理由の1つ。

3.マスキング
塗り残しが細かくて難しい時は、マスキング液を筆などで塗って、それが乾いたあと色を塗り、絵の具が乾いたあとゴム板や指でマスキングをはがすと色のない下地が現れる。筆はダメになってくるので専用の細いものを用意。小面積がほとんどなので、爪楊枝などを使い捨てにするのも吉。やや高いので、代用品を発見した。170円程度のペーパーボンドというチューブ入りの紙用のはがせる糊。これは爪楊枝で塗るしかないが乾燥が速いのがよい。
マスキング用のテープもあるが抽象画など特殊目的か。これではにじみこむところが出て、完全なマスクにならない。
花などを描いて後で背景を塗るときなど、花をマスクしてから背景を塗ると楽だし、色の重なりを避けられる。


左 ペーパーボンド        右 マスキング液

4.ウオッシュ
フラットあるいはグラデーションをつけながら広く彩色するもっとも普通のテク。たっぷりの絵の具を紙の傾斜を利用したりして手際よくむらなく塗り、だんだん水をふやしていけばグラデーションができる。むらの無い塗り方をしたい場合は、あらかじめ水で濡らしておくが、水が多すぎる状態ではかえってむらになる。
最も基本的な技術であるが、それぞれの紙の性質にもよるところが多く、よく失敗する。

5.スクラッチ(ドライ)
ビンの光ったところなど、乾いたあとでナイフでこすって絵の具を落として地の白を出す。数・面積がマスキングするほどでもないときに吉。
紙を削らず絵の具だけを削るようにするのが吉。荒い紙を点々に削るのも面白い効果となる。あまり多用すると品の無い画に。サンドペーパーで削る方法もある。荒い紙だと面白い効果が出る。

6.スクラッチ(ウエット)
葉の葉脈などは絵の具を塗って濡れているうちに、ナイフで葉脈の部分を削るか切れ目をいれると、そこに多く色が染み込みそれらしくなる。
色を塗る前に削っても良いが、あとのほうが効果を確認しながら進められる。うーん、そこまでやるかという技法。
ナイフで削らず、筆の尻などでこすって紙にくぼんだ筋をいれ、そのくぼみに色を集める方法もある。葉の葉脈を表現するときなどに有効。

7.絵の具を集めて濃淡をつける
空の上のほうを濃くするようなとき、画を傾けて絵の具を集めるようにする。または息で絵の具を吹き寄せる(これを見たときはビックリ)ことで濃淡を作る。
画を傾けるには後出のような紙を傾けられる三脚が吉。

8.スポンジで描く
スポンジは水張りや、絵の具のふき取りの時だけでなく、筆の代わりに使う事ができる。木の葉やコンクリートの粗面を表すとき、やや濃い絵の具を染ませてポンポンとたたく。ゴム印のように同じパターンが続かないように握りを変えてやるのが吉。

9ドライブラシ
濃い絵の具で荒い紙の上をザットなでるとか、筆を寝かせて腹でこするとざらざら感がでる。
また、筆の先をつまんで広げ、先端でこすったりたたいたりして点々を表す。
筆の先をザックリ切ったものを作っておくと、なにかと使える。

10.スパッタリング
りんごの点々やコンクリートブロックの表現などのとき、歯ブラシに絵の具をつけ、毛先を上にして紙の上でブラシをしごくようにして、絵の具を飛ばす。予めティシュなとで汚れては困るところをカバーしておく。専用の道具もあるが。
筆に絵の具を少なめに含ませて、反対の手の甲や別の筆の柄に筆を打ち付けるようにして、絵の具の粒を散らせる。別のところで様子を見てからやるのが吉。

11.木炭を刷り込み、影を作る
花の中央の暗いところなど、絵が濡れているうちに、暗くしたい部分を木炭(備長炭ではないゾ)でこすり、さらに指ですりこむ。粗い点が現れなかなか面白い。

12.冷凍庫で凍らせる(PAT.PEND)
これはやったことがない。だれかやってみてくれ。にじみの進行をとめる時冷凍すれば止まるし、冷凍庫の中は乾燥しているのでそのうち氷が昇華して乾くような気がする。そういえば電子レンジでチンすればすぐ乾くかな。色が飛んでも責任とりません。
 
13.メディウム
ウインザー&ニュートンのスケッチ用のセット箱の中を見たら、メディウムのビンがズラリ4、5本入っていてビックリした。あちらでは当然のように使うのかも知れない。
透明感や深い色を出すのにアラビアガムを混ぜるといいらしいので、購入したが、まだマスターしていない。
水をはじくような紙の場合には水に2,3滴オックスゴールを垂らすといい。アルシュなど絵の具の乗りの悪い紙は筆で2,3度こすらないと乗らないので、これがいいようだ。牛の胆汁だそうで、ちょっと気持ちが悪いが。

14.他の画材の併用
細いマジックやペンで、輪郭を書くひとは結構多い。ある先生の持ち物を真似てセピア色のインクと葦ペンで線を足したら様になったことがある。黒ではきつすぎる事もある。
竹や葦のペンをインクビンにつけてかいていると、ボタ落ちして台無しになることがある。
そこで上手いアイデアをいただいた。フイルムケースなどの中に脱脂綿を入れ、インクを染ませておいて、ペンにひんぱんに湿らせながら描くといい。
最近は油性のほかに耐水性の水性インクの用具もあるので先に線を描く事も容易になった。
あと、コンテやクレパスを加える人も結構いるし、グアッシュやアクリルも併用した絵は展覧会に行くとよくお目にかかる。すこしならいいが、ごった煮みたいになるのはどうもいただけない気がする。何を使っても優れた絵になればいいのだというのも分からんわけではないけど。
また鶴太郎だが、魚の目玉を先にクレヨンで塗り潰してから、顔彩を置いていた。マスキングを兼ねた方法で感心したが、かれの使う紙や色の乗せ方は墨と顔彩を使った水彩画のような気がする。墨彩も多様化してきたのか。

15.洗い
絵を風呂場に連れて行き、流水をかけながら筆かスポンジで全体あるいは必要な部分の絵の具を洗い流す。面積が狭ければ濡らしたスポンジでこする。どぎつい色が落ちて柔らかい感じになる。海綿が紙を傷つけないのでいいが、台所のスポンジでも変わりはないようだ。乾いたあと必要なところはさらに加筆する。
失敗したときは洗うことである程度復旧できるが、これをはじめると癖になるかも。
公募展に応募するような水彩画は2,3回は洗って加筆することで深みを出すのだそうである。

15.思いつき
極寒の中で書いていると、絵の具が凍るそうである。エチレングリコールの不凍液はまずそうなので、アルコールを水の中に入れたらどうだろう。これは早く乾かしたい時にも使えそうである。燃料用だとメタノールが入っているので、矢張り100%エタノールでないと。怪我をしたときも3〜4割水を加えたら消毒にも使えるし、寒い時は薄めて飲めるし、これはいいぞ!おいおい、何を考えているのだ。



 


                 道具などについて



●水彩用三脚

厚さ5mmのアルミ板を切り、5mmのドリルのあとウイットネジ1/4の中タップとタップ回しでメスネジを切る。あと木ネジの穴を適当に明けてから、カルトンかシナベニアに取り付ければ出来上がり。木ネジが飛び出さないように。
W1/4のネジというのはカメラと折りたたみ傘の石突のねじがそうで、傘にカメラがつけられるのだ。


カルトンにカメラ用の安い三脚を取り付けた。なかなか快適。角度は自由にる。


●絵の具の毒性
小学校の時、筆をなめてつばで絵の具をといているやつが居た。口の中はいろんな色に染まっていました。生きているだろうか、あいつは。
かなりの色は毒で、カドミウムやコバルトなんてのはよく絵の具につかうなと思うほどだが、どうもほとんど別の材料らしい。シルバーホワイトも銀ではなく鉛だし、ほかにも毒は多々ありそうだ。ある美術学校の校庭は重金属に冒されていて、以後廃棄を厳しく管理するようになったとか。
パレットや筆洗は台所で処理しないようにしている。

●絵の具について
下手なのを道具でカバーする方針を取って、絵の具はウィンザー&ニュートンの固形のセットを退職金をはたいて購入した。この絵の具は成功したと思っている。緑系は感覚が違ったので色を追加した。ラウニーのチューブが手に入ったのであとはそれで追加している。
日本のもかなり良くなっているようだか、透明感というか粒子が異なる気がする。
ドイツやフランスのも少し安くあるが、混ぜると色が濁るとかいうウワサを聞く。
マッチカラーという3原色だけの絵の具があって、毒ではなくて、混ぜても濁らないというので求めたが、色を作るのに時間がかかってたまらない。買ったあとで気がついたらパソコンのプリンターのインクの応用ではないのか、この3原色というのは。パソコンでプリントした写真はすぐ色あせるので、この絵の具も疑っている。
アルウイン・クローショーさんの3原色は本を読むと、どうも、イエローオーカー、クリムソンアリザリン、フレンチウルトラマリンのようで、他の色はちょっと足して使っている。3原色の上手い使い方を研究しなければと思っている。

●筆
安物の水彩用のを使っていたが、ネットで見て日本画の彩色筆や隈取筆を使ったら離れられなくなった。
コリンスキー・セーブルの毛の国産の筆が安くあったので買ってみたが、筆先がまとまらず、使いにくい。毛をそろえるところに特別な技術があるらしい。定番のラファエルの筆は喉から手が出るが、1万以上するが価値はありそうである。

●紙
これは友人のセミプロ風スケッチの大家の指導を得て、のっけからアルシュ(フランス)の荒目を採用した。しかもロールで購入。その前はちょっとモンバルキャンソンやマーメイドを使ってみたが食いつきがきつかったり、擦っているともろもろになった。アルシュはじゃじゃ馬みたいな紙で、乗りこなすのが大変だったが、それなりの発色で丈夫である。風呂場でたわしでこすっても耐えてくれた。
ちょっと細かい表現に向かないのでアルシュの極細を試したら和風の感じが出たり、鉛筆が効きすぎる。そこで細目を試したらなかなか良さそうで、またロール買い。これが本命の1。
300gあれば水張りはしなくてもなんとかなるのでスケッチ旅行は水張りは省略である。
アルシュはカゼインを染ませてあるそうで、ロールを部屋に置いておくと獣くさいのが難点。
発色がいいというイタリアのファブリアーノは日本ではなかなか手に入りにくいので、アメリカから個人輸入したら街の1/3ぐらいで手に入った。ちょっと紙質が弱いようだ。本来はクラシコ・ファブリアーノが本物だが手に入らないので、ARTISTICOというのを使っている。これが本命の2。
ワトソン(国産)も一旦塗った絵の具をあっさり手放してくれリフトが自由にできるようで、こいつもちょっと使って見たが、ちょっとにじみがよくない感じであった。ワトソンは少し黄色い色であるが、ホワイトワトソンというのをロールで売っており、やや厚手でいいのだが、色ののりが何となくしっくりこない。
あとデネブとシリウスという国産の紙をロールで求めてみたが、デデブはまあまあであったが、ちょっともったりしている感じであきてきた。シリウスは少し薄手で弱く、絵の具ののりはいまいちでcansonのfinefaceとそっくりであり鉛筆淡彩に向いているかもしれない。あとイギリスのラングトンも使ってみたいがこいつは高いなあ。デネブと似ているともいわれるので、デネブでいいか。
同じ紙を使っていると飽きてくる事も有り、紙遍歴は続きそうである。

                             

着色技法