それは何の変哲も無い朝から始まった。
ワトスンの散歩終了後、第二陣のブレ&ホー組を散歩に連れ出す。
寒い季節には散歩をゴネまくるブレイズであったが、夏も近づく今日この頃、リードを付ける前から玄関に下りて行く気も満々。
ところが家を出るとすぐに雨が降り出してきた。内心「ラッキー♪」と思いつつ、散歩を中止して帰宅。
それから十数分後、2階へあがって行くと部屋の入り口に水っぽい嘔吐物が。。。
一瞬「うっ」と思ったものの、吐いてあったのが板の上なので後始末も楽チンだと気を取り直す。
が、これは恐怖の扉が今にも開かんとする、単なるプロローグに過ぎなかったのだ。
私の(狭い)部屋にはドアから大股で一歩の所にガラスのテーブルがあり、その下に使わなくなった足温カバーやらひざ掛けで犬の寝床を作ってある。
そこにこの水溜りを作った犯人とおぼしきブレイズが寝転んでおり、その延長線上には入り口にあったものよりもさらに大規模な嘔吐物が、寝床から絨毯の上にまではみ出していた。
折りしも外は雨。
あ〜、こりゃ洗濯しても乾かないよとガックリしながらブレイズをどかし、汚れた寝床材を剥がして別のものと敷き代え、絨毯も掃除する。
でもまあ布団にされるよりはずっとマシと、いくばくかの安堵感。
が、ここで虫の報せか、ふと毛布をめくる。
すると。。。
あったとも、見事な土石流が。
現場に残された遺留品の状態から察するに、どうやらここが出発点らしかった。やや水っぽくなっている寝床が第二地点で、もう殆ど水と化している板の上が第三地点。
しかもこれで終わりではなかった。ペットシーツの上に、あたかもピリオドのごとくポッチリと、ほぼ下痢と化した軟便が。
これだけのことをしでかせば当のブレイズもだいぶ具合が悪いようで、寝床にダランと伸びたまま、朝のお芋タイムにも姿を見せない。
前日、サナっちさんのお宅のリバーちゃんが体調を崩し、その原因が何かのウィルスであるという話をHPの掲示板上でしたばかり。となれば、私の頭の中では「もしや」ウィルスが増殖を始める。
とはいえ、このようなことは今回が初めてではないし、とりあえず様子を見るぐらいの知恵はついてきた。飼い主も少しは過去の経験から学習している(ような気がする)。
昼頃、やや復調した雰囲気でブレイズが1階に下りてきたものの、しばらくして今度は母の部屋に小さな水溜りを制作。飲み水を外すのを忘れていたことに気づき、水飲み用のボウルを片付ける。
てなわけでブレイズの本日のご飯は当然のごとく抜きなのだが、復活しつつあるこの食いしん坊がそれを納得するわけがない。食事タイムになるや否や「ゴハン〜 ゴハン〜♪」と大ハッスル。
そんなブレイズを抱え上げ、私にしてみれば奇跡に近い手際の良さでワトスンとホームズの食器を所定の位置に並べると、そのままブレイズを抱えて別部屋に。
ワトスンとホームズならば力関係がはっきりしているので、監視していなくとも餌の取り合いで揉めることはあるまい。
いまだボスの地位を保っているワトスンではあるが、ちょっとした事件をきっかけにご飯タイムだけはブレイズが優位だと思い込んでしまっているので、これがブレイズVSワトスンの展開だと要監視なのだ。
ちょっとした事件というのは、ある意味においては不幸な事故だった(かも)。
その日、ワトスンは自分担当のご飯にふと疑問を抱いた(らしい)。そして他のご飯と見比べるためだったのかは知る由もないが、ふら〜っとブレイズの背後に立った。
その瞬間、突如として『ゴルゴ13』と化したブレイズ。猛烈な勢いでワトスンに吠えかかったのだった。
その結果は言うまでもなくワトスンVSブレイズの大喧嘩。
しかし食べ物が絡んでいたせいか、いつになく気合の入っているブレイズに一瞬ワトスンが怯んでテーブルの下まで退却。そこへ私の怒号が飛んだものだから、慌てて顔を上げた拍子に『ゴン!』と勢い良く頭をテーブルにぶつけてしまった。
以来、犬たちのご飯の用意をしているとワトスンは他の部屋に姿を消してしまい、いくら呼んでも来なくなってしまった。こうなると神経質な性格だけに長期戦は必至。あたかもイリオモテヤマネコを餌付けするかの如く、現在リハビリ真っ最中。
ちなみに乱闘のあった時ホームズはどうしていたかというと、修羅場と化した背後を尻目に、ひとり黙々と自分のノルマを片付けていた。
さて話を戻そう。
ワトスンとホームズが1日のうちで一番楽しいご飯タイムを過ごしている時、別部屋に監禁されたブレイズは自分も馳せ参じねばと必死でドアをガリガリ引っ掻き続けていた。
だがブレイズの願い空しく、ようやく解放されて2階に駆けつけた時には、きれいに舐めつくされた2個の食器が放置されているのみ。。。
切ない気持ちを抱いたまましばらくはその場をウロウロしていたブレイズだったが、やがて諦めがついたのか、犬用ベッドの中に入って寝てしまった。
と、ここまでなら今までにも何度か経験した出来事なので問題はなかった。
しかしながら天災は忘れた頃にやってくる。
夜も10時になろうかという頃、昼間めいっぱい吐いたうえに食事も抜かれ、抜け殻のようになって眠っていたブレイズが目を覚まして顔を上げた。
その顔を見て愕然。なんと片側の黒目が定位置より上にあがっていて、そのぶん下から白目が露出しているではないか。いわゆる三白眼。しかもスペシャルバージョン。
ブレ&ホーの寝起き顔にはしばしばそんな状態を見かけるが、それはほんの一瞬のことですぐに元の状態に戻る。だが今回の場合は5分経っても黒目が元の位置に戻らない。
もちろん大パニックに陥ったとも。ついにウィルスが脳に回ってしまったのだと思った(私ではなくブレイズの。念のため)。
ここまでくればお決まりコースをまっしぐら、またもやYOKOさんにSOSコール。
しかしさすがにウィルスが脳に回って云々という話を切り出さない程度の自制は働き、「脱水症状でしょうか?」と内心の疑惑を微妙にはぐらかしつつ、おそるおそる。
この時点で脳内に妄想ウィルスが大増殖していたのは、もちろん飼い主のほう。
「そりゃ瞬膜がはみ出して白目に見えるんでしょ。人間用のでいいから、一回使いきりタイプの無添加の目薬あったら差してみて」と私の妄想など気にも留めずに指示をくださるYOKOさん。
数分後、ブレイズの目は無事に元通りになりましたとさ。めでたしめでたし。
10月のとある休日(私の場合は平日休み)の昼間、風呂場でホームズを洗っている時にタイミング悪く代引き商品が到着してしまった。
状況的にはこれからすすぎに入ろうというところだったので、やむなくシャンプーのついたままのホームズを風呂場に閉じ込めて応対に。
玄関先で代金を支払っていると、風呂場の開け放たれた窓の奥から「キョオ〜〜ン キョオ〜〜ン」との大絶叫が、秋の爽やかな風に乗って流れてきた。
しかも出所が出所なだけに素晴らしいばかりのエコー付き。
「あ〜あ、気の毒に…」と内心同情しつつも、私は受取りサインの真っ最中。
ホームズにしてみれば嫌いなシャンプー&風呂場に置き去り&身体は冷えてくるしで、それこそ生きた心地もしなかったに違いない。
風呂場のドアを開けた瞬間「ヒュイ〜〜ン」と泣きながら飛びついてきて、たった今体験した恐怖の余韻を噛み締めるかのように、シャワーで身体を流している間中ずっと「ヒ〜ンヒ〜ン」と鼻を鳴らしていた。
ま、災難だったね。
千葉の名産品といえば落花生。
その中でも掘りあげてすぐの落花生を殻ごと茹でる『茹で落花生』は、ともすれば千葉の人間でも知らない者もいるという、なかなかレアな食べ方である。
塩茹でするので一般的に出回っている落花生と違って実が柔らかくしっとりしていて、ほんのり塩味の効いた味がけっこうクセになる。
販売店に置いてあるものは長期保存できるように冷凍してあるので、これを自然解凍、もしくはさっと湯にくぐらせて解凍して食べるのだ。
千葉の人間でも知らない者がいるくらいだから、地元民でない人へのお遣い物としてはこれがなかなか重宝するし、喜ばれもする。
ひとくちに落花生といっても国産から中国産から色々あるが、特に有名で美味しいといわれているのが八街(やちまた)産のもの。私の住んでいる地域が八街に近いためもあろうが、近隣住民は口を揃えて「落花生は八街がイチバン!」と主張する。
中国産のものに比べると見た目は実に貧相なくせに値段が高いのは、「格が違うんだよ、格が!」という地元民の誇りの現われかどうかは定かではないものの、やはり味が全然違うのだという。
味オンチの私にはイマイチその差が分からないけれども、なにしろ畑が道一本違っても味に差が出るというこだわりぶりだ。
我が家から車で10分ほど行ったところにある専門店でも、新豆が出回る少し前から(早掘りするらしい)茹で落花生がお目見えする。
そして10月も半ばになろうかという頃、手元に届いた一枚のハガキ。
『茹で落花生はじめました。今年も良い豆がたくさんとれました。ぜひ試食にきてくださいね♪』
ここの店では八街の畑で朝掘りあげたナマの落花生を自分のところで茹でており、在庫がなくなり次第終了してしまうという期間限定。的外れな時期に買いに行っても置いてない。
ちょうど数日後に遠方より友人が遊びに来ることになっており、母からもお遣い物にすると頼まれ、早速買いにでかけることにした。
運転手はもちろん父。仕事が早くあがったら連れて行けと携帯に電話を入れ、父の帰りを待つ。
その間に雨が降り出してきた。
そして父が迎えに来た頃には、雨足が急に激しさを増して土砂降り状態。
「でもこういうふうに急に激しく降る雨って、意外と短時間で止んじゃうんだよね〜」などと楽観的な見通しを述べつつ、車は落花生店めざして走り出す。
だが私の根拠も理屈もない安穏な見通しに反し、雨足は一向に衰えない。いや、むしろどんどんパワーアップしている。
車内にまで雨の叩きつけるようなゴウゴウという音が響く。ワイパーも半ば役に立たないほどの激しさ。
そんな豪雨の中をようやく落花生店にたどりついた。
店内には誰もいなかったので、「すみませ〜ん」と声をかけてみるも反応はない。
もう一度「すみませ〜ん」
さらに「すみませ〜〜〜ん」
なおも「すみませ〜〜〜〜ん!」
しかし相変わらずの無反応。ここは店の奥が自宅になっており、ガラス戸越しに人の気配はするのだが。
なにしろ店内に居ても激しく降る雨の音がうるさく、私の声が聞こえないのも無理からぬことと声掛けの場所を移動し、店と自宅を仕切る暖簾の前まで行って再び「すみませ〜ん!」と大声を張り上げる。
。。。。。無反応。
暖簾から自宅であるガラス戸までの間に(歩数にして3〜4歩くらい)小さな作業場のようなものがあり、さすがに客の領域ではないそこに入ってはいけないだろうと、最初は頭だけ暖簾から突き出してガラス戸めがけて声をかけいた。だが、曇りガラスを通して人の動く影とか足音が聞こえてくるにもかかわらず誰も出て来ないので、半歩ほど身体を中に入れる。
この頃にはもう「すみませ〜〜ん!」の声もほとんどヤケクソ。ターザンの雄叫びのようになっていた。
10分以上は叫び続けていたと思う。
ようやく初老のオヤっさんが出てきたので茹で落花生を6袋注文すると、「今日は豆が来ていないので、そんなにない」の返事(天候や気候に育成が左右されるので、豆が来ない日もある)。
散々待たされた挙げ句にこの仕打ちかよ、と内心カリカリしながらも「何袋ならあります?」と尋ねる私。
店のオヤジは答えた。
「1袋」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
雨の音でよく聞こえなかったかも(^^;
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
喧嘩売っとんのかコラ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!(‐‐#
だったらあんな堂々と宣言したハガキなんか寄越すなという感じである。
しかも店のオヤジには散々待たせて済まないとか、この集中豪雨の中わざわざ来てもらったのに申し訳ないとかいった態度は微塵もない。
もちろん仕方なくその1袋だけ買って帰ったとも。
そして事の顛末を話した時に母の口から出てきたセリフは「ぜひとも試食してくださいってあったけど、試食してきた?」だった。言うまでもなく、店に対する嫌味である。
散歩中、通りすがりの年配のご婦人が「まぁ〜、キレイなチワワだこと」と。
そして訂正する間もなく笑顔で行き過ぎていった。
チワワに間違えられることは意外と多い。身体の大きさが全然違うと思うのだが、ご近所界隈ではイタグレの知名度がまだ非常に低いため、イメージ的にかぶる、知名度の高いチワワに結びついてしまうのだろう(もしくはミニピン)。
また別の日、通り過ぎざまに女子高生たちが「超デカいチワワ〜!」と驚いている声が聞こえてきた。
年配のご婦人の時には苦笑で済ませたが、この時は妙にムカッときて「こんなデカいチワワがいるかっちゅーの!」と内なる心の声。
同じチワワに間違えられるにしても、要は言い様である。
2004年も残すところあと数日となったある日。
動物病院の休み中(31日の午後〜3日まで)に慌てないよう薬などの最終チェックをし、その年最後の買い出し(?)に詣でる。
そして受付でお会計をしながら「これでもう今年は来たくないですね〜。あと何日でもないけど」などと、毎年の如くのセリフで締め括る。
たしかにその希望は叶った。2004年中にはもう病院に行かなかったのだから。
その点でワトスンは親孝行な奴だと認めよう。
だからといって、なにも大晦日の夜11時頃になって「グェッ! グェッ!」と変な咳をし始めなくとも良かろうに。。。
記憶にある限り、正式な(?)犬の咳というものを聞いたのはこの時が初めてだったのだが、それがまたけっこう凄まじい。我が家にタスマニアデビルでも迷い込んだか?というほど。初めて聞くと正直ビビる。
最初は咽喉に何かつかえたのかとも思ったが、間隔をおいて断続的に2度3度と咳き込んでいるのを見るにつれ、風邪をひいたのではないかとの疑いが濃厚に。
「おいおい〜、こういうことは31日の午前中(←病院のタイムリミット)までに済ませておくものだよ〜」などと愚痴をこぼしつつ、ワトスンの背中をさすってやる。
気分はもう楽しみにしていた毎年恒例の年越しTVゲームどころではなくなり、まんじりともしない一夜を過ごす(例の如く途中で寝たけど)。
明けて日本全国どこもかしこも元旦。
動物病院も漏れなく元旦。。。
さすがに元旦から休診の病院の手を煩わせるのはやはり気がひける。
とはいえ、ワトスンの咳があまりにひどくなるようだったら休日料金だなどと(←こっちがホンネ)言ってはいられないので、「すみません、気のせいじゃないんですけど〜」と病院に駆け込もうと思っていた。
相変わらず咳は続いているものの、前夜よりは症状が治まってきているようにもみえる。
そして在宅ケアとして、またしてもくだらないことを考え始める私。栄養価の高いバナナを食べさせてみようかとか、咽喉の調子が落ち着くように薄く砂糖を溶かした湯冷ましを飲ませてみようかとか(←本人的には苦肉の策)。
しかしながら最近少しは知恵のついてきた私。このアヤシゲな(私的)民間療法を試みる前に、元旦早々で申し訳ないとは思いつつもYOKOさんにSOSメールを送る。
ほどなくしてYOKOさんがわざわざ電話をくださり、ワトスンの症状は風邪ではなく『気管虚脱』のそれであることが判明。
寒暖の差が激しいと咳が出やすいので、ドアを開け放して部屋と廊下の気温差を少なくしてあげたほうが良いとのアドバイスを賜る。
病院に連れていくのは、正月休みが明けてからでも大丈夫と。
おかげさまで、ほ〜〜〜〜〜〜〜っと大安堵。
けれどもこれにて一件落着しないのが私の私たる所以。
部屋と廊下の気温差を少なくするにあたり、あろうことか自分の部屋の温度を廊下に合わせてしまったのだった。つまり一切の暖房をつけずにいたわけ。
千葉は大晦日から急激に冷え込んでいた。昼の間はまだしも、日が落ちるにつれ寒さがひしひしと身体に張り付いてくる。いつも以上に重ね着しても、その寒さは身体の芯にまで凍みていく。
この状態で三が日を過ごさねばならないことに、超寒がりな私が果たして耐えられるだろうか??
でもワトスンのためなのだから我慢我慢と、ツララでも生えてきそうな極寒の部屋の中で唯一暖をとれる場所、すなわち電気敷き毛布で暖めた布団に潜り込み、顔と手だけを出して根性でやりかけのTVゲームを続行(ゲーム三昧なくして何のための正月休みじゃ〜!)。
が、時間の経過とともに手は氷のように冷たくなっていき、コントローラーを握る両手の隙間から冷気が胸元まで這い込んでくる。
このままじゃ凍死するかも・・・(^^;
いくぶん意識が朦朧としかけた頃、ついに寒さに根性が負け、ゲームを断念して寝てしまった。
そんな涙ぐましい努力の甲斐もなく、夜中の2時頃と明け方に咳き込むワトスン。
そして翌二日の、日もそろそろ落ちようかという頃、ふと私の黴色の脳細胞が思考した。
寒暖の差が激しいとワトスンは咳き込む→でも暖房入れなくても夜中と明け方に咳き込んだ→暖房を入れないというのはあまり意味がない?→そもそもワトスンは私の部屋でずっと寝ていて廊下に出ない→出ないのだから廊下の気温に部屋の温度を合わせても意味ないじゃん
こうして遅まきながら自分の考え違いに気づき始めて暖房のスイッチを入れたところへ、その後のワトスンを具合を心配してくださっていたYOKOさんから電話が。
実はかくかくしかじかでと経緯を話すと、「部屋の暖気を廊下に流して温度差を少なくするって意味に決まってるじゃ〜〜ん!!」と大呆れ。
やっぱりそうか(^^;
「いや、なんかさすがにそうじゃないかな〜と思って暖房入れたんですけど」と、しどろもどろで無意味な言い訳をする私。
24時間もかけて気づくなよ、という話である。
プロフェッショナルな人たちにとって、シロウトとは実に恐ろしいものらしい。
シロウトの恐ろしさ、それは知らないがゆえのアバウトさ。
己の過去を振り返っても、さもありなん。
縁側談議を始めて以来、疾病に関する話も多々書いてきた。そしてそれを読んだプロフェッショナルなYOKOさんは、幾度となく「これ、説明したのと違ってるやん(特に用語)」と歯がゆい思いをしたらしい。
ちなみに書いた本人は「あれ、こんな名前だったっけ? ま、いいか」とアバウトにアップしていた。
そんなわけで今回はついに『器官虚脱』という言葉にチェックが入った。実は最初の段階では『気管支狭窄』やら『器官狭窄』やら『気道狭窄』やらテキトーな語句をアバウトに並べたてていたのだった。
そこがシロウトのいい加減さと言ってしまえばそれまでなのだが、その道のプロとして間違いが気になるYOKOさんの気持ちも、もちろん分かる。
私もプロフェッショナルとまでは到底いかないものの、熱帯魚を主とする魚類を飼育して早十数年。それなりに専門的知識やらアヤシゲな民間療法やらを身につけている。
そんな私に、あるとき慌てたような声で電話が掛かってきた。
お客さんの飼っている金魚の調子が悪いという。それは幼稚園生のお孫さんが夜店で釣ってきたもので、お祖母ちゃん(お客さん)の家に遊びに来るたびに金魚の成長ぶりを楽しみにしているらしい。
「とりあえず塩を入れて様子をみてください」と私。
調子を崩したという金魚そのものを見ていないし、お客さんの曖昧な説明だけでは何がどう悪いのかは到底判断できない。塩は金魚、熱帯魚にかかわらず、魚が調子を崩した時の初期段階でよく使われる治療法だ。
お客さんいわく「近所の金魚屋さんにもそう言われて。でも金魚って海の魚じゃないし、塩なんか入れて大丈夫かしらと思って試しに耳掻き一杯くらい入れてみたんだけど、主人にそんなことして金魚が死んだらどうするんだ!って怒られて。それで心配になって水槽の水を舐めてみたけど、しょっぱくなかったし。それくらいの塩なら大丈夫よね?」
私もこの時、シロウト恐るべしと思った。
熱帯魚よりも丈夫な金魚(高価で飼育が難しいとされている種類は知らない)に塩を用いるとき、その分量はやはりシロウトが聞いたら驚くのだろうか。飼育水槽の大きさにもよるが、だいたいおチョコ一杯くらいとか、ウオジラミなどの寄生虫を駆除する時などは子供用のご飯茶碗に軽く一杯くらいとか、かなりの量を投与する。それでも金魚はピンピンしているものである。
したがって耳掻き一杯くらいなど、もちろん物の数ではない(治療としての効果もナイ)。ましてや夫婦喧嘩のタネになるような重大事でもない。
さらに、ご主人に怒られて心配のあまり飼育水を舐めて確認したお客さんの勇気には脱帽するばかり。この私ですら過去にそんな怖いことをしたことはないし、これからも断固したくない。
もちろん、ちゃんと説明してお客さんの心配を取り除いてさしあげた。だがここが難しいところで、あまり丁寧に細かく説明してしまうと、そこから勝手に間違ったMyバリエーションを作られてしまう。
つまりは「説明したのと違っとるやんけ〜!」だ。
ただ、このお客さんの名誉のためにつけ加えるなら、自分を含めシロウトというものは得てして大なり小なりそんなものであろう。
そんなわけで今回、初のエンディングロール。
医学監修 豪快先生 (笑)