我が家に来た当初、ニーニの耳の形はけっこういい感じのローズイヤーになっていた。
ブレイズやホームズに比べると、ずいぶん早くて手間要らずなどと感心したくらいである。
それがいきなり仔犬イヤーに戻ってしまった。
なんだ、この逆パターンは?? などと訝りながらも、テキトーに放っておいたブレイズの寝癖イヤー(もしくは翁イヤー)の二の舞になっても困ると思い、早めに矯正することにした。
やり方は耳をローズイヤーの形に固定して、その折れ目部分の裏側を接着するのである。専用の糊も存在するらしいのだが、高そうだし何よりも界隈くんだりでは入手不可。
てなわけでサナっちさんのアイデアを見習ってアイプチを使用することにした。この二重目蓋糊なら人間の皮膚の薄い部分に使用するものだからイタグレの耳にも安心だし。サナっちさん、ナイスアイデア!!
早速アイプチを買いに行き、ふと目についたるは睫毛糊198円也。アイプチは目蓋押し上げ棒がセットになっているため1000円近くする。
となれば、当然198円GETに決まっているだろう。糊付け用の棒なんか爪楊枝で用が足りるし〜。
ニーニの耳を糊付けし、遅ればせながらではあるがついでにブレイズの耳も。
おっ、2頭ともなかなかカッコイイじゃん、と悦に浸っていたその日の夕方。
ふと見ればブレイズが糊付けしたほうのニーニの耳をおしゃぶり昆布代わりにしているじゃあ〜りませんか!
ブレイズにしてみればこれは愛情表現、グルーミングのつもり(たぶん)なので、無下にやめさせるわけにはいかない。
だってニーニを受け入れて可愛がっている証拠だもんね(ホームズはこれをしてもらうのが大好き)。
そこで苦肉の策としてニーニの反対側の耳をブレイズに差し出して「こっちにしなさい、こっちに」とお願いしてみる。
ブレイズにしてみれば、たまたま糊付けしたほうの耳が目の前にあったからであり、反対側の耳でも一向に構わない。
てなわけで素直に差し出されたほうの耳にチェンジする。
ところがニーニの頭の位置が問題だった。人身御供となった耳だと、位置的にどうもしゃぶりにくいらしく、結局は元の側の耳に戻ってしまう。
おかげさまで糊は唾液でふやけ、糊付けした箇所の毛と一緒に剥がれてしまい、あとには一文字のじゃりっパゲが。。。
なぜいきなりニーニの耳が仔犬イヤーに戻ってしまったのか、今まさにその原因が解明された気がする。
しかも色黒なだけにハミハミされたあとは、ふやけてキクラゲそっくりになってるし。
ニーニはかなりのヤンチャ坊主であるから、先々のことを考えても今ここでビシッとしておかねばならない。
とは思うのだが、これがなかなかうまくいかない。
犯行現場を押さえた折にはマズルコントロールを試みるのだが、全身全霊で抵抗するニーニに対して、これ以上押さえつけ続けていると怪我をさせちゃうかな?と(YOKOさんに言わせれば要らぬ)心配をしてしまう。
そんなわけで、どうやらもがき続ければ振り切れるチョロイ相手と目されてしまったらしい。
そしてそれがニーニを増長させる原因となってしまったようで、近ごろでは「やめなさい!」と怒っても聞く耳もたない。
そこで頑張ってみることにした。
以前に目撃したYOKOさんの調教法を見習って。
YOKOさんの調教法・・・・それは感動するほど凄かった。
抱えあげたニーニを身動き取れないように押さえつけ、マズルにがっぷり食いついたのである。
犬の固定ならプロフェッショナルなYOKOさんを振りほどくことなど到底できず、ニーニの悲鳴はすでに「キュンキュン〜」にあらず。
「ギャオ〜ンギャオ〜ン」の大絶叫。そして恐怖のあまりチビった。。。。。。
その時のことを思い出し、悪さをやめないニーニを抱えあげて動けないように固定し……と、ここまではなんとかできた。
だがYOKOさんのように手際が良くないため、この時点でニーニは目一杯に頭をのけぞらせてしまいマズルに届かない。しかも逆にこちらの唇を噛まれそうな勢い。
咄嗟に予定を変更し、ニーニの咽喉笛に食らいつく私。
なんかもう、こうなると躾というよりは動物同士のボス争いの図。
まあこの攻撃が功を奏し、少しは私に一目を置くようになったニーニである……かな??
ちなみに、それ以前にもなかなかうまくマズルを押さえられなかった私は、首根っこをつかんでニーニを引き倒しての教育を試みていたのだが、それを振りほどこうと力一杯抵抗されると、これ以上やると首が絞まって息ができなくなってしまうのではと心配になりつい手を離してしまっていた。
それを聞いたYOKOさんのひとことアドバイス「本当にそうなったらぐったりするから」
つまりはぐったりするまでは『可』ってことスか???
さすが東の元締め、小心民の私とはスケールが違う。
もちろん年期も、知識も、手際も、何から何まで違うから出来るのだろうけど。
後日談であるが、ニーニのお散歩デビューに際して最初は胴輪を着用すると話していた時のこと。
胴輪のほうが、いざという時に持ち上げられるので便利だと、わざわざサナっちさんがくださったもの。
「どうして胴輪なの?」とのYOKOさんの質問に、かくかくしかじかとサナっちさんからいただいたアドバイスの通りに説明すると。。。。
「私はリード(首輪)でも持ち上げられるけどね」と、さらりとYOKOさん。
「そんなことできるのYOKOさんだけです、私にはそんなコワイことできませんて!」
思わずそうツッコミを入れてしまった私。
やっぱり豪快先生だった。。。
ニーニ、グリーニーズデビューする。
とりあえず最初なのでクロレッツガムのサイズに切ったグリーニーズを与えてみると、大喜びでカミカミするものの、ニーニの小さな歯ではなかなか攻略できず、しまいには見ているこっちが面倒臭くなったため、床に落としたのを横取りしてワトスンにあげてしまった。
まだちょっと早かったかな〜と、翌日はニーニがご飯を食べている最中に(フードをふやかさなくなったので最近食べ終わるのが一番遅い)、他の犬たちにだけグリーニーズを与えてしまった。
だが、たいして噛めもしないくせによほどグリーニーズが美味しかったとみえ、ご飯を途中で放り出して催促するニーニ。
仕方が無いのでフードの残っている食器の中に前回同様の小片を一枚入れてやる。
するとご飯そっちのけでグリーニーズを頬張るニーニ。
こいつは失策だったな〜と後悔。まだご飯が残っているため、他の犬たちが近づいたら「どっちも私の〜!」とばかりに慌ててグリーニーズ飲み込んでしまうかも知れないではないか。でもって咽喉に詰まらせる……
しかしその心配はなかった。
グリーニーズをしばらく口の中でもごもごやっていたと思ったら食器の中に吐き出し、フードを少しカリカリ。それから再びグリーニーズを口に入れてもごもごし、またもや吐き出すとフードをカリカリ。。。
それって、ご飯とおかずってこと??
ちょっと感心してしまった。
お散歩タイムにニーニを留守番させている時、他の物への被害を少なくするために中身の少なくなったティッシュボックスを、囮としてわざとテーブルの上に置いて出た。
これはホームズの時にも使った手だが、ティッシュを引っ張り出すのは好きなので、そこそこ効果はある。
帰宅してみると、たしかに効果はあった。が、ホームズの時には引っ張り出してもせいぜいが2〜3枚だったと記憶しているのだが、ニーニの場合は10枚は引っ張り出してまき散らしてあった。
数日後、ついに箱そのものが破壊されてしまったこともあり、なんとなくその作戦は立ち消えとなる。
そんなある日、入浴のため犬たちだけを残して部屋を出た。
カラスの行水の私は、その間せいぜい10分程度だったと思う。
部屋に戻ってみると、まだ中身が半分は入っていたティッシュボックスが破壊されて、床にティッシュがぶちまけてあった。
一枚一枚引っ張り出して悪戯するならまだ可愛いが、いきなり箱から攻略するなよ〜という感じである。
ついにニーニのお散歩デビュー。
これに際してワトスンがブレ&ホーから離脱、散歩は「のんびり歩くぜご隠居さん」と「テキパキ歩こうイタグレチーム」の二部構成になる。
ものぐさ飼い主にとっては少々大変なお散歩タイムとなってしまったが、だいぶ歩調の合わなくなってきているワトスンとブレ&ホーたちであるから、どのみちそろそろ二部構成にしなければとは考えていた。
単独行動となってせいせいしたワトスンは、散歩=運動という概念を捨て去り、今日も付近一帯の地質学調査に精を出している。
さて肝心のニーニであるが
第1日目。初めて歩く『あなたの知らない世界』にビビりまくる。
第2日目。外の環境にだいぶ慣れ、比較的まっすぐ歩くようになる。
しかし、ここで素直に「めでたし めでたし」で終わってしまうような話なら、縁側談議に書く価値も無い。
三日目以降、蛇行&垂直ジャンプと、即席アジリティーをこなしているニーニ。おかげでリードの絡まること絡まること。
まあ垂直ジャンプは良いとしても(本当は良くないけど)、蛇行しながら歩かれるのは困る。
リードが絡まるだけでなく、ヒョイと私の足元に飛び出してくるので危いったらありゃしない。
軽く蹴飛ばしてしまうくらいならまだしも、勢い余って踏んづけてしまい、骨折でもされたら一大事。
体重ン十キロの圧力が一度にかかるのだから、無きにしもあらずだろう。
そこでニーニのウネウネ歩きが始まったら少しばかり歩調を緩め、私の進路によたってきたのを見計らって足をポンと軽く当ててやることにした。
飼い主の足元に飛び出す=蹴飛ばされるので危ない、という図式をニーニに学習してもらいたいからなのだが、いたいけな仔犬をグイッと乱暴に引き戻すやら足で蹴飛ばすやらで、傍目から見たら「虐待?」とか思われてるんだろうな〜
ベッドでのんべんだらりんとテレビを観ていた私のお股を、一心不乱に掘って掘って掘りまくっていたニーニ。
ふと動きが止まり、急に大人しくなったな〜と思ったら、ベッドの端に小指の先ほどの物体がふたつ点々と。
そう、吐いていた。
リキ入れすぎてんだよ〜、とティッシュでそれを拭き取る私の目に映ったものは。。。
ベッド脇の犬用寝床に落下した、今夜のノルマ全部とおぼしきボール状の物体。こっちが本体だったらしい。
しかもそこにはブレイズが寝ていた。
そしてボール状の物体は新たなるティッシュに手を伸ばす間もなく、ブレイズの口に吸い込まれていってしまった。
まさに入れ食い。う〜ん池の鯉みたい。
ブレイズにしてみれば、「ラッキ〜♪」とばかりの棚ボタ状態だっただろう。
まあ具合が悪くて吐いたわけじゃないし、ある意味、親が子供に吐き戻して離乳食を与えるの逆パターン。
それにしても、なかなか見事なブレイズの連携プレーだった。
芸術の秋である。そこで一句。
また今朝も 部屋にシミある 犬の肥