=『環境部長の更迭を』と住民怒りの声=


1カ月間 ないがしろにされた住民の生命
栗東町の産業廃棄物処理場問題
県 『飲んではいけない水』と陳謝

県がRDから採水した浸透水は黄色く濁っていた

 http://www.bcap.co.jp/s-hochi/n010621.html#1


 
(全 県)
 栗東町小野の産廃処理業者RDエンジニアリングの処分場の地下水から国の基準を上回るダイオキシンが検出された問題で、県廃棄物対策課の上田一好主席参事は「県調査委員会が言葉足らずの『総じて問題がなかった』としたため、

住民から飲んでも良いと受け取られ、誤解を招いてしまった。飲み水としては絶対に飲んではいけない」と住民に陳謝した。県調査委員会の『総じて問題がない』という結論によて、

県と町は一カ月にわたって「飲み水に不適当である」という事実を広報しなかった。

住民の生命をないがしろにした前代未聞の不祥事に対し、県や町はなんら責任をとらず、地元住民は国松善次知事や地元選出県議らにも不快感を強めている。そこで地元住民のさまざまな声を集めてみた。

     
 
【石川政実】
 同町小野の里内雅次さんは「県は、町に聞いたら処分場周辺では井戸水を飲んでいないというので、きっちりと井戸水の調べもせず広報もしなかったと弁明しているが、住民が処分場周辺の井戸水を飲んでいたら、県はどうするのか。

それほどわれわれ栗東町民の命は軽いのか。地元選出県会議員が『いつまで原因究明、原因究明と言うとる。早く県に従うべきだ』と言ってるようだが、住民の味方でない議員なら落選運動を始めるまでだ。

『総じて問題がない』のでなく『総じて問題がある』ことを県担当者が認めた以上、国松知事は住民を一カ月もほっておいた不祥事に対し、県調査委員の解任、あるいは琵琶湖環境部部長の更迭など、なんらかの責任をとるべきだ」とし、地元選出議員の落選運動を本格化させる構えだ。
 

 伊勢落の立岡重良さんは「県が十五日に地下水から国の基準を上回るダイオキシンが検出された地点をわざわざ再調査するのは、たいした数値ではないということをなんとしても実証し、周辺住民で組織する合同対策委員会運動の高まりに水を差そうとする県の魂胆がミエミエだ。

本当に住民の安全を考えるなら、もっと別の場所を早急に調査するのが筋だ。また県調査委員会の委員の一人に里内勝教育長がいるが『総じて問題がない』なら、里内教育長自らがRDの地下水を飲んでみろと言いたい。住民をバカにするにもほどがある」と不快感をあらわにした。

 
 蜂屋の中井栄津二さんは「十七日に立命館大のくさつキャンパスでのパネルディスカションに招かれた田中康夫・長野県知事が『私利私欲でなく、気概と理念を持ったリーダーが求められている』と話したのに感動した。これが本当の知事だ。国松知事に、田中知事のような気概が少しでもあるなら、なにがなんでも覆土で臭い物にふたをしようとする“ドス黒い巨悪勢力”があったとしても負けないで、毅(き)然と住
民の命を守るため徹底した原因究明に立ち上がるべきだ。RD問題に真剣に取り組めば、県内各地の処分場の汚染問題も発覚して何百億円という県費がかかるので、適当なところで幕引きしようとのお気持ちなら、これは県民をなおざりにする犯罪行為であり即刻、知事をお辞めになるべきだ。県財政うんぬんを言うなら何百億円もかかるびわこ空港や新幹線栗東新駅計画こそムダそのものであり、即刻中止すべきだ」と提案する。
 

 良心的な県警の一人は「RD問題は、県が水面下で最大会派の自民党幹部らと協議し、覆土で幕引きの了承をとりつけたと聞いている。もっとも哀れな住民が納得するように、県は一、二カ所程度、掘削調査して、お茶をにごす腹のようだ。住民への包囲網が強まる中、合同対策委員長の八木一男さんには、元県警の先輩として、県や一部議員の代弁者になりさがるのでなく、あくまで弱者(住民)の側に立って、地元で子々孫々まで『さすが県警OBや』と評価されるように、今後も粘り強く闘って欲しい」とエールを送った。
 

上砥山のAさんは「国松知事がどうしても業者よりの姿勢をとるなら、町民は次の知事選には川端達夫衆院議員擁立など、まったく違う選択肢も視野に入れざるを得ない」と知事不信を口にし、次のような知事への手紙を書くという。
 

『拝啓 国松知事殿、あなたは利益誘導型政治家や業者のために政治をやりますか。それとも名もなき住民のために政治をやりますか。次期知事選に向けて、いまはっきりとお答え下さい。あなたが生まれ育った栗東町民より 敬具』

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「きっちりと県民議論を」
?菜の花おばさん、RD問題で表明?
 

藤井絢子理事長
十一月に大津市で世界湖沼会議が開催されることもあり、環境問題に取り組んでいる県内のNPOらは活発な動きを見せている。しかしお膝元の栗東町の産廃処理場では高濃度の硫化水素が発生し住民の生命が脅かされているにも関わらず、NPOらはなんらコメントすらしない。

そんな中、NPOのオピニオンリーダーで、菜の花おばさんでも知られる環境生協の藤井絢子理事長がついに「RD問題について、きっちりし
た県民議論をすべきだ」と表明した。
 

----産業廃棄物問題をどうとらえていますか。

 産廃問題は私の生き方に関わってくるテーマです。環境問題に関わったのは水俣の公害問題でした。大学時代の昭和四十四(一九六九)年に読んだ石牟礼道子の水俣を描いた「苦海浄土」に衝撃を受け、すぐにチッソの株主になるんです。そして結婚後、連れ合いが四十六年に神奈川県からチッソのある守山市に転居します。ここで湖南生協をつくる運動に加わり、チッソの社員であり生協の理事長になる細谷卓爾さんとの出会いがありました。細谷さんから水俣の問題を聞き、琵琶湖を水俣の二の舞いにはすまいとの思いにかりたてられるわけです。そして五十二年の琵琶湖の赤潮を契機に、石けん運動に取り組んでいきます。

 五十八年にはアオコが発生したため、そこでもう一度、琵琶湖に向き合おうと六十年に湖南生協内に長期ビジョン委員会が設置され、琵琶湖の汚染原因を探るため、日常生活で流した水の行方を追いかける中、生活雑排水を垂れ流す単独浄化槽を目にし、がく然とするわけです。六十三年には三十四万人の署名を集め、稲葉稔知事に「単独浄化槽の禁止と合併浄化槽の促進」を提案します。そして県は平成八年に合併浄化槽の設置を義務づけた「みずすまし条例」を制定するわけです。環境生協設立(二年設立総会)のきっかけは、この合併浄化槽の学習会でした。

 水を追って水源を歩くと、森の多くの場所に廃棄物が放置されている光景が見られ、産廃問題の深刻さに気づかされもしました。シーア・コルボーンなどの共著「奪われし未来」という本が九年に日本で出版され、環境ホルモン(内分泌撹乱物質)が話題を呼びました。琵琶湖でも環境庁と県による観測が行われ、すべての地点で環境ホルモンが出ました。産廃の地下水浸透も環境ホルモンに大きな関わりがあります。

しかし環境ホルモンの問題は、目に見えないだけに、想像力を働かせて未来予測して、立ち向かって行かねばなりません。
 

RD問題は、第二の豊島(香川県)とも言われていますね。

 実は菜の花プロジェクトを豊島で展開するため、この二十二日に現地へ行くんですよ。五十万トンの産廃を豊島から隣の直島に移すだけで約三百億円がかかります。後始末には金がかかるけれども、RD問題もここでいいかげんな対応をすると、水俣などで経験したように、将来もっと大きな負担をすることになりかねません。

今回の県のRD処分場掘削調査結果報告書(概要)には「本調査は今後の対策に必要な基礎資料を得ることを目的とする」と明記されています。初めに覆土ありきでなく、今回の調査結果から県民議論が始まるのです。

 住民が求めているように原因究明のための新たな掘削をするとか、さまざまな選択肢が考えられます。RD問題は町だけの問題ではありません。町も県も、県民全体、琵琶湖・淀川水系の問題として議論する必要があります。

琵琶湖というかけがえのない湖を汚さずに次の世代に引き継いでいくことが、県の政(まつりごと)の最大のテーマのはずです。県の責任者は、三十年、五十年後に、いまの対応策で責任が持てるかを考えるべきです。本当に琵琶湖は大丈夫なのか、いまこそ県を挙げて産廃と環境ホルモンの問題に取り組むべき契機だと思います。        

【石川政実】