14. 目に見えないもの 

1999.11.8

   ぼくは水槽を覗き込んだ。
  水槽の中ではたくさんの熱帯魚が死んでいた。
 (どうしてだろう)
  ぼくは考えた。
 「それは水槽の水が汚れているからだよ。」
  後ろを振りかえるとぼくの弟が立っていた。
 「ぼくには水が汚れているようには見えないけど。」
  ぼくは弟に言い返した。
 「悪いものは時として目に見えないこともあるんだよ。」
  弟はそう言った。

  ぼくは少女の家を訪れた。
  彼女はいつもノートに何かを書き込んでいた。
  ぼくがノートを覗き込もうとすると、彼女は決まってノートを隠した。
 「ここには恐ろしい物語を書いているのよ。」
  彼女はそう言った。
 「見せてよ。」
  ぼくがそう言うと決まって、完成したらねと言った。
  ある日ぼくが彼女を訪れると彼女は死んでいた。
  病気でも事故でもなかった。
  もちろん誰かに殺されたのでもなく。
  彼女はベッドに横たわって眠っているかのように息を引き取っていた。
  葬儀が終って暫くしてから彼女の部屋を訪れた。
  彼女の部屋は生前と変わってなかった。
  ぼくは彼女の机の上に置いてあるノートを手にとった。
  恐ろしい物語を書いていたノートだ。
  ぼくはそれをそっと開いた。
  ノートには何も書いてなかった。

  悪いものは時として目に見えないこともあるんだよ
 


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