いかにも得意げな顔
勝手に物干しに出る割には自分しかいないとなると、すぐに家の中へ戻りたくなる寂しがり屋のお年頃。
あまりにも素晴らしいニーニのヤンチャぶりに辟易して母の漏らしたひとこと。
「たまには電池切れるってこと、ないのかしらねぇ。。。」
アルカリ電池のさらに上をいくという例の新開発の某電池を搭載しているらしいニーニ嬢は、寝ている時とご飯の時以外は1分たりともじっとしていない。
かくゆう私もしばしば思う。
「誰か麻酔銃持ってきてくれ〜!!」
お散歩デビュー前のニーニにとって物干しから見える外の景色や音や匂いは、さぞかし好奇心を刺激する楽しいものに違いない。
それは大いに結構なことなのだが、問題は物干しと屋内の高低差。
他所さまの家の物干しにあがる機会などそうそうあることではないので他は知らないが、我が家の物干しは後付けのためか60cmほどの高低差がある。
もともとの高低差が20cm程度だったので、そこに一段足場があって物干しに至ると言う具合だ。
もちろん他の3頭は上手に上り下りできるが、ようやくあがれるようになったニーニに下りるのはまだ無理。それに下りられると錯覚されてしまうのも怖い。本当にできるのであればそれはそれで良いけれど無茶をして怪我でもされたら一大事。
そんなわけで布団干しなどの往復する作業の時には、いちいちニーニも回収しなければならないので余分な仕事が増えている。
その心強くもありがた〜いお言葉に勇気づけられながら、『シニア混ぜ混ぜ作戦』は続行された。
『シニア』の粒を増やし、念願の完食達成。
ただ、今は安上がりに『シニア』で騙せているが、この味にも飽きてしまった場合のことが気掛かり。
ブレイズの時は、数種類の缶詰を何日かおきのローテーションで回さないと食べてくれなかった。
それしか手段がなくなれば仕方ないけれど、できればその方法は避けたい。貧乏所帯の我が家では一度に少量しか混ぜてやらないため、いちいち小分けにラッピングして冷凍保存せねばならないし、食事制限のあるワトスンのぶんは別に用意しなければならないし……要するに面倒臭い(←超怠惰)
しかし大変親孝行であるニーニは、そうはならなかった。『シニア』5粒で満足し、そのうちに食事に勢いがついてきて、『シニア』を混ぜなくても食べるようになってくれた。
それどころか「足りない足りない、もっともっと〜!」と盛大な食欲を見せるようにもなった。何しろホームズよりも食べるのが早い。
食事の量を増やし、さらに食後のデザート(他の犬たちのグリーニーズタイム)に試供品でもらったパピーフードをカリカリのままたいらげているニーニであったが、時々思い出したようにワトスンのご飯と自分のご飯を見比べては、「あれ? 何か足りないかも??」と首を傾げている。
ワトスンは名実ともに我が家の犬たちのボスである。
そんなワトスンを恐れ敬うブレ&ホーにとって、寝ているワトスンの鼻先を通過することや、ましてや一緒に水を飲むなんてことはもってのほかの恐れ多い行為。
しかし怖いもの知らずは仔犬の特権。ニーニはそれをやってのけた。ふと見ればワトスンと並んで一緒に水を飲んでいるではないか。
ワトスンも身体の小さなニーニが邪魔にならないためか、特に追い払う様子もない。
「いや〜、いいもん見せてもらいました♪」みたいに、嬉しくも微笑ましい光景。
この日の雷雨はけっこう長かった。
ちょうど犬たちのご飯タイムが終わろうとする頃から雷がいよいよ激しくなり、お楽しみ気分も一気に吹き飛ぶワトスンとブレイズ。
しかも一旦はおさまりかけて安堵しようとしたところへ、いきなりの大音響でフェイクをかまされたものだから、ビビり度が急上昇してしまった。ブレイズはひたすら金縛り状態でブルブルと震え、ワトスンは逃げ場の無い逃げ道を探して家中をウロウロ。
この正反対の挙動で恐怖を訴える2頭をなだめねばならないところへきて、そのうえさらにニーニまでもが雷を怖がるようでは大変だぞと思いつつ反応を窺うと……満腹夢心地になってヘソ丸出しで寝ていた。
まあ、たしかにコイツが雷ごときでビビるはずはなかろう。
ホームズも雷は平気なので、すっかり置物仕様と化しているブレイズを撫でてやりつつ、「こっちに逃げれば大丈夫かな? あっちは?」と落ち着きなく彷徨うワトスンのために行く先々の部屋のドアやらを開けてやりつつ(ニーニ乱入防止のため最近では至る所が封鎖されている)、その合間にブレイズのところに戻ってまた撫でてやりつつ…の繰り返し。
そこへニーニが目を覚まし、ウロつき回るワトスンのことを遊んでいるのと勘違いしたものか、ちょっかいを出し始めた。
怒りは恐怖にも勝る感情。てなわけで少しはワトスンの気も紛れるかと、そんなニーニを最初は黙認して見ていた。しかし雷様のご威光は怒りの感情より強かった。ニーニの相手どころではなく、一方的にあちこちの毛をむしられるワトスン。
結局はニーニをワトスンから引き剥がしたのだが、この出来事以来ワトスンのニーニに対する評価は、日増しにパワーアップしていくヤンチャぶりと相まって底なしに下がっていった。
一番最初に受け入れてもらい、まだブレ&ホーがニーニを避けていた頃にはあとを付いて歩くのを許してもらっていたというのに……。
まったくもって恩を仇で返す奴だ。
ニーニが物干しに自力であがれるようになってしまった。
そしてひとたびそれを覚えてしまうと、得意になって家人の誰かが物干しに出るたびに付いて行く。
結局『シニア』が食べたいのだと分かると、まあ害にはなるまいと3粒ほど
パピーの中に混ぜて与えてみた。
しかし敵もさるもの。フードを口の中でもごもごやって『シニア』だけを選
別し、『パピー』は全部吐き出す。おいおい、そこまでして食べたいほどの
ものじゃないだろ。どうせあと8年もすりゃ嫌でも毎日食わせてやるって。
けれども現実問題として今食べてもらわにゃ困る。
そこで選別できないように『シニア』3粒をお湯で完全にふやかしてペースト状にし、それを『パピー』にまんべんなく混ぜ合わせた。
それでとりあえずはご飯を食べるようにはなったが、まだ勢いがイマイチ。完食には至らない。
もう2〜3粒『シニア』の量を増やしてみるか?
そう思い、だがしかし石橋を渡る前に叩き壊してしまうタイプの私は(でもツメは甘い)、実行に移す前にYOKOさんに相談してみた。
その時のYOKOさんの金言「三日くらい食べなくたって死にやしない」
ニーニがご飯を食べなくなった。
食器に鼻を近づけてくんくんと匂いを嗅ぎ、すぐに「フン!」とそっぽを向いてしまう。
原因はワトスンのご飯を盗み食いしたこと。
ニーニのご飯は『パピー』で、ワトスンは『腎臓サポート』と『シニア』の混合を食べている。どう考えても塩分控えめの老人食より『パピー』のほうが美味しいに決まっている(メーカーの嗜好性を比較しても)のだが、初めて覚えた大人の味に、えもいわれぬ魅力を感じてしまったらしい。なんともシブい奴。
甘やかすな、食いたくなけりゃ食うな、腹が減れば食う、は給餌の鉄則であるが、さすがに丸一日ほとんど食べない状態だと焦りだす。何しろ「食いたくなけりゃ食うな」と言ったら、本当に食べなくてガリガリになった奴はいるし、遊び呆けて食いの悪かった奴もいる。
ああ、干物犬の恐怖ふたたび…いや、みたび。どうしてうちに来る仔犬は揃いも揃ってこうなるのか。。。
仔犬はずん胴でお腹ぽっこりなのが可愛いのであって、おシメも満足に取れていないような生後2ヶ月半からイタグレ体形にならんでもええ! てなもんだ。
そして私は過去2回のトラウマから、どうにかしてニーニにご飯を食べてもらおうと涙ぐましい試行錯誤を開始したのであった。
最初はご飯を食べなくなった原因が分からなかったので(まさか好んでまずいほうのフードを食べたがるとは思うまい)、ふやかし方の具合を変えてみたり、他の犬たちがもの欲しそうに集まってくるのが気が散って食べづらい原因なのかとニーニだけ別の部屋に連れて行ってフードを与えてみたり。。。