問題30 (食文化)の答え・・・b. ぎょうざのみが出る、が正解です。

この話は、中国の東北地方(遼寧省)のシェンアン市(しんよう、漢字が私のワープロソフトには登録されていません。日本軍占領時代までは奉天市と呼ばれていた、人口660万人の大都市です)にある遼寧中医学院基礎医学部の王先生を、一週間ほど、ただでさえ過密状態にあるわが家にお泊めしたときにお聞きした話です。中医学というのは、漢方薬などを利用した、中国の伝統的な医学のことです。

先生は日本のある医科大学にしばらく留学されていたのですが、日本のぎょうざ(以下では餃子とします)には物足りなさを、お感じになったそうです。日本の餃子についての先生の最大の不満は、餃子の皮でした。そこで先生は、日中交流の一環とお考えになったかどうかは分かりませんが、おいしい餃子の作り方をご伝授下さったというわけです。

先生によれば、パーティでは、参加者は協力して餃子を作って、できたらみんなで食べるというのが普通であるとのことです。皮を作るのは、力が要るため、主に男の仕事で、女性は具(あん)を作ったり、餃子をゆでる(または蒸す)のを担当するようです。

出来上がったら、みんなで食べるのですが、一人当たり30個くらいは食べられるようです。ラーメン屋で食べる餃子のことを考えると30個も食べるというのは、ちょっと想像できませんが、これが意外にも楽に食べられるのです。わが家では、その後友人を招待して、というか、動員して何度か餃子パーティーを開きました。その時に、初めは食べられそうもないと言われた方でも、ほとんどの場合、男性なら30個くらいは楽に食べられるようです。子供の場合にはもっと食べることが多いようです。そのため、例えば7人でパーティを開く場合には、200個以上の餃子を作ることになります。

この餃子は、本格的な中華料理店に行って水餃子を注文したら出されるものに近いのですが、次のような特徴があります。

1.焼き餃子ではなく水餃子である・・・・・・わが家の餃子パーティの参加者の中に、どうしても日本風の焼き餃子が食べたいという人が一人だけいましたので、一度だけ焼いてみましたが、皮がやや厚めで水餃子向けとなっているため、あまりおいしくはなかったようです。

2.「あん」にニンニクは入れない・・・・・・王先生によれば、ニンニクは好みに応じて醤油とまぜて、これに餃子をひたすだけだそうです。

3.「あん」には白菜、挽肉、ニラ、しょうがしか入れない・・・・・・「あん」にはほとんど味がついていないため、たくさん食べてもあきが来ないようです。

世界大百科事典(平凡社)によれば、餃子は中国東北地方が発祥の地だそうですが、満州族が清朝を樹立して以来、華北地方を中心に普及したそうです。最近では、広東など南方にも広がりつつあるそうです。日本で食べられるようになったのは、第2次世界大戦後で、中国大陸からの引揚者によって全国に広がったそうです。

ひたすら餃子だけを食べるのでは物足りないか

ひたすら餃子だけを食べるのは、日本人からみると、何か物足りない感じがすると思いますが、簡単な材料を使っているにもかかわらず、栄養があって、おいしく、安上がりである上、大勢で作るのは楽しいものです。

大体、日本人ほど金に糸目を付けずに世界中からうまいものをかき集めている人種はいないのではないでしょうか。例えば、『地球環境報告 I I 』(石 弘之著、岩波新書)によれば、日本人は年間1人平均3キロものエビを消費していますが、2位の米国の1.2キロ、欧州の1キロを大きく引き離しています。また、日本は世界のエビ輸入総量の4分の1以上を独占しているそうです(同書152ページ)。

エビは非常にぜいたくな食材で、エビ養殖で与える餌の総量は収穫したエビの体重の3倍にもなる上、エビは体重の17%しか可食部がないそうです(同書156ページ)。

世界のエビ生産の4割が養殖によっており、養殖による生産は過去10年間で4倍以上になったそうです。このエビの養殖が深刻な環境問題を引き起こしていると同書は指摘しています。エビの養殖はマングローブの林を伐採して作られた養殖池で行われているそうです。生産量の急増に伴って、この20年間で東南アジアの海岸のマングローブ林が激減したそうです。

養殖エビの生産量が世界最大のタイの場合には、かつてのマングローブ林全体の87%が失われ、生産量が第2位で、世界最大のマングローブ林保有国のインドネシアでもこれまでに45%が消失したそうです。以下消失率は、インドで85%、フィリピンで80%、バングラデシュで73%となっています。

マングローブ林の激減によって、地元の人々は、生活資源としての木材が不足するようになり、生態系が破壊され、漁民はマングローブに生息する魚が獲れなくなり、マングローブ林の沿岸保護機能が消失して、海岸の浸食が進行するという深刻な事態になっているようです(同書154ページ)。

同書のあとがきに、著者の石氏は、明治末年生まれの今はなき母上が、「こんなに毎日がお正月みたいにぜいたくでいいのかね」とよく語っていたのを思い出すと述べていますが、途上国の人々への影響に無頓着なままで、飽食生活を続けていれば、いつかはしっぺ返しを食らうのではないでしょうか(99年2月4日)。

餃子パーティを自分でも開いてみたいという方に・・・・・・餃子の作り方を知りたいというご要望が何人かの方から寄せられましたので、最近気付いたことに「王徳山先生直伝のぎょうざの作り方」という文を載せました(2003年3月16日)。

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