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●「ウオーキング」 基礎編
97/04/02 東京朝刊 生活面 04段
自立の基本は歩きから 高齢者にウオーキングの勧め 大きな歩幅でつま先も高く  

 高齢者が炊事や掃除など身の回りのことをどれだけスムーズにこなせるかは、ふだん歩く時のスピードや息切れなどの歩行能力と関係が深いことが、最近の研究から明らかになってきた。専門家らは「しっかり歩けることが生活の基本」と、ウオーキングの習慣づけを勧めている。

 国立健康・栄養研究所(東京)の吉武裕さんらは昨年、六十―七十代の比較的元気な高齢者十人を対象に、日常生活上のさまざまな動作についてどの程度きつく感じるかを調べてみた(図)。

 目安にしたのは、一分間に体重一キロ当たり吸い込んだ酸素の量(酸素摂取量、単位ミリ・リットル)の平均値。炊事(六・五)、洗濯物干し(一〇・六)、掃除機(一一・二)、布団上げ(一三・七)、床のぞうきんがけ(一四・九)、階段昇降(一七・一)など。この値は人により、二―三倍の差があった。

 また、これらの日常動作はふだん歩く時と同じくらいのきつさだった。高齢者にとっては結構速い毎分八十メートルの速さで歩くと、酸素摂取量は一七・一。「それであまり息切れしなければ、身の回りのことはほぼ難なくこなせる体力」と吉武さん。

 一方、東京都老人総合研究所が一九九一年から翌年にかけて高齢者約千百人に「銀行預金の出し入れができるか」「若い人に自分から話しかけるか」など日常生活での自立度を聞いた。その結果、自立している人ほどふだん歩くスピードも速かった。

 ちなみにふだん歩く速さは平均で、男性は六十五歳で毎分約八十メートル、八十歳で同約六十メートル。女性はそれぞれ同約七十メートル、同五十メートルだった。

 高齢者の「生活体力」を独自の方法で調べている明治生命厚生事業団体力医学研究所(東京)所長の荒尾孝さんは「楽に起きて立ち上がれて、歩けることは自立して生活するための基本」と指摘。その衰えを出来るだけ防ぐため、まずはウオーキングを習慣づけるようにと助言する。

 同研究所は一昨年から六十歳以上の約百四十人の追跡調査を始めたが、散歩などの習慣のある人ほど加齢による「生活体力」の低下があまり見られないことが分かった。

 東京都老人総合研究所運動機能研究室長の長崎浩さんは「毎日三十分くらい意識的に大きな歩幅で、つま先を高く上げ、腕を元気よく振って歩くこと」とアドバイスする。それを続けることで、自然と筋力やバランス機能を保つことにつながる、という。

 もちろん無理は禁物。日本歩け歩け協会(東京)のウオーキング指導員の高部郁夫さんは「全身運動だけに高齢者は最初はマイペースで週一、二回から始め、距離も速さも控え目にして徐々に慣らしていってほしい」と話している。


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