
経済・ビジネス
| ★★★★〜★は私の「満足度」です。 |
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| 経済・ビジネス 現在18冊 | |
| 書名 | 著作者 |
| パワープレイ | 内藤誼人 |
| パイロットが空から学んだ一番大切なこと | 坂井優基 |
| なぜビジネス書は間違うのか | フィル・ローゼンツワイグ |
| エコノミストは信用出来るか | 東谷暁 |
| 組織戦略の考え方 | 沼上幹 |
| 決断プロフェッショナル | 今村栄三郎 |
| 賢く使え、経済統計 | 藤和彦 |
| 現代のリスクと保険 | 山口光恒 |
| 現代日本経済政策論 | 植草一秀 |
| マッキンゼー式 世界最強の仕事術 | イーサン・M・ラジエル |
| 倒産寸前!そのとき社長はどうするか | 立川昭吾 |
| 失敗学のすすめ | 畑村洋太郎 |
| 上司が鬼にならねば部下は動かず | 染谷和己 |
| MBA ゲーム理論 | 鈴木一功 |
| 小倉昌男 経営学 | 小倉昌男 |
| 社員第一、顧客第二主義 | 伊集院憲弘 |
| 「一人勝ち」の経済学 | 大前研一 |
| 投資信託の見分け方 | 安達智彦 |
「パワープレイ」 内藤誼人・著 ソフトバンクパブリッシング ★★
ビジネスの現場において、相手に気付かれることなく自分に優位な状況を作り出すために役立つ、様々な仕草や姿勢、服装、話し方などを紹介する一冊。副題は「気付かれずに相手を操る悪魔の心理術」とあり、無意識のうちに相手に影響を及ぼすことを目標としている。米国ではこういうのを「パワープレイ」と呼ぶらしく、本書も米国で多く出版されている研究成果を参考に書かれている。
交渉の時は相手が自社を訪問する様に仕向ける(ホーム戦に持ち込む)事や、攻め落とす相手の秘書や知人をまず攻略する事、プレゼンでは相手を飽きさせないようにできるだけ短時間にし、これから何を話すかを初めに魅力的に予告しておく事など、各種ビジネス書でも紹介されているベーシックとも言える内容が多く紹介されている。目新しい内容としては、交渉相手が座る椅子の足を微妙に不安定にして集中力を削ぐ事や、交渉前に軽く駆け足で走って頭をクリアにする事などがあるが、実際の現場でそれらを実践するのは容易ではないだろう。半袖シャツだと権威を感じさせにくい、というのも分からなくもないが、添えられているイラスト(長袖と半袖のビジネスマンが並んでいる)の顔つきが、半袖の方は明らかに弱々しく、逆に信憑性を落としている様に思える。
そうは言っても、全体としては納得できる内容が多く、国内・海外を問わずビジネスマンが交渉する際に頭に入れておくと役立つ一冊である。新入社員に渡すと、書かれている通りにいきなり実践して「何だこいつは」と反感を抱かれる可能性が高いので、ある程度場数を踏んだビジネスマンが「ブラッシュアップ」として読むのが良いだろう。▲2009.5.7
「パイロットが空から学んだ一番大切なこと」 坂井優基・著 インデックス・コミュニケーションズ ★★★★
両翼のエンジンに鳥が突っ込み、操縦不能となった旅客機がニューヨークの川に不時着水するという事故が先日発生した。橋を避け、行き交う船を交わしながら無事着水した機長の技量は世界中の賞賛を浴びたが、インタビュー記事によると機長は事故後しばらくショック症状に襲われたという。多くの乗客・乗員、そして自らの生命を賭して挑んだ緊急動作は、機長にとって途方もないストレスだったのだろう。世に無数にある職業の中でも、瞬時の判断が数百人の命を直接左右してしまうという意味で、旅客機の機長が引き受ける責任は最大級に重い。
そんな過酷な責任を引き受ける機長は、安全なフライトを実現するだけでなく、スムーズで快適、そして定刻通りの飛行を乗客に提供し、また航空会社に対しては機材の故障を防ぎ、燃料の節約を図るという責務も同時に担っている。これら使命を果たすべく機長は、地上・機内で働く多くの従業員を指揮するマネージャとしての役割も果たしており、その管理スキルは、多くの乗客の命を預かる日々の緊張感の中で研ぎ澄まされていく。
本書は、実際に機長として従事した著者が、多くのフライトを通じて得た「プロフェッショナル・マネジャー」としての勘所を、実際の操縦中に発生したトラブルを例に数多く紹介している。「パイロットの世界では、反省はエンジンを止めてから、が鉄則です。一瞬でも過去のことに心を奪われると、これからのことに上手く対処できません」(120ページ)「2つ以上のおかしな兆候が何かの分野に見えた時は、あらゆる可能性を考えて、一つ一つ原因を確認してつぶしていきます」(113ページ)などという本質を衝いたアドバイスは、どんなビジネスにも十分に通用するだろう。
後半第7章は「フライト・シミュレーション」と題し、実際のフライトで起きうるトラブルをいくつか例示し、最適な解決策を読者に考えさせるクイズ形式の内容となっている。航空ファンは勿論、普段はただ飛行機に乗っているだけの人にも大いに楽しめる内容である。大変面白く読めた一冊であり、関連作も是非読んでみたい。▲2009.2.10
「なぜビジネス書は間違うのか」 フィル・ローゼンツワイグ著 日経BP社 ★★★★
ビジネス街にある比較的大きな本屋を訪れると、本当にたくさんのビジネス書が平積みにされ、それを多くのビジネスマンが買い求めている。学校の試験問題と違って「正解」の無いビジネスの世界に生きる人々にとって(私もその一人)、ビジネス書は仕事を進める上で一つの心の拠りどころとなっている。良いビジネス書は、ある時には自分が下そうとしている判断に自信を与えてくれ、またある時には、これまで自分が見えていなかった地平に光を差し込み、別のやり方を示唆してくれる。本屋のサラリーマンもそういう良書との出会いを求めて足を運んでいるのだろう。ところが、至極当然の事であるが、ビジネス書に書いてある通りに事を進めさえすれば仕事が上手く行く、という甘い話は有り得ない。もしそうであれば、ビジネス書の著者は本など書かずに自分で事業を興して成功を収める。だからこそ私たち読者は、ビジネス書で取り上げられる過去の成功事例を興味深く読み、その中から成功への客観的エッセンスを抽出しようと試みるのだが、果たしてその「成功事例」を分析する事が将来の成功に繋がるのだろうか。そういう疑問に答える本が出た。
本書の帯惹句は「大ヒットビジネス書の多くは『妄想』に支配されている」であり、これが著者の考え方の基底となっている。例えば、全社員の士気が非常に高く、離職する社員も殆どおらず、会社一丸となって顧客へのサービス向上に邁進している企業があって、その業績が高ければ、ビジネス書の格好の事例になるだろう。そういう企業風土が好業績をもたらした、これからの会社はそうあるべきだと。しかし、過去にビジネス書で事例として取り上げられたそういう企業を本書が追跡調査すると、そういう好ましい企業風土が好業績を生んだのではなく、逆に、そういう好業績だったから会社の雰囲気が良くなり、その様な企業風土が醸成されたというのだ。まさに「原因と結果の逆転」であるが、こういう例は数多く見られたとのこと。その他にも、成功例だけ集めて失敗例を無視したり、好業績を記録した要因を限定的に解釈したり(例:業界全体が成長する事もある)と、後付けの「妄想」には事欠かない。
そういう視点でビジネス書を読むと、疑問に感じる部分が結構見つかるものだが、せっかく生まれたその疑問をやり過ごさずに「それは『原因』なのか?『結果』なのか?」と自ら問い続ければ、その本をもっと深く理解し、エッセンスを得ることが出来るように思える。正直言って世のビジネス書は玉石混交だが、本書はそこから「玉」を見分ける良いきっかけになると思う。翻訳も自然で読みやすい。▲2009.1.2
「エコノミストは信用出来るか」 東谷暁・著 文春新書 ★★★
私たちは新聞や雑誌、テレビなどを通じて、エコノミストと呼ばれる人々の発言に毎日の様に接している。あまりにも多くのエコノミストがマスコミに登場し、様々な経済予想や分析を繰り広げるので、それら発言が本当に的を射ているのか、あるいは予想が当たっているのかを検証する事は、少なくとも一般市民には困難であった。政府や企業の施策や方針に対して批評を繰り広げ、その成果を厳しく論ずる割には、彼らエコノミスト自身は「成果」をあまり問われない。これは全くアンフェアだと以前から感じていたのだが、そのニーズに合致する本がこのたび上梓された。
バブル経済の開始から崩壊に至る過程での発言、90年代後半の「財政構造改革」対「財政発動による景気対策」論争における主張の一貫性、さらには2000年代冒頭の「ITバブル」騒動における先行き見通しなど、様々な状況における主要エコノミストの言動を徹底的にレビューし、その主張の一貫性と予想の正確さを詳らかにしている。
マスコミにおける露出度が高く、一般に有名なエコノミストであっても、その主張は単なる「現状追認」であったり、また何ら自己批判することなく主張を180度変えたりするなど「場当たり的」である様だ。エコノミストの発言が企業の投資行動に影響を与えたりする事を考えると、この様な行動はいかにも無責任であり「学者」には到底値しない。誰しも間違いは犯すのだから、それを認識したら少なくとも「間違い」を認めた上で新たな説を論じていかない事には、誰からも信用を得る事は出来ない。そんなことは一般社会では「常識」の部類に入る話だと思うのだが、経済学は『間違いを認めたら抹殺されてしまう』世界なのだろうか。
エコノミストの「格付」に取り組んだ面白い一冊。経済界では最近「格付会社の格付」なるものが出て来たと本書で紹介されているが、やはり、他人(企業・政府)の行動を批評するのであれば、その批評者も批評に晒されるべきだろう。銃で人を撃つ人間は、他人に銃で撃たれても文句は言えない。それくらいの切磋琢磨がエコノミストには必要だと思う。本書は、無責任なエコノミストに騙されないための良い第一歩となるだろう。▲2004.8.19/RT
「組織戦略の考え方」 沼上幹・著 筑摩新書 ★★★★
一般向けの新書にしてはかなり無味乾燥なタイトルである。「企業経営の健全性のために」という副題も与えられてはいるが、いずれにせよ一目見て「買ってみよう」という気にはならない。いわゆるキャッチーなタイトルではないのだ。にも関わらず私が本書を購入したのは、本屋で立ち読みしていて偶然に目に入った次の一文のせいである。「企業組織のような社会システムを運営する上で日常的に一番重要なのは自己実現欲求なのではなく、それよりも低位の承認・尊厳欲求である」
マズローの欲求階層説は有名であり、その最高層に鎮座する「自己実現欲求」を如何に満たすかという議論をいろんな本で目にする事ができる。もちろんその一つ下位の「承認・尊厳欲求」に関する論述も数多く流布しているが、その欲求を組織論に結びつけた本書の切り口が私には新鮮に映った。組織において「自己実現欲求」を満たそうとしている者に私はいまだかつて出会った事がなく、その代わり、私を含めた全員が「承認・尊厳欲求」に日々汲々としているからである。その限りにおいて本書の論考はかなり実態に即しており、誰しも自分が属する組織に容易に反映させる事が出来るであろう。
世間的に悪者になっている「官僚制」の会社組織における重要性や、組織内の「ボトルネック」を重点的に改善することの意義、更に「落としどころ」を探す事には長けるが「決断」を下せない組織の危険性など、大企業に身をおく人間のひとりとして共感できる論考が数多く展開されており、大変興味深く読んだ。幅広い内容を駆け足で取り扱っているのは新書の紙幅では致し方ないだろうが、もう少し深く掘り下げて欲しい部分も多々あるので、可能であれば、本書の内容をもっと深く展開させた「専門書」を世に出してもらいたいと思う。▲2003.8.18/RT
「決断プロフェッショナル」 今村栄三郎・著 光文社新書
★★
自分に与えられた権限の中で、これまでに蓄積した知識と経験、そして五感を駆使して自分なりの決断を行うことは、仕事の醍醐味といえる。誰しもが決断を下す立場に就ける訳ではないのだから、自分が決断を下すという事自体、喜ぶべきことなのかも知れない。
だが決断にはリスクが伴う。誤った決断を下した場合、責任も発生する。決断を下す立場に就かなければ、もっと気楽なサラリーマン生活が送れるのに、なんて弱気になったりもする。そんな「思い悩む」決断者(=管理者)向けに書かれたのが、この本である。
決断を行うにあたっての過程を「6つの決断プロセス」と「24のシンクポイント」に細分化し、どういうステップで、何を押さえて決断を行えばいいのかを解説している。まず「ゴール・目的」を戦略として設定したあと、具体的な戦術策定のために「状況把握」「原因究明」「選択決定」「将来分析」を行い、最後に「実施分析」により行動の具体化を図るという流れである。また後半では、実際のビジネスシーンや国際政治の場で行われた決断をいくつか例にとり、上記プロセスを実証している。
著者の主張自体は、ビジネスの場で生きている私にとって同意できる部分が多い。だが、如何せん本書は読みにくい。ビジネス書ならともかく、縦書きでページ数も少なく、一覧性にも乏しい新書で、24個もシンクポイントを設けてどうするつもりなのか。この手の本は、読み進めながらパラパラと前に戻る事が多いのだから、新書という形で出すには大いに無理がある。どうしても新書で出すのなら、いっそのこと「決断」のケーススタディーに特化した方がよかったのではないか。▲2002.6.1/RT
「税金の常識・非常識」 平野拓也・著 筑摩書房
★
欧米の消費税率が日本と比べて高い事は比較的知られている。ドイツ16%・フランス18%、そして北欧諸国では25%にも達している。これを根拠に、日本でも消費税率を引き上げようとする動きがあるが、筆者はこれに待ったをかける。これら諸外国では品目によって税率に大きな差があり、食料や日用品、医薬品や書籍などの税率はかなり低く抑えられており、毎日の食料から家の購入代金まで一律に課税する日本の方式と直接には比べられないというのだ。日本の税務当局は「欧米ではこんなに税率が高いのだから、日本でも引き上げるべき」とは国民に説明するが、こういう「都合の悪い話」は日本の役人からは決して出て来ない。
長年税関に勤務し、市民から徴税する立場にいた著者が、このような税金に関するちょっと意外な話を紹介する本。「財務省の説明にダマされないための一冊」とも言えよう。こういう話に疎い人にも分かりやすく書かれており、特に前半部分は面白く読めたが、後半になればなるほど荒削りな内容も目立った。特に、財政再建論に過度に依存し、少々感情的な記述さえ含む公共事業批判や、決して良い出来とは言えない「未来小説」で構成されたエピローグなどが、本全体のグレードをかなり引き下げているのは残念だ。▲2002.4.8/RT
「賢く使え、経済統計」 藤和彦・著 光文社新書
★★
不景気が続く昨今、経済統計の数値は世間の大きな関心事となっている。小数点以下レベルでの増減に一喜一憂する状態が続いているが、果たしてその元となる統計は信じるに足るものなのだろうか。盲点は無いか。経済産業省現役官僚である筆者が本書でその疑問に答える。
経済成長率や失業率など、国際的にも注目を集める統計数値がいくつかあるが、本書によるとそれら統計にも盲点があるようだ。経済成長率に関しては、速報値と確定値で算出方法に違いがあり、両者間の乖離が非常に大きい事や、そもそも速報・確定両値の発表が諸外国に比べて遅すぎる事が指摘されている。また失業率に関しても、求人誌など職安以外で求職・求人する人が失業者数に含まれていなかったり、職探しを諦めた失業者がカウントされていなかったりするため、実際よりも低い値が出ているだろうとの事。そのため、例えば景気が回復基調に乗り始めると、それまで求職を諦めていた人々が職安に「失業者」として登録して職探しを始めるため、却って失業率が高くなる可能性もあるのだ。
統計の盲点は他にもある。近年、労働市場では第三次産業従事者が増えており、その代わり製造業の雇用者数が減っているという。一見第三次産業が発展しているように見えるが、本書によると、実際には企業のアウトソース化により、製造業従業員が籍だけ人材派遣会社に移している場合も多いというのだ。つまり、実際にはずっと製造業に従事しているにもかかわらず、統計上の区分が製造業従事者から第三次産業従事者に移っただけである。そういう例は私の周りでも多く見かける。そういう盲点に気付かないと、製造業の実力を過小評価し、第三次産業を過大評価してしまうのだ。
各種統計が孕んでいるリスクと限界を分かりやすく解説している好著。統計数値が実態経済に影響を及ぼしているかもしれない(「統計不況」)という筆者の主張は、影響の程度はかなり限定的だとしても、有り得る話である。完璧な統計は有り得ないだろうから、統計を使う際にはその限界と誤差範囲を必ず知っておきたいものだ。
ところで本書、内容はよかったのだが、編集手法とグラフに関しては残念ながら出来が悪い。図表の配置が下手で、本文が不自然に分断され読みにくい部分が複数箇所あったり、あるグラフ(図表27)では、座標軸が異なるグラフを並べて、一方の増加率を他方と比べて高く見せようとしていた(作為的では無いかも知れないが、そう思われても仕方ない並べ方である)。統計に関する本なのだから、少なくともグラフの作成に関しては慎重を期して欲しかった。本書は内容的には3つ星のレベルだが、これら問題点のために残念ながら2つ星にさせて頂いた。▲2002.3.6/RT
「現代のリスクと保険」 山口光恒・著 岩波書店
★★★
「リスク」と聞いて何が頭に浮かぶだろうか。個人であれば病気や自動車事故、そして家屋の火災や地震災害が、そして会社であれば、貸し倒れ等の信用リスクの他に、株主代表訴訟や製造物責任が一般的に思い浮かぶだろう。これらリスクを回避する際、我々は一般に保険という手法を用いる。「大数の法則」に始まる複雑な保険数理を用いて設計された種々の保険商品により、我々は実損よりも少額の経済的負担でリスクをヘッジする事が出来るのだ。
まず、保険は決して万能ではないようだ。本書によると、保険商品を設計するのが困難なケースも依然として存在する。例えば「地震保険」。今日でさえ、損害額全てを補填してくれる地震保険は存在しないらしい。全額を負担する契約にすると、地震発生時に保険会社の負担力を超える保険金支払が発生してしまうからである。無論、政府も再保険を引き受ける等して支払額の引き上げをサポートしてはいるが、現状はまだ「全額」には程遠いようだ。その他にも、現在の保険ではカバーできないリスクや、損害額と比較したときにコスト(料率など)に問題を抱える保険がある。
しかし、リスクをヘッジする方法は、保険の購入によってリスクを保険会社に移転する(リスクの移転)だけではない。本書では「自家保険」や「キャプティブ」といった、リスクを自らで保有しつつ金銭的負担の軽減を図る手法も紹介されている。更に「保険デリバティブ」や「リスクの証券化」のように、損害発生時に金融市場から直接資金を調達する方法も開発されている。銀行・証券・保険の業界間の融合が進む中で、これら「複合商品」の果たす役割は更に大きくなり、カバーされるリスクも広がっていくものと期待したい。
「保険」というものの基本的な考え方を分かりやすく解説している。従来型の保険から、保険デリバティブ等の金融商品へ向かっていく話は特に勉強になった。著者の山口光恒氏は慶応大学経済学部教授で、東京海上の理事を兼任する、リスクマネージメントにおける権威の一人。私が学生時代に書いた論文でも、彼の著書を多く参考にさせてもらった。▲2002.2.13/RT
「現代日本経済政策論」 植草一秀・著 岩波書店
★★★
気鋭エコノミストである著者が、90年代以降の日本で実施された経済政策を振り返り、その問題点を指摘した上で、今後わが国に求められる政策を提示する一冊。
氏の分析によると、90年代からの経済政策は「景気対策のための財政支援発動」と「財政構造改革のための金融引締め」との間を振り子のように揺れ動いていたようだ。不景気になると景気回復が重視され、金利引き下げや真水の投入が実施されたりするが、一旦「景気回復」が確認されると、途端に「財政赤字」が問題となり、金利の引上げや赤字国債解消などといった緊縮財政が取られる。その「政策転換」のタイミングが早すぎるため、せっかく回復軌道に乗りつつあった景気が失速してしまうというのが、90年代以降の日本で繰り返し観察されてきた現象である。本書ではまず、そのような政策運営の軌跡を80ページ近くの紙幅を用いて分析する。
その上で、景気の自立的成長が見られる段階まで根気強く景気支援策を続行する方が、最終的には財政赤字解消にも寄与する事を指摘する。また、増税による赤字解消を専ら主眼を置いた安易な「財政構造改革」を批判し、歳出面の大幅な見直し無しに「財政構造改革」は存在し得ないとの見解を示している。批判の多い公共事業に関しても、その機能を「最適資源配分」と「景気安定化」の二点に区別した上で、後者の果たす景気対策上の役割を重視し、前者に絡んで繰り広げられる公共事業批判との混同を避けるよう主張している。
全体として、90年代の財政運営の「失敗」を踏まえた上で今後の政策を考察するというスタンスが取られており、経済政策の「実態」と「あるべき姿」の双方に関して理解を深める事が出来るだろう。その他にも、金融機関の経営健全化や労働市場の問題、さらに地方行政や国土の有効活用等に関しても、現状分析と今後の政策の方向性が提示されており、経済全般に関していい勉強になる。経済や財政の基礎的知識がないとやや難解かもしれないが、それだけ手応えはある。専門家だけでなく、サラリーマンも読んでおくべき一冊だと思う。▲2002.1.16/RT
「マッキンゼー式 世界最強の仕事術」
イーサン・M・ラジエル著 英治出版 ★★
「世界最高」のコンサルティングファーム、マッキンゼー。本書はマッキンゼーで培われてきたコンサルティング技術、つまり、クライアントが抱える問題点の把握、整理、分類、そして解決策の策定および提示までを紹介している。
「今年度日本最強のビジネス書?!」という帯がついていた。各地の書店でもベストセラーの上位に並んでいた。これは、と期待して読んでみたが、「世界最高の仕事術」と銘うつまでの内容ではないだろう。
「初めての問題など存在しない」「解決策に事実をあてはめるな」「80対20の法則」など、ビジネスの現場ですぐにでも応用できそうなアドバイスは多い。自分が取り組んでいるプロジェクトは、顧客に30秒で説明できるほど完全に理解していなければならない、というのも納得できる。上手くできるかどうか自分で試してしまった。
ただこれらの内容にしても「世界最高の仕事術」と言える程ではない。私のHPでニつ星評価(★★)は厳しすぎるかもしれないが、マッキンゼーに対する期待の大きさ、そして「世界最強」というタイトルを考慮すると、残念ながら本書は期待外れだったと言わざるを得ない。次作にはもう少し深い内容を期待したいが、その場合マッキンゼーのことだからきっと本の値段も上げるんだろうな。▲2001.7.18/RT
「倒産寸前!そのとき社長はどうするか」 立川昭吾・著 中経出版
★★★
この本は恐らく「オレの会社はもうダメだ」という状況に陥った中小企業の社長が手にするのだろう。倒産の回避から、倒産のさせ方、将来の復活の方法まで、中経出版らしく非常に具体的に書かれていている。
「倒産後も家族の絆を保つためにはどうすればいいか」「家はどうやって取られるのか、どうやって守るのか」といったあたりは、一介のサラリーマンに過ぎない私も本当に身につまされるような思いで読んでしまった。倒産社長の夜逃げ・一家離散、そして自殺という最悪のケースは誰しも一度は現実問題として耳にした事があるだろう。
巨大企業を潰した社長は家を取られる事もなく倒産後も悠々と暮らしているのに、中小企業の社長といえば、会社の命が尽きようなら下手すれば自らの命も消えかねない厳しい状況に置かれている。この違いの最大の原因は、中小企業の場合、銀行借り入れの段階で社長による個人保証を必ずといっていいほど求められるからである。会社を守る事はすなわち自分と家族を守る事なのである。
この本を誰に読んで欲しいか?と聞かれれば、私は「起業ブームに乗せられている学生や若い"起業家"達」と迷わず答える。会社経営の厳しさを知るには、経営学のテキストでも日経ビジネスでもなく、この手の書物が一番いい。
これを読んで何の恐怖も感じない起業家には、私は一円も出資したくない。▲01.6.11/RT
「失敗学のすすめ」 畑村洋太郎・著 講談社 ★★★★
「失敗は成功の元」と言われている割には、日本では失敗に対して否定的なイメージが強い。失敗イコール能力の欠如とされ、責任問題が発生し、周囲からは冷たい視線を浴びる・・・本書はまずその傾向に警鐘を鳴らす。
日本社会では失敗は避けなければならない事として広く認識されている。
だから、失敗を犯した人はまずそれを隠蔽しようとし、そして他の原因のせいにしようとする。それは一種の防衛本能であろう。しかしその姿勢からは、失敗経験を有意義な情報として今後に生かしていこうという積極的な行動は生まれない。失敗を犯した者は、自己批判を迫られている様な、まるで針の莚に座らされている感じを免れないだろう。本書では、失敗を有意義な経験として次に生かす方法として、まず失敗を誰しもが「避けられないもの」として受け入れる事を提案している。その上で、その原因、特に主観的な原因(どんな気持ちが失敗の原因になったのか)を徹底的に調べ、それを「知識」として他人の参考に供していくのだ。
役所や企業が何らかの「失敗」を調査する場合、そのプロセスは「失敗」に対しどうしても非難めいた糾弾調な内容になりがちである。そんな調査に対し、実際の失敗者が心を開いて失敗の真の理由を口にする筈が無い。失敗という「結果」だけを見るのではなく、その失敗によって詳らかになる、背後に潜む本当の原因に考えを及ぼすのが重要なのだ。
失敗という行為も一つの「経験」である。その実体験を「経験者」から真摯に聞いて、自らを戒める基にする事はわるくないし、これまでの日本に欠けていた事の様に思える。
本書では、数多くの失敗例が紹介された上で、その背後に潜む原因をどう分析し、どう今後の知識として残していくかを詳説している。何事も「明日はわが身」。他人の失敗を責め、笑うのではなく、その経験を共有できる余裕のある社会でありたいものだ。▲2001.2.27/RT
「上司が鬼にならねば部下は動かず」 染谷和己・著 プレジデント社 ★★★
毒にも薬にもなる本だと思う。
自分の個性や職場環境に留意しながら本書を読めば、筋の通った本当に逞しい管理者になれると思うが、本書の内容を鵜呑みにして、自らの置かれた状況を省みずに本書の内容を実践すれば、読者はたちまち「勘違い管理職」となり、求心力を失い、遠からず管理者としての地位を失うだろう。それくらい刺激の強い本である。
管理者は経営者であり、命令者である。本書はこの基本方針を徹頭徹尾貫く。
管理者は、会社から課された責任を全うするために、部下に対する指揮・命令権を行使できるのである。「命令」なのか「お願い」なのか分からない指示を出す上司が多いが、それは馴れ合いや「命令拒否」を生む温床になる、と本書は警告する。命令を出すことは管理者にとっても責任が重い。「お願い」であれば部下もいろいろと考えてくれるが、部下の判断を排して実行される「命令」では、自らの判断が即、最終判断になってしまうからである。胃が痛くなるような判断を迫られることも多いが、比較的高い管理者の給料はその心労への手当てだと考えるしかないだろう。
「箸の上げ下げにまで口をはさむ」と言うが、部下の生活態度までも指導したりする管理者は、最近減ってきたと思う。会社がプライベートに口をはさむ事は憚られる時代だから仕方ないだろう。しかし、私個人としては、管理者がそれらのことに言及して部下を指導することは決して間違ってはいないと思う。もちろん業務外だから命令権は無いし、従わなかったからといって人事考課でマイナス査定を付ける訳にもいかない。しかし、部下の人間形成面での配慮を避けて、仕事面の指導を効果的に行うことは非常に困難だろう。管理者はもっと堂々と、強引に部下を引っ張っていいのだ。いや、それが会社から課された管理者の任務なのかもしれない。▲00.11.26/RT
「MBA ゲーム理論」 鈴木一功・監修 ダイヤモンド社 ★★★
グロービスのMBAシリーズ第7弾。2800円のハードカバーでありながら、発売された99年末から2000年初頭にかけて、首都圏を中心とした大書店のビジネス書販売ランキングで上位を占めていた「ベストセラー」である。ビジネスマンにとってゲーム理論は「勉強したいけど敷居が高い」領域だろう。しかし日々の交渉は「霧の中を手探り」という感じであり、もうちょっと論理的に交渉を進めたいというニーズは高い。そこで本書の登場となった。
有名な「囚人のジレンマ」や「ナッシュ均衡」という基礎概念をしっかり押さえた上で、相手と自分との間にある情報格差や、下す決断の順位・回数によって異なる「ゲーム」を分かりやすい事例を基に解説する。ゲームパターンを当方の有利な様に転換させたりなど、知ってるのと知らないのではかなり大きな差が出そうなテクニックも紹介される。
通勤電車で気軽に読む、という当HPのスタイルで本書を済ますのはもったいない。興味がある人には、机に向って蛍光ペンでも握って読む事をお勧めしたい。▲2000.8.6/RT
「小倉昌男 経営学」 小倉昌男 著 日経BP社 ★★★★
「サービスを商品化する」事は現在では広く知られた概念であるが、それを四半世紀前にやってのけたのが、「クロネコヤマトの宅急便」で知られるヤマト運輸である。本書はヤマト運輸の社長を務めた小倉昌男氏が、当時誰しもが失敗すると考えていた宅急便ビジネスを軌道に乗せ、年間5000億円ビジネスに育て上げるまでの過程を克明に描きつつ、氏の経営者としての哲学を披瀝している。
当時の運輸業は、工場等から出荷される商品の輸送など、いわば玄人相手のビジネスであり、そこには「運ぶ」事を商品として捉えたり、一般消費者へ市場を広げたりという発想は全く無かった。そんな中、氏は日本航空が発売した「JALPAL」というパッケージ旅行商品から「サービスの商品化」という発想を得、運賃体系や荷姿を分かりやすく統一した商品としての「宅急便」を開発し、これまで放置されていた一般家庭(特に主婦)への浸透を図ったのである。その過程で運輸省や郵政省との軋轢も経験する事になるが、氏は政治家等を使うことなく、裁判といういわば基本と正道を以ってそれら参入障壁にぶつかり、打破していったのである。
自らの成功を誇示する事なく、自らが信じて歩んだ道が冷静な筆致で記されている。モノ中心の経済が行き詰まる中、目に見えないサービスを見える形で商品化する事は、新しいビジネスチャンスを発掘する上での非常に大きな足がかりになる。宅急便の成功事例が詰まった本書は、特に現代の若手起業家にとって大いなる刺激となる事だろう。▲00.1.29/RT
「社員第一、顧客第二主義」 伊集院憲弘 著 毎日新聞社 ★★
日本企業においては従来から「顧客第一」「お客様は神様」等のスローガンを通じ、顧客を第一と捕らえる事を社員に要求してきた。資本主義社会の論理にこれらスローガンは少なくとも見かけ上は合致し、また社員個々の業績向上による昇格・昇給という「功利主義」もくすぐる事から、この考え方は広く社会に共有される様になり、売り手だけでなく買い手、すなわち顧客側もその様な待遇を受ける事を期待するに至っている。しかし売り手側にとって「顧客第一」を骨肉化するには精神的負担も大きい。殆どの一般社員の実際の感覚は「自分第一」「上司第一」である為、これらを「克服」するには、価値観の変革にも近い一種の自己変革(自己欺瞞?)が求められるからである。
ところが、本書が例にあげている米国の大手航空会社「サウスウェスト航空」は、自己改革の類を社員に課すプロセスを経る事なしに、顧客から絶大な支持を得るに至っている。
彼らの方針は「社員第一、顧客第二」である。「会社が社員を愛すれば、社員は必ずその愛に応え、顧客に対しても愛情あふれる態度で接するものである」 彼らの方針はこの様に纏められようか。本書は、サウスウェスト航空が如何に社員を大切に扱い、自主性とユーモアを重んじているか、そしてその結果として社員が如何に顧客と自分の仕事を愛して行動しているかを、その殆ど全ての紙幅を用いて読者に熱く語り掛けている。サウスウェスト航空に対する筆者の想いが余りに熱かったのか、途中に冗長ともいえる記述が一部見受けられたが、まず社員を大切にするという同航空の姿勢が非常に上手く行っている事は十分理解する事が出来た。日本社会で公然と「社員第一、顧客第二」と表明できるか?と考えるとかなり悲観的にならざるを得ないのだが、そこまで明示的に表明しなくても、社員を重視している事を企業が行動で示せば、同航空に近い効果は出せるのではないだろうかと感じた。▲2000.1.22/RT
「「一人勝ち」の経済学」 大前研一・著 光文社 ★★★
最近「勝ち組」「負け組」という区分を経済界でよく耳にする。金融ビッグバンに代表されるように、これからは個々の企業が生き残りを賭けて他社との差別化を明確にする事で「勝ち組=市場から選ばれる企業」の座を目指すのである。逆に市場から信任を得られなかった企業は「負け組」として勢いを落とし、場合によっては事業からの撤退や、他社との合従連衡の渦の中に巻き込まれて消えてしまう事になる。日本社会も混沌とした真の競争社会に入ろうとしているのである。 ところが、一方で我が国では最近「一人勝ち」と呼ばれる現象が各方面で頻発している。銀行業業界での「東京三菱銀行」やゲーム業界での「ソニー」、音楽業界の「宇田多ヒカル」に出版界の「日本語練習帳」。企業(アーティスト)間競争がますます活発になり、消費者の選択枝がどんどん増えてきている中でどうしてこれらの様な圧倒的勝者が生まれてしまうのか。
本書はその理由をこう述べる。「消費者は選択枝が多くありすぎると、かえって選択を止めてしまう」と。最近の消費者心理をズバリ言い当てた見解であろう。取り敢えず流行っているものに乗っかろうとする。自分にとって本当に価値があるものかどうかは精査しない、いや、出来ない。みんなが勝ち馬を探して乗ろうとする。これが、数年前に「来るべき多様化の時代」ともてはやされた「現代」の姿である。
確かにあらゆる分野で選択枝は増えた。金融の世界でさえ5年前から比べると選択の幅は多いに広がった。しかしその多様化した選択枝を精査し、自分に合ったものを選択するには消費者の方にも相当量の勉強が求められるのは言うまでもない。今の日本人はその「勉強」を怠り、安易に風評に流されて勝ち馬に殺到している訳だが、この行動を取る限り、折角広がった選択枝は有効に活用されず、次第に選択の幅が元の様に狭くなってくるのではないかと心配になる。 「みんなと同じ事をしていれば安心できる」 その程度の低い意識を持ち続けている限り、21世紀の日本は決して「勝ち組」には入れないだろう。 様々な問題を提起する一冊。▲99.10.3/RT
「投資信託の見分け方」 安達智彦 著 ちくま新書 ★★★
銀行での窓口販売が開始されるなど最近話題に登る事が多い「投資信託」だが、その多様性を初めてとして実際の所は世間一般にはまだ浸透しているとは言えない。雑誌等で有名になってきた「リスク・リターン(RR)値」でさえも、どのような資金運用がされるからその「RR値」が与えられているのか、という辺りまでは一般的とは言えない。本書ではリスクの考え方から「SPM」と呼ばれるファンドの実力指標の解説、更にはファンド運用の種類(フリー運用・システム運用)やアセット・アロケーションの解説等、投資信託に関する一通りの知識が網羅されている。
個人の投資活動に関し最近になって「自己責任」という言葉が盛んに叫ばれているが、そんな事は遥か昔から当然の事。ディスクロージャーを避けてきた投資対象会社・甘言を用いて無理な投資を個人顧客に強いてきた証券会社の営業姿勢・そして銀行預金にでもカネを預けるかの様な意識で投資を続けてきた一部の個人投資家。右肩上がりの経済発展が過去の遺産となった今、これら3者がそれぞれ痛みを伴う意識改革を迫られていると言えよう。それはこれら3者が「独立した判断基準」と「結果責任」を有する事であり、それは言い換えると「投資信託の三権分立」と言えないだろうか。
「三権分立」の一翼を我々個人投資家が担うという事は、証券会社や投資対象会社に対し明確なカタチで意見を言えるようにならなければならない。本書はその初めの、そして大きな一歩と言えるだろう。(ちょっとオーバーかな.....) ▲99.1.24/RT