- FSTAGE :General :『かべすの幕間2』 474/474 PXF00472 手塚 優 R/T.P.T.『渦巻』(ベニサン・ピット) ( 3) 96/01/21 01:12 457へのコメント 1/20(土)19:00〜の回を見ました。ノエル・カワードは『陽気な幽霊』と『私生活』 しか知りません。どちらもコメディです。そんな彼がこんな作品も書いてたとは、 ちょっと驚き。解説によると、1923年25才の時の作品で、自らが演出もした舞台が 「大戦後の社会に幻滅していた若者たちに歓迎され、老人たちには非難を浴びた」 そうです。どうも自分にはよくわからない所の多い舞台でした。 話の中心は、桃井かおりと山本耕史の親子関係なんですが、まず桃井さんの母親役が 嫌な役です。彼女にとって息子なんかは邪魔者で、いない方がよかったと心の底では 思ってるようにしか僕には見えませんでした。そもそも最初に息子の帰ってくる日を 覚えてなかった事からして、そんな感じです。自分のことしか見えてないとことか、 表面的に『月光のつゝしみ』のお姉さんを連想させるようなとこもありますが、中身 は全く正反対に思えました。そんな母親の上っ面だけの愛情に対する、息子ニッキの 非難には、母親に対してだけでなく、虚栄な上流階級社会に対する非難が含まれて いるようで、この社会への怒りみたいなものも、自分が鈍感なだけかもしれませんが、 ちょっと共感しにくかった。なんとなく、昔、『ライ麦畑でつかまえて』を読んだ時 に主人公に全然共感できなかった時のことを思い出しました。なんでこんなに怒って るんだろうって感じです。腐敗した世の中に怒りをぶつけつつも、しかし純粋なもの を求めずにはいられないようなとこが、少し似てる気がしたのかもしれません。で、 その連想でニッキにも妹かなんかがいれば、少しは彼を「励ましてくれる」存在に なったんじゃないか、なんてこと思いました。 宮本亜門のストレート・プレイの演出には、どうも観客が安易に感情移入して カタルシスを得るのを拒否してるとこがあるような気がします。去年のパルコ劇場の 『椿姫』でも、舞台袖で椅子に座って眺めている第三者がいましたが、今回の客席の 中に舞台がある空間で、今度は自分がその舞台上の第三者になった感じがしました。 美術◎ルーシー・ホール 照明◎笠原俊幸 音響◎金子彰宏 この回には『エンジェルス…』出演の方々がいらっしゃってたようです。 東京公演はあと21日のみ。この後、1/27〜2/4 新神戸オリエンタル劇場にて公演あり。 ---------------------------------------------------------------------- - FSTAGE :ストレートプレイ :『かべすの幕間』 004/004 PXF00472 手塚 優 R/T.P.T.Vol.13『エレクトラ』(東京) ( 4) 96/04/01 01:32 東京・ベニサンピット公演の 3/14 初日Rを、前会議室『かべすの幕間2』の#502 に TAKUさんが書かれてます。初日の座席1番て、なんかすごいですね。(^^) 東京公演は4/29まで。全席指定¥7000。その後、5/4〜8 近鉄アート館公演あり。 問合・03-3634-1351 T.P.T. 3/30(土) 7:00〜8:50 休無 座席29番で観ました。ほぼ満員ですが、まだ補助席はなし。 作◎ソポクレス 英訳◎E.F.ウォトリング 訳◎小田島雄志 演出◎デヴィッド・ルヴォー 通訳◎児玉寿愛 演出助手◎中島晴美 美術◎ヴィッキー・モーティマー 照明◎沢田祐二 衣装◎黒須はな子 音響◎高橋巌 自分はギリシア悲劇は『オイディプス王』と『メディア』くらいしか観た事ないの ですが、コロスの扱い方が、舞台によって異なるのが、面白いなって思ってました。 今回、その役を担うミュケナイの女たちを演ずるのが台詞のない二人、植野葉子さん と松本紀保さん、そして彼女たちを代表して、エレクトラ(佐藤オリエ)が母(加藤治子) への復讐心を語り掛ける江波杏子さんです。まず彼女らの衣装と装いについ目がいき ます。胸元のはだけた黒の上着をおそらく素肌の上に直に羽織った衣装。長い髪に 青白い化粧と青黒い口紅の色。非常に冷たい印象です。まるで死人のよう。植野さんと 松本さんには全く台詞がないのですが、ほとんどつねに舞台上にいて、自分の父親を 殺した母親への憎しみを語るエレクトラへ強い共感の視線を送り続けています。その エレクトラもやはり黒の上着で、少し薄めだけど同じ青黒い口紅をしています。もう すでに、死人の世界へ一歩足を踏み入れているような唇の色です。髪もかなりのび 始めてます。それに対して、より現実的に生きている妹(倉本章子)や、もっとも 生命力を感じさせる母親は、人間らしい赤い唇です。この母親の生への執着こそが、 自分の娘をいけにえとした夫への殺意を生んだようです。でも、なぜか自分には このいけにえとして殺されたエレクトラの姉イピゲネイアが、死人のようなミュケナイ の女たちにも乗り移っているんじゃないかって思ったりしました。それでは、自分の仇 を討ってくれた母親よりも、自分を殺した父親への愛情を感じているエレクトラに 共感する点が矛盾するかもしれませんが、男性にも、女性を助け保護する存在であると 同時に、支配し犠牲にする権力が共存してるのに対応してると思えばいいのかな。 エレクトラの保護者としての父親への思慕を象徴するものとして、彼女の着ている 黒の上着があります。彼女はそれを父親と思い、それを掛けた椅子を抱きしめます。 その黒い上着をミュケナイの女たちは、自分の裸の上に直に纏っている。とても 性的なものをイメージさせる衣装だったと思います。 なんだか、中途半端なRになってしまいましたが、台詞よりも、ついつい植野さんや 松本さんの胸元に視線がいってしまってたもんで(^^;)、ご容赦ください。ギリシア 悲劇をもう少し読んでみようかなと思いました。 今年のベニサンでのルヴォー作品はこれだけの予定で、あとは、セゾン劇場での 松本幸四郎との『マクベス』9/6〜10/6です。T.P.T.は、ベニサンでは、7月に、 今回の演出助手をつとめてる劇工房ライミングの女優・中島晴美さんの演出で、 ニキータ・ミハルコフの映画『機会じかけのピアノのための未完成戯曲』を 基にした『ピアノ』という作品を上演する予定。 033/033 PXF00472 手塚 優 RE^2:R/TPT「エレクトラ」(大阪) ( 4) 96/05/13 23:55 029へのコメント みやび猫さん、ごろうやっこさん、こんにちは。色んな感想が読めて僕も面白いです。 植野さんの洟ですけど、僕が観てた時もそうでした。それから去年の春のT.P.T.公演 『チェンジリング』の時もやはり、ハンカチ出してました。もしかして植野さんて、 花粉症? なんて思ったりして。(^^;) ちなみに、T.P.T.の次回公演『ピアノ』 (6/27〜7/28,ベニサン)には佐藤オリエや堤真一が出るみたいだけど、植野さんは、 流山児★事務所の『ダフネの嵐』(6/26〜30 本多、7/3 名古屋、7/9〜10 多摩、 7/5〜7 伊丹)に出るんですね。"唄入りB級日活アクション活劇"だそうですごく不安。 だけど、こわいもの見たさもあります。(^^;) エレクトラの妹の、倉本さん演ずるクリュソテミスが「日和見主義」という見方は、 他にもどこかで読んだ気がします。そう言われても仕方ないのかもしれません。でも、 自己保身のためだけにそうしてるのではないと思いたいところです。この姉と妹は 「『ハムレット』のモノローグをダイアローグにしたかのような趣」 という評(「初日通信」)が、ありますし、とすれば、この二人の葛藤も世界観の違い なのかも知れません。 ラストの天井からの赤い血や途中でこぼされる赤ワインは、「流血」の歴史とともに 「血の継承」を思わせて、僕は2月のルパージュの『ポリグラフ』で人形を並べた テーブルクロスの上に赤ワインをこぼして血の河をつくる場面を思い出しました。 そういえば、『ポリグラフ』にも『ハムレット』の劇中劇があったな。 あと、自分のRで書き忘れてたのですが、僕はお守役の稲垣昭三がよかったと 思いました。彼がオレステスが死んだという偽りの報告の場面では、嘘だとわかって いるのに、台詞聞いているだけで、なんかすごい臨場感がありました。ちなみに、 僕が初めて見たギリシア悲劇は2年前に観たひょうご舞台芸術の『オイディプス王』 で、そこでも彼は羊飼い役を好演してました。この芝居は、主役が夏八木勲で、 イオカステが今回のコロスの江波杏子さんでした。 ---------------------------------------------------------------------- - FSTAGE :ストレートプレイ :『かべすの幕間』 082/084 PXF00472 手塚 優 R/T.P.T.ワークショップ1日見学会(102L) ( 4) 96/06/25 00:49 080へのコメント ある日突然 さん、はじめまして。ワークショップ初日感想ありがとうございました。 そうそう、最初はドキドキしますよね。僕も一昨年の見学会に初めて参加した時、 そうでした。それに、あちこちに、舞台で観た事あるような方がいるから、目を きょろきょろさせてしまいます。(^^) 昔の見学会Rを読んで下さったようで、うれしいです。アーカイブを今、調べたら、 一昨年のRは仮営業の新フォーラム・アーカイブLIB 1(or 2) #235ストレートプレイ の会議室 (16-c) にあるようですね。 読んで頂けたのはこれかな。あと、昨年『かべすの幕間2』#248 に書いた感想が まだ未整理のフォーラム・アーカイブの方にあります。 LIB 10 #494 新ストレートプレイの会議室(2c)です で、僕も今年も見学会、二日目の23日(日)に行きましたので、また書かせて頂きます。 ある日突然さんの初日のRがあるおかげで、書きやすいです。ただ、ちょっと風邪 ひいて体調悪くて、昨年や一昨年ほど集中しては聞けなかったのが残念。でも、 思いつくまま少し書きます。 今年のワークショップは東京で1クラスだけみたいなんで、ちょっと人数が多目だった かもしれません。この日の途中にテキスト(『マクベス』)の訂正紙のコピーが配られ てましたが、70部というのが耳に入りました。それで、これはただのミーハーだし、 よく確認したわけでもないのに、こういうとこで名前上げてよいのかどうか、 わかりませんけど、ロマンチカの原サチコさん(?)や、そとばこまちのみやなおこさん、 ちょマチでも以前少し話題になった元上海舞踏公司の田鍋謙一郎さん(??)、それから、 これは特に自信ないけど長野里美さん(???)らしき人もいました。(?は自信の度合^^;) それから、自分は後ろの出入口のそばで見学してたので、人の出入りが気になって、 後から『マクベス』の訳者の松岡和子さんがいらしたり、途中少しだけ、外から、 堤真一さんが覗いてたりしたのに気付きました。あと、ペンキだらけの作業衣着た 外人のあまり背の高くない女性の方が後ろで通訳の人と少しの間見学に来てましたが、 きっと彼女が今度の『ピアノ』の美術のエス・デヴリンさんじゃないかな。すっごく 若い方です。会場のベニサンの第一スタジオに来る途中、ちょうど劇場の方では、 『ピアノ』の舞台を組んでる真っ最中でした。 今年は、通訳は垣ヶ原美枝さんではありません。今回の方を僕は知りませんが、 もしかすると、去年の『三人姉妹』から通訳を担当されてる児玉寿愛さんて方かも しれない。どうもはっきりしないことばかり書いててすいません。(^^;) 今日もぐるぐる歩くエクササイズから。今回は歩きながら、前の人の腰に手を当て、 少し前に押し出してあげる。押されて"エネルギー"を与えられた人は、少し早足に なって、またその前の人にエネルギーを与え、自分は普通の速さに戻る。みたいなの から始まりました。つぎに二人ペアになって、一人が歩いてるところへ、もう一人が、 肩などに手をかけて、ちょっと回転させて歩く方向を変えてやる、やられた方は相手 に向けられるままにその方向に歩く。というのを交代でやりました。ペアによっては、 なんかぐるぐる回転しながら歩いてる、酔っぱらいみたいなのもいました。(^^;) 次は、自分の身体感覚を鋭くするエクササイズ。まず、自分の片腕を後ろに放り投げる ように回して、途中で止める。そして、そのままの体勢で、放り投げた腕の指先から だんだんと、手、手首、腕に向かって自分の神経感覚に注意を向けていく。これは、 たぶん、振り回して指先の方に行った血がだんだんと降りて来る感覚じゃないかと 思います。そしてまたペアになって、今度は一人は目をつぶって立ち、自分の身体の 状態に神経を集中する。それをもう一人が、ゆっくりと、相手の手を持ち上げたり、 膝を曲げてやったり、首をねじったりして、体勢を変えていってやる。あの駅頭で、 よくある、ピエロがお客さんに自分の身体をいじらせて、針金細工の人形のように 自由に形を操作させてやるパフォーマンスといっしょですね。ただし、ゆっくりと、 動かされてる相手が自分の身体の状態を確認できるようにやってくださいとの指示が ありました。これは結構、時間とってやりました。今回のエクササイズの目的は、 自分の身体感覚を磨いて、決して首から上だけの演技にならないこと、それから、 最初の歩くのも同じですが、他人から受けるなんらかの力やエネルギーによって、 自分が変わっていくことを認識する事でした。この、常に動いていく、流れている、 みたいな認識が、この後の『マクベス』の台本読みに基づくシーンスタディでも、 強調されていたような気がします。 で、『マクベス』。シーンは手許の新潮文庫だとp.30にあたる第一幕第7場。 思い悩んで、ちょっと弱気になるマクベスを夫人がけしかけて決心させる場面です。 たぶん二日目もマクベス夫人役は初日と同じ人でした。それで今日はマクベス夫人に 重点を置いて、演技を行ってました。ルヴォーさんが途中、解説をはさみながら、 何度も演技者の方に同じ場面のやりとりを繰り返させるのを観てると、マクベス夫人 の役が、どんどんどんどんふくらんで、魅力的に見えてくるのがほんとすごいです。 彼女は、マクベスにとって自分がいかに性的魅力があるかを十分にわきまえてて、 彼に対しどう振舞えば、彼を思い通りの方向に動かせるか、完全に知り尽くしてます。 ルヴォーさん曰「こういう女性とは、ベッドは共にしたくない。」そうです。(^^;) ルヴォーさんの話で、いくつか印象的だったのは、一つは言葉の流れの中に、同時に 意識の流れもあるという話。特にシェークスピアの時代は、台詞の言葉が即イメージ につながるくらいだっただろうし、台詞に感情の流れや変化も全て含まれている。 たとえば独白にしろ、会話にしろ、喋る側も、そして勿論それを聞く側も、 自分の心の内を言葉にしながら、あるいは相手の言葉を受け取りながら、その言葉 よって、意識は流れ変化していく。現代からすれば、シェークスピアの台詞は長い から、ある程度、その流れの行き着く先を意識しながら喋る必要もあるかも知れない。 しかし、彼らは"詩的"に歌っているわけではなく、あくまで現実性がある。 たとえば、ロミオとジュリエットでも、ロミオの台詞(ジュリェットだったかな?)は 終始現実的である。 (ちなみに、今更言うまでもないですが、ここに書いてることは全部僕の主観的理解 が入ってますので、その点、くれぐれも誤解なきようお願いします。) あと、相手に台詞を言う時に、たとえ相手を説得しようする台詞だからといって、 台詞を怒鳴りながら、相手の方へ迫っていく、そういう演技は我々はもう止めにした。 そうではなく、言葉で相手に意思を伝え、その言葉によって意識が動かされていく。 その意識の流れを伝えていく演技を目指すんだという話でした。 でも、このように言葉を大切にしつつも、しかしそれは、エクササイズでやった ように、言葉だけでなく身体感覚についても同じことのように考えているらしい とこが、今回自分にはすごく印象的でした。 二日目も15分くらい延びたのかな。でも、ルヴォーさんの話はほんと興味深いです。 P.S. T.P.T.のルヴォーが演出したオペラ『サロメ』を観に行くツアーに参加して、 その舞台のRをFMUSICAL MES(10)『オペラ&コンサート5』#208に書きました。 拙文でやはり長いですが、興味ある方には、読んで頂けるとうれしいです。 087/087 PXF00472 手塚 優 RE^2:R/T.P.T.ワークショップ1日見学会 ( 4) 96/06/27 23:20 086へのコメント しおり さん、はじめまして。WSのとても興味深い感想ありがとうございます。 今回、ある日突然さんや、しおりさんの感想を読ませて頂いて、やっぱりルヴォー さんてすごいんだなと改めて感じました。 ワークショップの案内に、「探求する精神を基に、参加者全員が一緒に実験するため」 とありますが、だからこそ、ただ見学してるだけの者にも、あれだけのスリリングな 体験が得られるんでしょう。たしかに「そこにいる人たちが感情を共有するってこと」 だし、「見る側も参加してる」ってことですね。(^^) 「感情のレッスン」ってのも、芝居というのはどれも、多かれ少なかれ、そういうもの のような気も自分はしますが、役者や観客に、自分にもそういう感情の引出しがあるん だってことに気付かせてくれる、演出家としてのルヴォーさんの眼は非常に鋭いです。 ちなみに「ソワレ」7月号に『エレクトラ』に出演した加藤治子さんのインタヴュー 記事があって、その中で、共演した稲垣昭三の以下のような談話が紹介されてます。 「デヴィドの言うことは素晴らしい。でも、そういうことのできる役者は今、日本 ではひとりもいませんよ。前いましたけどね、死んじまいましたよ。」 これは芥川比呂志って人のことだそうです。 ---------------------------------------------------------------------- - FSTAGE :ストレートプレイ :『かべすの幕間』 142/142 PXF00472 手塚 優 R/T.P.T.Vol.14『ピアノ』(7/27夜) ( 4) 96/08/03 02:02 114へのコメント 他に#95からのコメントツリーがあります。T.P.T.としては去年の『三人姉妹』 に続くチェーホフの世界。ピーター・ブルックが「最高のチェーホフ」と言った らしい原作の映画『機会じかけのピアノのための未完成戯曲』も観たくなって、 ビデオレンタル屋さんを少し回ったんですが、見つからなくてちょっと残念。 ニキータ・ミハルコフ監督作品では『黒い瞳』は劇場で観たんですけど、あの頃は まだチェーホフなんてよく分からなかったから、あまりよく覚えてません。 『三人姉妹』で次女マーシャ演じた佐藤オリエと、T.P.T.以前に自分が唯一観ていた 『三人姉妹』の舞台である東京乾電池公演でやはりマーシャを演じていた吉添文子。 この二人がいっしょの舞台に立ってるのはなんだか不思議な気がしましたが、二人 ともなかなかよかったです。 エス(エスメラルダ)・デヴリンの装置はパンフの文章を読むとかなり日本的なものを 意識したものだったようですが、実際の舞台にはそれほど和風の印象はありません。 『ヘッダ・ガブラー』や『エリーダ』の時のように二方向の客席が向き合う舞台は トラヴァース舞台と呼ばれるらしい。自分には桟橋のようなイメージでした。 おとーたま(#114)は遅刻されたんですね。そうすると、冒頭で二階の吊り橋の上を 二人の使用人(大鷹明良と大川浩樹)がピアノを運ぶ場面を見逃されてるのかな。 この二人の関係は『二十日鼠と人間』のジョージとレニーに少し似てます。大鷹さん にお話をねだる大川さんのキャラクターには好感が持てたし、大鷹さんの「どこに 爆弾を仕掛ければよいか知っている」みたいな台詞がパンフにある演出家の中島晴美 さんやエスさん文章にある「爆弾」とつながってるんだと思います。 けど今回の舞台、残念ながら自分にとってはこの爆弾は不発でしたね。どこに仕掛け られてたのかよくわからなかった。中島さんが「"ピアノ"は何を語るのか?」って文章 書かれてますけど、僕はあのピアノが"機械じかけ"である点が気になりました。この 舞台で最も印象的な場面は、前半の最後、身分が低くて教養もないに決ってる使用人の 大川さんが、自分の運んだピアノの前に坐っていきなり美しいメロディを弾き始めた ことに、周囲が驚き、魔法にかけられたように息を飲む場面です。もちろん、これは "ふり"で、本当は機械じかけで自動演奏されてただけなのを、種明かしで知らされた 飲んだくれの医師(大森博)は、「ふん、そんなことだと思った」みたいに照れ隠しを 言います。ここで彼らの差別意識が露骨に現れますが、それと同時に、彼ら貴族がある 意味で生きるよすがとしてきた教養(音楽)のようなものが、彼らには道具にしか過ぎ なかった労働者(機械)にだって生み出せる時代になってることに気付かない皮肉が この場面に込められていたように思います。冒頭、大川さんの吹くハーモニカはその 伏線かと思いました。 ちょうど自分の観た日(7/27夜)は隅田川の花火大会のあった日。舞台で花火が観れる? とは思ってませんでした。(^^) ---------------------------------------------------------------------- - FSTAGE :ストレートプレイ :『かべすの幕間』 00252/00252 PXF00472 手塚 優 R/T.P.T.『マクベス』(銀座セゾン劇場) ( 4) 96/10/16 00:12 00246へのコメント 感想書くのが遅くなってしまった。でも、まだ新神戸オリエンタル劇場で上演中の はずですね。(10/23まで) 僕は、9/22と10/5夜の二回観ました。一回目は14列12番 で丁度全体が見渡すのによい真ん中の席。二回目は前から3列目の真ん中で役者さん の演技を観るには絶好の場所と、それぞれとてもよい席で観れてラッキーでした。 初回は東京に台風のやってきた日。舞台も嵐のようにどんどん進んでいってしまって、 ちょっと最初、頭で考えながら観ちゃってた自分はついてけなくなりそうでしたが、 後半は「彼と夫人との壮大なラヴストーリーのよう」っていう#197のある日突然さん のような印象を僕も感じました。オリエさんの台詞回しにはゾクゾクしました。あと ルヴォーさんには珍しく、マクベス夫人以外は男優がメインの芝居ということあって、 三人の魔女(田岡美也子・松浦佐知子・松本紀保)の美しさと彼女らの運命の踊りには、 魔女というより女神さまみたいだなーって思って、密かに彼女たちの登場を待ちわび たり、また天衣織女さんのマクダフ夫人へのあまりのむごい仕打ちに、いくらルヴォー さんでも、そこまでやらなくてもってちょっと憤ったりしながら観てました。(^^;) が、それはともかく、観ててマクベスと夫人の孤独に悲しくなる舞台ではありました。 二回目は、役者さんの顔と役の対応に注意して観ました。だって、特に男優さんとか、 誰が誰やら最初の時はよくわからなかったから。まず、ダンカン王の役の真名古さん、 彼は王が暗殺された夜の不吉な出来事を語る老人の役を兼ねてて、これは慧眼ですね。 って、他のマクベスはあまり知らないのですが(^^;)、老人は運命として死を受け入れ てるように思います。またバンクォーの息子で生きて逃げ延びるフリーアンスを女性 (滝沢涼子)が演じてるのも、まだ男性でも女性でもない、中性的な感じを表している のかもしれない。彼女は、王の息子マルコム(早坂直家)がかくまってもらってる イングランド王の下で学ぶ二人の修道士の一人でもあります。(もう一人は誰?) それから印象深かったのが、魔女の下でマクベスに運命を答えに現れる幻影のうち、 第一の幻影として大きなお腹を抱えたマクダフ夫人が幼い息子とともに登場し、 第二の幻影として、血まみれの赤子を抱いた女性(松田かおり)が現れた点でした。 やくざな暗殺者の一人をマクベスの側近であるシートン(大川浩樹)としている点も マクベスの暗黒面を表すのに効果的。こういう点にいちいち納得させられてしまう所 がルヴォーさんのすごいとこです。舞台の上にあって無駄なものは全くありません。 全てがルヴォーさんの手で、一つの方向を示すよう綿密に計算されてます。(たぶん^^;) #82のワークショップでマクベスをやられてたのは、今回メンティース役の森一さん だったようです。あと長野里美さんもワークショップにやっぱり参加してたらしい。 00254/00254 PXF00472 手塚 優 RE^2:R/T.P.T.『マクベス』(銀座セゾン劇 ( 4) 96/10/17 23:21 00253へのコメント MANAさん、お答えありがとうございます。なるほどドナルベインの尾崎君ですか。 さすが観てるとこ、違いますね〜。(^^) 彼を観るのは、僕はアートスフィアでの 『アナザーカントリー』初演以来でした。その時の印象はあまり残ってませんけど。 でも、そうすると、あの場面ではマクベスの権力の手から逃げ果せた者たちが集合 してたわけか!なるほど。上手奥の祭壇や、マルコムのゆったりとした僧衣のような 衣装、マクダフのあまりに純粋な忠誠心など、なにやら宗教的というか、求道的な 印象の場面ではありました。マクベスの闇に対する光でしょうか。 神戸の舞台は少し狭いそうで、あの下手半分の白く長い廊下と、上手半分の暗闇が 背景の舞台に分けられた空間とその使い分けが、なかなか見事な舞台なので、窮屈 なのはちょっと残念ですね。でも、その分、密度は濃くなってるかもしれない。 観る方でも、僕は少し後ろで全体の見える席と、前で役者を目の前に観れる席とで 印象かなり違ったんで、二回観れてよかったのですが、大きな舞台は難しいです。