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削りすぎの治療で問題になるのは、むし歯治療ではなく、ブリッジや白い歯をかぶせたりするときの切削量の多さです.

東京都新宿区中落合2-20-6
TEL.03-3954-8844

削らない治療・削りすぎの治療


このページの目次
歯医者に行くと削られる
削れば削るほど歯の寿命は短くなる
削ることに罪悪感を持たなくなった最近の歯科医

保険診療、自費治療、ともに削りすぎの弊害をともなう
”白い歯”は削りすぎに注意
むし歯の治療はきちんと削る必要があります
”ウェブサイトで宣伝される”削らない治療


歯医者に行くと削られる

歯科治療が歯の健康に対する脅威になっている

 イヴァン・イリイチが「医療そのものが健康に対する主要な脅威になりつつある」とその著書「脱病院化社会」で、現代医療に警鐘を鳴らしたのは今から30年も前のことです.
 そして、その危惧は少なくとも歯科医療に関しては、現実のものとなってしまいました.

 歯医者に行くたびに歯を削られ、健康なエナメル質やゾウゲシ質が痛めつけられ、神経を抜かれ、歯そのものを失い、役にたたないインプラントが口の中に突き出て、人生の終末には口の中が目も当てられない状態になってしまうことが現実に起こっているのです.

歯の切削は口の崩壊の一里塚

 切削器具や麻酔の進歩により、歯を削ることが容易になり、このことがかえって歯の寿命を短くしてしまっています.

 目先の審美性や咀嚼能力回復のために健康なエナメル質を全部削りとってしまう治療を続けていると、口全体の崩壊を早めてしまう可能性があります.

 「こんなに削ってしまって・・・・」とため息をつきたくなる症例が後を絶ちません.

 「これほどまで削られてしまうことを知っていたら、セラミックの歯を頼まなかったのに」と後悔している患者さんも一人や二人でではありません.



削れば削るほど歯の寿命は短くなる

治療した歯もむし歯になる・二次カリエス

 インレーやクラウンの中にむし歯ができてしまうことを二次カリエスといいますが、この二次カリエスができてしまうことはそれほど特別なことではありません.

 不適合な補綴物を装着すると、時間経過とともに、補綴物と歯との間に介在するセメントが溶出して歯とクラウンの間にむし歯菌が入り込んでむし歯ができてしまいます.

 クラウンやインレーを形成した歯科医がむし歯(軟化ゾウゲ質)をとり残してしまったために二次カリエスができてしまうこともあります.

 クラウンやインレーが不適合かどうかは患者さんにはよくわかりませんし、軟化ゾウゲ質を取り残しているかどうかは処置した歯科医にしか分かりませんし

二次カリエスができればまた削ることになる

 クラウンやインレーは10数年持てば“まあまあ成功”と考えられています.

 つまり10年たったら、補綴物の中に二次カリエスができて、新たに処置をしなければならないケースも多くなるわけです.
 クラウンやインレーに二次カリエスができてしまうと、再治療を余儀なくされます.
 新たに歯を削ったり、場合によっては神経をとらなくてはならなくなってしまいます.

 つまり、一度歯を削ってしまうと、10数年も過ぎると再治療の可能性が高くなり、それを何度か繰り返していれば、歯質は削られ、最悪の場合歯を失ってしまうということになります.

 早く噛めるようになりたい、きれいな歯が欲しいからといって、健康な歯を削ることは、歯を失う可能性を高めているということになるわけです.

削られた歯は破折をおこしやすい

 二次カリエスが進行して、神経をとってしまった歯は歯が割れる“破折”の危険性も高まります.

 抜歯の理由の1/3以上が歯根破折といわれるほど、近年破折が増加しています.破折歯のほとんどは二次カリエスの歯や神経をとってしまった失活歯で、切削されていない健康な歯がいきなり歯根破折を起こしてしまうことはほとんどありません.



削ることに罪悪感を持たなくなった最近の歯科医

エアータービン

 歯科医院へ行くと聞こえる「キィ〜〜ン」というあの音、好きだという人はまずいないでしょう.この「キ〜〜ン」の音源はエアータービンという歯を削る器械です.

 圧縮空気を利用したハイスピードタービンは1957年米国で考案され、1960年代に製品化されたのですが、あっという間に日本中の歯科医院に広まりました.

 それまでの歯を削る器械では、クラウンやインレーの形成に20分も30分も時間がかかっていたのですが、エアータービンではほんの数分でできるようになったので、重宝なことこの上もなかったのです.

タービンの出現で削るのが容易になった

 特にブリッジや陶材焼付冠などの切削量が必要な補綴物の形成がいとも簡単にできるようになったので、その便利さに多くの歯科医が飛びつきました.

 それほど遠くない昔、低回転のエンジンで時間をかけて削っていたので、一本一本のむし歯を治すのがやっとだったのですが、ハイスピードタービンの出現で、噛み合わせや審美性を考えて、口の中全体を改変する事が出来るようになりました.

削ることに罪悪感を持たなくなった歯科医たち

 「一歯単位から一口腔単位へ」という考えが広まり、口の中のほとんどの歯を削ってしまう治療も珍しくなくなりました.

 その結果、見た目やその場限りの機能回復のために、健全な歯質を削ったり、健康な神経をとったりしてしまうことが抵抗なくなく行われるようになりました.

 補綴物を入れるために健康な歯を削り取ってしまうことに歯科医師は罪悪感を感じなくなってしまいました.

 「オーラルリハビリテーション」などと称してすべての歯のエナメル質を根こそぎ削り取ってしまう高額な治療法がもてはやされたのは、“削ること”に抵抗が無くなった歯科医たちの傲慢さがよく表れているのではないかと思います.



保険診療、自費診療、ともに”削りすぎの弊害”をともなう

保険診療の”削りすぎの弊害”

 タービンを使うことで、歯を自由自在に削れるようになったことは歯科界にとって朗報であることに間違いはないのですが、削るのが容易になったために、必要以上に歯質を削るようになってきました.

 歯の表面を覆っているエナメル質を削り取ってしまうと歯は格段に弱くなってしまいます.
 さらに削りすぎで神経まで取ってしまうと歯の寿命を大幅に短くしてしまうことになります.

 日本の健康保険制度の報酬は”出来高払い”といって、削れば削るほど収入が上がる仕組みになっているので、簡単に削れるハイスピードタービンの影響で、小さなむし歯でもどんどん削って、簡単に神経をとってしまうという”削りすぎの弊害”が生まれてきました.

自費治療にも”削りすぎの弊害”が

 近年、歯科医院の増加、患者数の減少によって“出来高”の減少に見舞われた歯科医院は保険診療では採算がとれなくなってしまいました.
 その結果、数による出来高ではなく、高額な単価に活路を求めた歯科医院は自費診療にその軸足を置き始めました.

 その中心に置かれたのが、インプラントとセラミックなどの白い歯です.

 自費診療のセラミックなどの白い歯は、金属のクラウンに比べ、歯を多量に削り取る必要があるので、歯質の削りすぎ、神経をとってしまう確率が高くなります.
 したがって自費診療でも“削りすぎの弊害”が起こるわけです.


”白い歯”は削りすぎに注意!!

 
  “削らない”ということで、注意して欲しいのは、むし歯の治療ではなく、修復処置での削りすぎです.
 特に“白い歯、セラミック”などの高額な補綴物は切削量が多くなるので注意が必要です.

 多くの歯科医が白い歯にしましょうと、さかんに自費治療に誘導していますが、これらの治療は“削らない治療”の対極に位置する“削りすぎ治療”の最たるものです.

 皮肉なことに、3mix法やドックベストセメントで削らないことを吹聴している一方で、削りすぎる白い歯を勧めている歯科医院が非常に多いのが現実です.

 ”削らない”むし歯治療を宣伝しながら、”削りすぎる”白い歯を勧めるのは矛盾しているように感じますが、どちらの治療法も自費治療だということが分かれば合点がいきます.

 患者さんの歯や口の健康より、医院の経営を考えて治療法を選択する歯科医が少なからずいるということです.

 ”削らない治療”というキャッチフレーズにひかれて行った歯科医院で、白い歯のために大幅に歯質を削り取られてしまったり、歯を抜かれてインプラントにされてしまうということは稀なことではありません.



むし歯の治療はきちんと削る必要があります

むし歯治療の基本は軟化ゾウゲ質を除去すること

 歯を削れば削るほどその歯の寿命は短くなる可能性が高くなりますが、むし歯ができてしまった場合は、しっかり歯を削ってむし歯を完全に除去しなければむし歯の進行は止められません.

 むし歯はむし歯菌が酸を出して、歯を溶かしていく病気です.
 エナメル質を溶かしてゾウゲ質に侵入したむし歯は一気に広がり、凍みたり痛みを感じたりするようになります.
 細菌が侵入して溶けて軟らかくなった歯質を“軟化ゾウゲ質”といいます.

 むし歯治療の基本は細菌に汚染されたこの軟化ゾウゲ質を除去することにあります.感染した部分を完全にとりきらなければ、いくら詰めたりかぶせたりしても、奥の方で細菌が活躍してむし歯が進行してしてしまうからです.

 このむし歯の進行を止めるにはむし歯部分を徹底的に除去することが必要です.
 特にゾウゲ質に侵入した細菌(軟化ゾウゲ質)はすべて取り除く必要があります.少しでもとり残しがあるとそこからまたむし歯が再発してしまうので、しっかりと削除しなければなりません.

削らないと軟化象牙質を取り切れない

 軟化ゾウゲ質は手用の器具や切削器具を使いますが、エナメル質が軟化ゾウゲ質除去の邪魔になることがあります.
 このときはエナメル質を削り取って切削器具が軟化ゾウゲ質に到達するようにする必要があります.
 エナメル質を大事にして、軟化ゾウゲ質をとり残してしまっては、むし歯の治療は失敗に終わります.

 エナメル質を除去すると、驚くほど歯が無くなってしまったと情けない思いをすることもありますが、むし歯を治療するためには想像以上に歯が削られてしまうものなのだと考えておいた方がよいでしょう.

 それはむし歯という病気を治すためなのでしかたがないことなのです.

むし歯は削らなくては治らない

 白い歯をいれるために健康な歯質を過剰に削るのとは根本的に違う話なので、ここのところは間違えないでほしいと思います.

 『むし歯の治療=軟化ゾウゲ質の除去=感染部を完全に取り除く』というのは、歯科治療の根本的な考え方で、これは現在でもまったく変わっていません.

 軟化ゾウゲ質を取るためだからと分かっていても、むし歯の歯をガリガリ削られるのを好む人はいません、

 しかし、痛みや腫れなどの症状を”治す”治療のフェーズにおいて切削は必要不可欠なのです.



ウェブサイトで宣伝される”削らない治療”

 ドックベストセメントや3mixやレーザーを使用してなるべく削らないということをうたい文句にしているホームページをたくさん見かけます.

 ドックベストセメントや3mixなどの薬剤を使用する治療法は、薬剤による感染の処理や手用器具によってタービンやエンジンなどの器械による切削量を少なくするというものです.

 これらの薬剤を使えば「歯を削りたくない」という希望がすべてかなえられるかといえばそうではありません.
 ある程度削る必要はありますし、中途半端な治療ではむし歯の再発や神経の壊死などを招いてしまう危険性もあります.

 ”削らない”で済めばそれに越したことはありませんが、むし歯はきちんと除去しなくてはいけないのにむし歯を取り残してしまっては治療になりません.

 むし歯治療の際に削る量は注意深くやれば、それほどはなはだしい量ではありませんし、麻酔が苦手な方や小さい子供の治療では手用の切削器具でそっと軟化ゾウゲ質を除去することも稀ではありません.
 良心的な歯科医は、むし歯治療の切削に関しては皆なるべく削らないように行っているものです.

 前述のように、削りすぎで問題になるのは、むし歯を除去する時の切削量ではなく、白い歯やブリッジなどの修復処置のときの切削量です.
 歯の健康のためにはこちらの削る量の方がよほど問題になります.

 審美補綴のセラミックなどの修復処置では歯の全周をかなり大幅に削除する必要がありますが、この切削量は歯科医院のホームページではあまり触れられていないので、注意が必要です.

 削らない治療を望むのであれば、ドックベストセメントや3mixよりも修復処置の切削量に注意を払うべきです.