が張って痛くなったり肩凝りがひどくなったりするため、仕事の時以外は極力エアコンに頼らないように我慢している。その殊勝な心掛けが裏目に出た。
テレビをつけ、水戸黄門の再放送など見ながら気を紛らわすが、印籠が出ようが悪代官が懲らしめられようが、部屋は蒸すわ膝と右隣が湯たんぽ状態だわで暑いものは暑い。
そこへホームズがやってきた。「げっ、こいつもかいな」と内心げんなりするも、そこは飼い主の義務。3頭まとめて面倒みてやらねば。。。
ホームズが私の顔と膝に抱きかかえられたブレイズをかわるがわる見比べる。ホームズは自己主張が強いので、こういった場合には「あたしも〜」と無理やりにも私とブレイズの間に身体をねじ込ませてくる。サウナと化した部屋の中、考えただけでも貧血を起こしそうだ。
だが予想に反してホームズはベットの空きを見つけて横になると、そのまま我関せずで寝てしまった。雷がバリバリと凄まじい音をたて、ブレ&ワトコンビが口を閉じる暇もないほどハァハァと息遣いも荒くビビりまくっているさなか、いつもは一番のビビり虫であるホームズだけがなぜか平常心。意外なオチがついた。


雷の一件では思わぬ一面を見せたホームズだったが、実は今とってもコワイものがある。
名付けて「チュッチュクチュ〜」。
この得体の知れない代物が何なのかというと、摺り足ダッシュとでもいおうか。。。
ちょっとした悪戯心からホームズに向かって廊下を摺り足で駆けていき、その時の足音を擬音化して「チュッ、チュ、チュッ、チュチュ〜」と言ったのがそもそもの始まりである。
よほど驚いたらしく、ホームズは「キャーッ!」と悲鳴をあげるなり脱兎のごとく2階に逃げていった。以来、「チュッチュクチュ〜(オリジナルを少々簡略化)」と言うと、目と鼻の穴を真ん丸にしてビビりまくる。
目はともかく、なぜ鼻の穴が真ん丸になったのが分かるかというと、ホームズの鼻の内側には左右に1個ずつ白い班がある。普段は外側からは見えないのだが、驚いたりして鼻腔が膨らむとその白い班が表面に現れ、私に「あ〜あ〜、白っ鼻出ちゃったよ〜」と言わせしめるのだ。
この白班、ホームズの専売特許かと思っていたら、実はどの犬にもあるらしい。
ブレイズの鼻色はホームズほど黒くないので目立たず、しかもそれが安易に表面に現れてくることがなかったので最初は気づかなかったが(ワトスンはブレイズよりもさらに色素の薄い赤鼻なので論外)。
最近ではさらに簡略化が進んで「チュー」だけとなったものの、効果は相変わらず絶大で、「チュー来るよ!」と言うとそれまでしていたことをピタリと止め、聞き分けの良い子に大変身する。
ちなみにワトスンとブレイズに同じことをしても無視されるだけ。

珍しく、犬とは全然関係の無い昔話。
居眠りをしていて、うっかり電車を乗り過ごした。幸いにも一区間だけだったのだが、時刻は深夜。次が最終電車だったので、かなりきわどいところだった。
人気の無い暗い駅で電車を待っていると、ピンクのビニール傘を持ったおじさんが近づいてきて「すいませ〜ん、この傘だれかの忘れ物みたいなんですけど、どうしたらいいですか〜?」と声を掛けられた。どうみても酔っ払い。
変に絡まれても嫌なので最初は聞こえないフリをしていたが、あんまりしつこいので「改札に持って行けばいいんじゃないですか(ホームにある駅員室はすでに無人だった)」とぶっきらぼうに答えてやった。
愛想が良かろうが悪かろうが一応はアドバイスしたというのに、そこは酔っ払い。人の話なんか聞いちゃいない。傘をベンチに立てかけると、私の横に腰をおろした。
そして「かわいそうですね〜、この傘。この傘にも忘れた人の気持ちがこもっているのに」とわけのわからないことを言い出し、ついには「この傘、まるでカナリアみたいですね〜。知ってます?カナリアの歌。う〜た〜をわ〜すれた〜カ〜ナリアは〜」と歌まで歌いだした。
誰かに助けを求めたくとも、ホームは私とオヤジふたりだけの世界。目線を合わさずに、ひたすらフリーズ状態。
そこへ天の助け、電車がやってきた。ホッとしたのも束の間、酔っ払いのオヤジはさっと先に電車に乗り込むと、出入り口側に空席をひとつあけて座り、そこを手で示しながら「どうぞ、どうぞ」と勧めてくる。
何と言ってもこれが最終電車、見送るわけにはいかない。車内も相変わらずふたりだけの世界だったが、歩いて帰るよりはなんぼもマシ。しぶしぶ電車に乗り込む。
ここで(迷惑にも)用意された席を無視して別の席に座ったとしても、オヤジのほうが席を移動してくるだけだろう。もはや逃げ切れないと観念して、オヤジの勧めに従う。どうせ一駅のことだし、オヤジも無害といえば無害だし。
そして次の駅につくまでの数分間、オヤジは延々と下車駅をおりてから自宅までの道順を説明していた。
私が電車をおりる際、「じゃ、気をつけてね〜」と言ってくれたが、人の心配より自分の心配をしろよという気分だった。
まぁ、あれだけ事細かに道順を説明していたのだから、家にたどり着けなかったってこともないと思うけどね。

電車昔話編その2
始発から乗ったのだが、すでに座席は埋まっていた。
と、ひとりの青年が席を詰めて空きをつくってくれた。「ありがとうございます」とお礼を言って青年の隣りに座る。
異変に気づいたのは、ほどなくしてからだった。何やら刺激臭が鼻をつく。
こ、この匂いは……と横目で青年を見ると、いつの間にやら手にはやや膨らみ気味のビニール袋が握られていた。さらにセカンドバッグから、お約束(?)のドリンク剤の小壜まで。中身は言うまでもなくトルエン。
おニイちゃん、すでにラリラリ状態。うわぁ〜と焦りながらも、その隣りでフリーズ状態。
せっかく空けてくれた座席をキャンセルしてご機嫌を損なわれでもしたらと思うと、コワくてへたには動けない。内心で「刺さないで、刺さないで」と念仏のように唱えている。
しかしそんな小心者の私に、さらなる恐怖が待っていた。
いきなりおニイちゃんが「よぉ、よぉ」と声を掛けてきたのだ。幸いにもイヤホンで音楽を聴いていたので、気づかないフリをする。すると聞こえてないと思ったおニイちゃん、今度は「よぉ、よぉ」に加え、腕で小突いて合図を送ってきた。
もはや逃げ切れないと観念して、おニイちゃんのほうを振り向く。すると「どう?」とビニール袋を差し出された。
そんなものを貸してくれなくても、すでに漏れてくる匂いで胸がムカムカしてるっちゅーに!
とは言えず、「いいです」と丁重にご辞退申し上げる。
ようやく電車が走り出し、おニイちゃんは次の駅でおりていった。
このおニイちゃんがナイフを持っていたかどうかは定かではないが、刺されなくて良かったと本気でホッとした。

さらにその3。
山手線に乗車したら、空席がひとつあった。ラッキー♪とすかさず座る。
この時もイヤホンで音楽を聴いていたのだが、ふいに不協和音が混じりだした。音源は辿るまでもなく隣りに座っていた、一見学生風のおニイちゃん。人目もはばからず、ひとりで楽しそうにハミングしている。
そしてまたもや「どうです、僕の歌は。一緒に歌いませんか?」と声を掛けられてしまった。
ここに至って、立ち乗り客もいるのになぜ席がひとつ空いていたのかをようやく理解する。
このおニイちゃんの場合には、さしたる害もなさそうだったのでこちらも強気。何が悲しくて山手線の車内であんたとハモらにゃならん、とばかりに当然のごとく無視。
不自然に空いている席には要注意との教訓だ。

所)にもいないので、今度こそ本当に母の所にいるようだ。
それから膝に抱えたブレイズを左腕で支えてついでに左手で撫で、右手でワトスンの頭から背中にかけて毛をむしりつつ撫でるという脳の老化防止運動のような作業が始まった。
しかしすぐに遠のくと思っていた雷の音が、一向に小さくならない。汗が顔といわず身体といわず噴き出してきた。
実は雨足が強まった時点で窓を締め切ったのに、不覚にもエアコンをつけ忘れたのだ。ビビりまくる2頭に行く手を阻まれて身動きがとれず、リモコンは遥か遠く手が届かない。。。
たしかに冷房の効いた部屋は快適だが、あまり身体を冷やしすぎると首
状態で動けないらしい。引っ張りだして膝に抱きかかえる。これで2頭回収完了。
ホームズは犬用ベッド(ホームズ御用達の避難
まさに泣きそうな顔
嬉しそうにも見えるけど
ワトスンは息遣いも荒い満面の笑みで、部屋と廊下の間をウロウロしだした。所々に点々と涎のあとが円を描いている。
どのみち雷がひどくなれば停電の恐れもあるしとパソコンの電源を落とし、ベッドに移動してワトスンを呼び寄せる。暑い盛り、普段は呼んでも絶対にベッドにはあがってこないワトスンも、この時ばかりは例外。なぜベッドなのかというと、持久戦にもつれ込んだ時に体勢が楽だから。
ワトスンの身体を撫で(ついでに抜け毛をむしり)ながら、ブレイズは母に助けを求めているのだろうかと思いきや、ふと見ればベッドの横のテーブルの下(ブレイズの避難所その1)にいた。
「おいで」との呼びかけにもただ震えているばかり。すでにフリーズ
耳がこれ以上立ちきらないほどピンと垂直に上を向いて立っている。これが完全に雷にビビっている証拠

珍しく、ものすごく激しい雷雨に見舞われた。
ブレイズとワトスンは雷が嫌いだ。それでも遠雷などあまり激しくないものは、最近では慣れて気にしなくなった。
だが今日のは別格だった。時間にすればほんの数分ずつだったが、3度ほど停電したといえばだいたいどの程度のものかお分かりいただけると思う。