帰路についたのは午後4時頃だったろうか。心身ともに疲れ果て、しばらくは帰りの車中でめそめそ鳴いていたホームズだったが、やがてしょんぼりと眠ってしまった。
かくして飼い主にとっては有意義な、ホームズにとっては散々な1日も終わりを告げようとしていた。ショー会場ではシェリーちゃんにちょっとだけ会えたものの、それ
以外の兄姉犬たちは全員欠席だった。そのことも天候の悪さに加えて、ホームズのテンションの低さに拍車をかける要因となったに違いない。
新たにLittle Wonderファミリーとなるバッジオくんには会えたのだが、挨拶代わりに顔をガリガリと齧られてビビり、今ひとつ親睦は深まらなかった(普段は自分が嫌がるブレイズにやっているくせに、やられるとなるとショックらしい。ワガママな奴)。
今回はむしろ置いてきぼりを食わされ、家で居残り組をしていたブレイズのほうがラッキーだったのかもしれない…。
審査の合間にはアジリティーの実演やハンドリングの講習会なども催される
んほどのトイレ内はパンタナルと化していた。足を踏み入れるとシーツに吸収されていた雨水が、グワ〜と湧いて出てくる始末。
他の犬のオシッコの染みこんでいない比較的キレイそうな場所にホームズをおろしてみたものの、うろたえてその場に凍りつく。出るものも引っ込んでしまったという感じ。一刻も早くこの場を立ち去りたいと顔に書いてある。
我慢させるのは可哀相だが、この状況でオシッコをさせるのはもはや不可能。仕方なく再びホームズを抱えあげて会場内へと戻る。

ショー会場にはちゃんと犬用のトイレが設置されていて、観客たちはそこで愛犬に用を足させることになっている(通路にソソウさせっぱなしで知らんふりの、マナー違反の飼い主も時にはいるが)。
しかしそこは野外だった…。
ということで行く前からなんとなく結果は予想できていたが、なにぶんにもホームズは早朝に家を出てから一度もオシッコをしていない。そこでダメもとでトイレに連れ出してみる。
外は横殴りの雨だった…。
しかもサークルの中に予め全面に敷きつめられていたペットシーツが災いし、タタミ3畳ぶ
ごった返す人と犬の波にビビリまくり、「いや〜ん、抱っこして〜」と目が訴えているホームズ
ビッグサイトの館内で犬が自由に出入りできるのはショー会場内だけなので、ホームズは当然のごとく居残り。
キャリーバッグを持ってきていなかったため、ハンドラーさんの作業テーブルの
脚にリードを繋がせていただいた。
そして値段の割には妙に水っぽいカレーを食べてパドックに戻ってみると、繋いでおいた場所にホームズの姿が見当たらない。
あれ? と思う間もなく、「脚が冷たいってさー。ブルブル震えてたぞ〜」とハンドラーさん。よくよく見るとハンドラーさんのご友人の膝の上に、ちゃっかりホームズが丸まって寝ているではないか。なんとそのかたが、留守にしている間ずっとホームズを抱っこして面倒見てくださっていたのだ。食事をしている最中も、少しばかり置き去りにしてきたことが気に掛かっていたので、本当に感謝でした。

たちに対し、リングが良く見えない後列では犬同士のふれあいをきっかけに、初対面の飼い主たちがショーそっちのけで和んでいたりする。
単に隣りに居合わせただけの、それも初対面の人間と、いきなり和やかに言葉を交わす機会が果たして日常生活の中でどれくらいあるだろう。それが犬を通じることにより、ごく自然に会話が始まるのだから不思議だ。

イタグレ審査も終わり、再び売店巡りなどしながらショー会場をぶらついていたが、お昼をだいぶ過ぎた頃にYOKOさんたちと上の階に食事をしに行くことになった。
多摩川にシャケを呼び戻そう運動ではないが、やはり本家本元のイタリアには、是非ともイタグレ愛好家人口が増えて欲しいと切に願う次第だ。
さて審査が始まると、いよいよショードッグとして日々鍛錬を積んできた犬たちが、足取りも優雅にリングの中へ次々と登場してくる。
しかしたとえ何頭出場しようとも、当然のごとく身内の犬が一番素晴らしい。どこの犬舎の応援衆も、皆一様にそう思っていることだろうが。
前列を確保してじっくりとショーを堪能しようという人
手前に立っているグレーの背広の男性が審査員
現在JKCへのイタグレ登録数は、ようやく500頭を越えたあたりらしい(参考までに上位人気種の登録数は何万頭単位)。
いまだマニア色の濃さを拭いきれないでいるイタグレを一度に数十頭も拝める機会などそうはない。
だからイタグレ好きにとってこの光景はかなり目の保養になるし、じゅうぶんに楽しめるはず。
ついでの話だが・・・
その昔小耳に挟んだところによると、本国イタリアでは人気の低迷とともに、保護運動が起こるくらいイタグレの飼育頭数が減少しているらしい。なんともはや寂しいことではないか。
ハンドラーさんに連れられ、リングを一周しているところ
だから背丈に自信の無い人間は早めに行って場所の確保をしないと、終わってみれば前列のオヤジのハゲ具合しか印象に残らないというような悲惨な結果を招きかねない。
しかし出遅れて良いポジションを確保できなかった場合にも、それなりの楽しみ方はある。イタグレ審査に群がる観衆、すなわちそれはイタグレ好きに他ならない。つまり出場犬の待機所のみならず、観客席の至る所からも見物人である飼い主に連れられたイタグレたちが、ラッキョウのような顔をひょこひょこと覗かせているのだ。
どうしているかというと、ずっと抱きかかえたまま。
1店舗あたりのスペースが狭いということは、すなわち通路もこれまた狭い。人ひとりがやっと通れるくらいの幅しかない。ホームズを歩かせていて誰かに踏まれても嫌だし、お店の商品に何かあっても困る。
そしてこれこそが、ブレイズを連れて来なかった最大の理由。2頭のお守りをしていては、売店巡りを楽しめないと知っていたから。許せブレイズ、私はあんたより買い物を選んだ無情な飼い主…。

そうこうしているうちにイタグレ審査の時間もせまり、急いで所定のリングへと向かう。
四角いリングを取り囲むように設けられている観客席はスチール製の縁台を2列並べただけの実にシンプルなもので、それより後方の観衆はすべて立ち見となる。

ウイペット、グレーハウンドのバージョンがちゃんと揃っているのだ。実際に見比べてみたことはないものの、あの単純なる輪郭だけの品にも作り手側のこだわりがあるらしい。
ちなみに私は実物を見ても、今ひとつウイペットとグレーハウンドが見分けられないでいる。見るからに大きさの違うイタグレだけは一目瞭然だが…
ところでお目当ての商品を一度にGETしようとすればかなりの額になるし、来年からの楽しみもなくなってしまう(販売されている品物の内容は毎年そう変わらない)。
そこで財布の中身と相談しつつ、特に目に止まった品物を何点か購入し、残りはまた次回の楽しみにということで。
今回の戦利品をあれこれ吟味している間ホームズは
チャリティーゲームコーナー
昨年チャレンジした。1回300円くらいでスロットに挑戦して景品を当てる。ハズレは無し。収益は災害対策金となるらしい
売店エリア
出張店舗がいくつも並び、1区画あたりのスペースが狭いため店内で身動きのとれなくなることも…
きており、このぶんでは観客の入りも通常よりは少なかろう。見物するほうとしては楽かも。
プログラムによるとイタグレの審査が開始されるのは10時過ぎなので、まずはお楽しみである恒例の売店巡りに。
会場内はおおまかに売店、パドック、リングと3つのエリアに分かれており、売店エリアには餌や犬の日用品、ステッカー、Tシャツ、キーホルダーやアクセサリーなどの小物類と、ありとあらゆる犬関係の商品がずらりと並んでいる。
イタグレはまだ今ひとつ波に乗り切れていないせいか、全商品にバージョンがあるわけではない。それでも我が家のある千葉くんだりではイタグレグッズ自体にお目にかかる機会すらないわけで、ここぞとばかりに売店エリアをグルグルと何周もしながら鵜の目鷹の目で品物を物色する。
その中で「プロフェッショナル恐るべし…」と妙な感心をした商品がある。それはシルエットステッカー。なんとイタグレ、
出場犬たちが待機するパドック
まさに華やかな世界の舞台裏という感じで、所狭しとケージやら道具類が置かれている
うのだ。ただビッグサイトの場合、連れて行かれたほうが「ラッキー♪」と喜ぶかどうかははなはだ疑問。なにしろ人と犬の波と喧騒をかいくぐって行動するのだから。

会場に着くと、朝もまだ早いということでだいぶ空いていた。雨足はいよいよ強さを増して
天候の如何に関わらず、今回連れて行くのはホームズのみと最初から決めていた。イモ洗いのごとく混雑する会場を2頭連れて歩くのは、けっこう難儀だ(1回やって懲りた)。
開始の8時半に間に合うように、7時には千葉を出発する。
春まだ浅いこの時期、ブレイズは朝の散歩を嫌って起きてこないので、ちょうど良いかも。
と思いきや、YOKOさんからの電話の音で布団から這い出してくるブレイズ。しかも張り切っている。この早朝にYOKOさんから電話があるなどと知る由もないのに、動物の勘恐るべし…。
バレてしまっては仕方がない。一緒に行きたがって切ない声で鳴くブレイズを無情にも振り切り、ホームズを小脇に抱えて家を出る。いくら情に訴えられようが、連れていけないものは連れていけない。
べつにホームズを留守番させてブレイズを連れて行くという話も有りなのだが、軽量かつコンパクトなホームズのほうが持ち運びに便利なため、ついブレイズのほうを留守番係にしてしま
あまたの犬種の中でも最大級といわれるアイリッシュ・ウルフハウンド
とにかくデカイが非常におっとりとした大人しい子
(牡と牝は別々に審査、仔犬と成犬も別々)の中で勝ち抜き戦が行われる。そしてブリード審査で勝ち抜いた犬たちは、次に『グループ審査』で競い合う。ここで言う『グループ』とは、それぞれの犬種が所属する部署みたいなもので、たとえば『サイトハウンド(視覚型猟犬)グループ』にはイタリアン・グレーハウンド、グレーハウンド、サルーキ、ボルゾイなどが属している。つまり大きいのも小さいのも、毛の長いのも短いのも全部含めて同グループに属する犬種の中のNO.1を決めるのだ。
さらにグループ審査で勝ち抜いた犬たちが臨むのが『キング・クイーン審査』。全出場犬の中の頂点を極めるチャンピオン決定戦だ。
アジアインターは2日間をかけてこれを行う。しかも午前8時半より開始され、終了は日も暮れる頃。関係者も大変だが、見るほうもかなり気合を要する。したがって、かつて一度も最初から最後まで全部見たことがナイ・・・。

今回のショーではイタグレは初日の出場となった。
誰かさんの日頃の行いが祟ったのか、朝から雨模様で肌寒い。YOKOさんが車で迎えに来てくださったので良かったが、自力だったらまず根性が萎えていただろう。
ひときわ豪華なメインリング。ここでは全出場犬の頂点に立つべくの最終決戦、表彰などが行われる。
なので、両日行かないと全犬種は見られない。さらに、まだ日本では正式にJKCに認定されていない少数派の犬種というものもある。そのためカメラ片手の観客による個人的な撮影会が、通路のあちこちで行われていたりする。
イタグレもどちらかといえば珍しい犬種の部類に入るので、ブレイズやホームズも「写真撮らせてください」としばしば声をかけていただく。親バカ発言だが、飼い主としては注目されるとけっこう嬉しかったりして…

ドッグショーの内容を簡単に説明すると(実は簡単にしか知らない)、まずは『ブリード審査』と呼ばれる同犬種どうし
ナンバーの書かれた看板の場所が各リングになっている
わけても4月の初旬頃に東京ビックサイトで開催されるアジアインターは、その名の通り国内最大級のイベントで、土、日の2日間をかけてJKC(ジャパンケネルクラブ)に登録されている膨大な数の犬種がチャンピオンを競う。
ドッグショーの(素人的な)醍醐味は、普段写真でしか見たことのないような様々な犬を間近で見られることと、売店巡り。ビミョウに本来の意味から外れている。
特に犬に関しては、観客も犬連れで会場に入れるため、審査スケジュールに無い犬種も見ることができる。アジアインターは2日間に分けての開催

ドッグショーというのは年間を通して、日本各地のどこかしらで毎週のように開催されているらしい。