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●「ウオーキング」 基礎編
96/07/22 大阪夕刊 社会面 04段
老いても運動が痴ほうを予防 発症率80%低く 九大グループが住民を追跡調査  

 年をとっても運動する人は、しない人に比べアルツハイマー型痴ほうを発症する危険性が八〇%も減ることが、九州大医学部第二内科の藤島正敏教授、清原裕講師らのグループが行った福岡県久山町住民の追跡調査で分かった。運動がアルツハイマー型痴ほうに予防的に働くことを確認した疫学データは初めてで、二十四日から大阪市で開かれる第五回アルツハイマー病及び関連疾患に関する国際会議で発表される。

 同グループは年齢、職業構成が日本の平均に近い久山町(約七千人)の住民検診を一九六一年から続けており、八五年に六十五歳以上を対象に痴ほうの検査を初めて実施。 この時、痴ほうが認められなかった八百二十六人(男性三百三十三人、女性四百九十三人)を九二年まで追跡調査。その結果、百三人が新たに痴ほうになった。内訳は脳血管性痴ほう五十人、アルツハイマー型痴ほう四十二人、その他十一人。

 脳血管性、アルツハイマー型の両タイプについて、追跡期間中に痴ほうを起こさなかった人と検診データや生活習慣を比べた。両タイプとも高齢になるほど発症率は高くなるが、ゲートボールやウオーキングなど軽い運動を毎日している人、外を歩き回るなど肉体をよく使う職業の人は、運動していない人や事務職の人と比べアルツハイマー型発症の危険率が〇・二倍、つまり八〇%も低かった。

 脳血管性は運動とは関連性はなく、関係が深かったのは血圧とアルコール。収縮期血圧が十ミリ上がると発症の危険率が一・六倍アップし、飲酒習慣がある人はない人に比べ二倍高かった。脳卒中の既往がなくても高血圧、飲酒習慣は脳血管性の危険因子だった。

 清原講師は「運動、特に足をよく動かすのは脳に刺激を与え、脳細胞を活性化させることが考えられる。少なくとも脳の血流量増加につながり、それがアルツハイマー型発症を防ぐ方向に働くのではないか」と話している。                                         イラスト・北角嘉彦


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