問題 9(政治)の答え・・・c.3%が正解です。1982年当時の建設大臣が正しいものであると認めた、2枚の「談合表」に載っている工事費総額8,000億円についてだけでも、田中角栄氏は240億円もの資金を手に入れたことになります。この談合表は、たまたま表面化した、氷山の一角とみられますから、実際に田中角栄氏が受け取った金額はこれをはるかに上回り、ロッキード事件で受託収賄罪に問われた5億円の授受などは、ほとんど誤差の範囲内ということになります。

魚住 昭著「特捜検察」(岩波新書)193ページ以下によれば、田中角栄氏は首相に就任した直後の1972年7月に、建設省と水資源開発公団が将来全国に建設する予定の48件のダム工事の発注先を各ゼネコンに割り振っていたとみられます。当時衆院建設委員長だった天野光晴氏がこのような決定と各工事の事業費を載せたこの「談合表」を当時見せられたと言っているそうです。天野氏は、「あの談合表は角さん(田中角栄氏のこと)が全部決めたんだよ。業者の話を聞いてな。みんな公平にやらせるためだ。ダムの談合はそれ以来営々とつづいている。角さんは偉い人だったよ」と最近発言しているそうです。

この談合表については、1982年10月に公明党の矢野書記長が衆院予算委員会で取り上げ、建設省の責任を追及しました。その結果、建設相の始関伊平氏は、かつての中央談合組織「合理化委員会」がこの談合表の作製に関与した点までは認めました。ただ、著者によれば、田中角栄氏の名前は伏せられたそうです。矢野書記長が入手した談合表には、ヤミ献金額とみられる政界絡みの金の額のメモが詳細に記入されていたそうですが、この金額はあまりに重大な影響を及ぼす恐れがあるため、国会質問の際にはこの書き込みを消したものを提出したと書記長は認めているようです。

「特捜検察」の著者の魚住氏が取材したゼネコン役員によれば、当時ダムと道路、鉄道の工事は請け負い額の3%の金を(田中角栄氏に)渡すことになっていたそうです。

このような集金システムはまだ続いているようです。というのは、その後現在までの自民党の主流は当時田中派に所属していた議員であったからです。田中角栄氏の手法を最も忠実に踏襲したと言われている、金丸信氏や、竹下登氏、梶山静六氏、現橋本竜太郎首相、小渕恵三氏だけでなく、野党でも新進党の小沢一郎氏、羽田孜太陽党首が当時は田中派に所属していました。

田中角栄氏のめちゃくちゃな金もうけにはあきれます。たとえば、柏崎原発が建設されることを知ると、建設予定地15万6,000万坪を、坪100円で買って、坪2,600円で売ったとか、埋め立てが予定されると知ると、その海面を買い占めたり、これまでの堤防より川寄りに新たに堤防が建設されることを職権であらかじめ知って、新しい堤防によって守られることになる河川敷の部分を買い占めた信濃川河川敷事件など、金もうけのためには手段を選ばないという感じです。

このような田中金脈を鋭く追及して、首相辞任にまで追い込んだのが、立花隆氏が1974年に文芸春秋に発表した、「田中角栄研究」でした。ロッキード事件で東京地検特捜部に配属となり、5億円収賄の立証に努め、現在は弁護士をされている堀田力氏(ベストセラー「おごるな上司」の著者)は、「田中角栄研究全記録」(講談社文庫、「田中角栄研究」にその後発表された論文を加えて文庫本にまとめたもの)について、「20年以上前に起こった政治現象を対象とするものではあるが、まことに残念ながら、その基本的な分析のすべてはいまの政治にもあてはまる」と言っています(「立花隆のすべて」文芸春秋社、135ページ)
〔97年12月28日〕。

(2010年7月18日追記:この問題を作ってから11年以上経った2009年3月に起こった、民主党の小沢一郎氏の公設第1秘書の逮捕から、上記のような集金システムはまだ続いているらしいことが分かりました。詳しくは、「最近気付いたこと」の「小沢一郎氏の秘書の逮捕・・・30年以上前のダーティな政治手法がそのままの形で存続していることを示す事件」をご参照ください。

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