若尾文子 出演作品集
「瘋癲老人日記」 1962年 日
監督/木村恵吾 評価/★★★★ カテゴリー/ 人生
出演/山村聡、若尾文子、東山千栄子、川崎敬三、丹阿弥谷津子
受賞/
谷崎潤一郎原作。

資産家御曹司の許へ嫁いだ元キャバレー・ダンサーが、神経痛で老期を早めた夫の父の寵愛を受け、その美しい姿態を武器に、この老人から次々と資産を搾取してゆくのだが、老人の彼女への愛慕はもはや、医者をして「異常性欲」と呼ばしむるほどに止まることを知らず、遂に自らの墓石に仏跡石に模して刻もうと彼女の足拓を取り、それに包まれて狂気をいよいよ増して行く姿を描く。

山村演じるエロ老人はちょっと真面目過ぎる感があるが、風貌のミスマッチは演技力でカバーし、老いて盲目の恋に身を焦がす狂気の老人像を計算高く演じている。
対する若尾は、資産家宅を食いものにする雌狐ぶりを増村監督伝授のふてぶてしい演技でのびのびと演じ、文句無し。「痴人の愛」同様、ホルモンの虜になってすべてを失って行く男の姿は、哀れでもあり、羨ましくもあり、実に魅力的である。

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「ぼんち」 1960年 日
監督/市川崑 評価/★★★★ カテゴリー/ 人生
出演/市川雷蔵、若尾文子、中村玉緒、草笛光子、北林谷栄、山田五十鈴、船越英二、越路吹雪、中村鴈治郎、京マチ子
受賞/
昭和版「好色一代男」といった趣き。おもろうて、やがて淋しき色男の放蕩人生顛末記である。
全編生っ粋の大坂弁(船場言葉)で、それぞれに味わい深い濃いパーソナリティーを持った人物が交錯する。
主人公は船場の足袋屋の若旦那喜久治。実の母娘である祖母と母親の連合軍が振りまわす「船場のシキタリ」「家の慣わし」に盲従を強いられながらも、うまく泳ぎ渡って放蕩の限りを尽くし、それでも商売を忘れない。親の庇護の下にある「ぼんぼん」から、押しも押されもしない旦那「ぼんち」になるべくして、自らの人生と交わりを持った女たちへの優しさが強すぎたために今一歩なりきれなかった彼の人生を、晩年彼を訪れた客の落語家を相手に女の想い出を昔語りする形式で鮮やかに描き出す。
雷蔵が見事なはまり役。女官雛のようにいつも並んで喜久治に説教する北林谷栄、山田五十鈴演じる母娘は強烈。そして、喜久治に愛された越路吹雪、京マチ子、若尾文子の妾衆が、戦中戦後の困窮下にも関わらず喜久治にあてがわれた山中の寺で共に平和に入浴し、喜久治にもらった大金の使い道を語り合うシーンは、女という生き物のしたたかさを強く印象付ける。

若尾姫は、雷蔵演じる旦那の妾となり、一人の息子を設けた芸子「ぽん太」を健気に、しかも図太く演じている。


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「卍(まんじ)」 1964年 日
監督/増村保造 評価/★★★ カテゴリー/ 恋愛
出演/若尾文子、岸田今日子、川津祐介、船越英二
受賞/
増村保造監督・新藤兼人脚本による谷崎文学の映像化。
同性愛と異性愛の間を奔放に泳ぐ一人の魔性の女のために破滅に追い込まれた一つの夫婦の軌跡を、心中からひとり生き残った妻が作家に顛末を語り聞かせる形式で描き出して行く。
ここでも増村美学は健在で、若尾の美しい首筋から肩へのラインはこれでもかと見せ付けて、相手の目の一点を揺るぎ無く見つめて射抜いてしまうその強い眼差しは空恐ろしく思えるほどに映し出される。
ただ、関西が舞台の本作で関東の役者たちに十分な方言指導もないまま関西弁を使わせたことから、ネイティブにとってはなんとも気持ち悪い響きを持つ作品となってしまった。また、妖艶な若尾がひとり気を吐き、共演陣が川津を除いて些か心もとない。彼女の放つ悪しき光線を演技力、存在感ともに受け止めきれていないのである。


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「迷走地図」 1992年 日
監督/坂崎彰 評価/★★★ カテゴリー/ サスペンス
出演/若尾文子、森本毅郎、世良公則、二谷英明、小柳ルミ子、木内みどり、有森也実
受賞/
TBS月曜ドラマスペシャルとして1992/3/30に放映された単発テレビドラマ。ビデオ化されている。松本清張原作。

「推名裁定」を彷彿とさせる、自民党総裁の座を巡るカネ、女、殺人のドロドロ舞台裏劇。
政治報道番組中で解説代わりに演じられる寸劇、といった感じで、登場人物が類型的すぎてちょっと安っぽい印象を与えるが、まあまあ楽しめる。
若尾文子は、次期総裁候補筆頭である派閥領袖の妻役。彼の秘書で、政界の裏工作を一手に任されながら、その有能さの故に危険視されて海外で忙殺される男をNHKアナ出身の森本が演じるのだが、これが並み居るベテラン俳優を食ってしまうほどの好演。色気のある声と容貌は、若尾との情事にも説得力を持たせる。


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「雪之丞変化」 1963年 日
監督/市川崑 評価/★★★★ カテゴリー/ 時代劇
出演/長谷川一夫、山本富士子、若尾文子、市川雷蔵、勝新太郎、船越英二、中村鴈治郎、市川中車、柳永二郎
受賞/
長谷川一夫三百回記念作品
語り:徳川夢声
長谷川一夫三百回記念作品と銘打たれ、一夫が主役・雪之丞と、物語の語り部的な役回りである義賊・闇太郎の二役を演じる。
大映が誇る歌舞伎界の名優たちが、若尾文子、山本富士子を交えて競演する贅沢極まりない一作。
雪之丞の仇討ちの犠牲になる大奥住まいの娘を演じる若尾文子が可憐。雪之丞に惚れる小粋な女盗賊を演じた山本富士子は、懸命に乱暴な台詞を叩いてがんばるが、ちょっと無理があって可哀想でもある。
雷蔵は、闇太郎の向こうを張った「昼太郎」を名乗る小義賊。闇太郎の人気の陰でなかなかうだつが上がらないジレンマを飄軽に演じてみせて、陰湿極まりない復讐劇に一興を添えていてgood。

父母を自害に追いやり、自身らは江戸で豪商の名をほしいままにのうのうと暮らす三人の者どもに仇を討つため、故郷長崎を離れ、上方で武術と芝居を学び、名代、中村菊之丞一座の看板俳優雪之丞として江戸へ乗り込んだ稀代の女形。まずは大奥に仕える仇の一人の愛娘を自らの虜にし、次いで他の一人に近づいて仲間割れを仕掛け、三人を互いに争そわせて破滅に追いやる。



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「四十八歳の抵抗」 1956年 日
監督/吉村公三郎 評価/★★★★ カテゴリー/ 人生
出演/山村聡、若尾文子、川口浩、雪村いづみ、小野道子、船越英二、杉村春子
受賞/
石川達三の原作を新藤兼人が脚本。
男・四十八歳。恋をするには歳を取りすぎ、恋を捨てるには若すぎる。家では、うるさいだけの女に成り果てた老妻と、意のままにならぬ奔放な娘とに挟まれ、会社では次長という中途半端な役どころ。どこへ行っても気の休まる場所は無く、隠居を待つのみの日々。しかし、慰安旅行の朝、社の若い女性社員と乗り合わせた時から彼に人生最後の波濤が訪れる。彼の行く先々には、課員(船越英二)の若い男が出没し、彼を魅惑の甘美な世界に引き込んでゆく。さながら、彼がファウストで、課員がファウストに囁く霊といった役回り。すっかり枯れ果てていたはずの彼は、課員の執拗な斡旋に次第にその気になった彼は、遂にヌード撮影会に顔を出したり、若い女(雪村)と温泉旅行をするまでに男を復活させる。しかし、時を同じくして、彼の娘(若尾)は年下の恋人(川口)と結婚を期して家出し、次いで彼女の妊娠も明らかになる。我に返った彼の「抵抗」は終わりを迎え、それとともに若い課員=霊も彼の前から姿を消す・・・。
大映影の大スター、船越英二の不気味な存在感が見事。川口浩も、登場シーンは少ないものの、癇に障るヘラヘラした新人類ぶりを醸し出していてgood。女性陣では、「霊」の美人局的役どころである若いホステスを演じた雪村いずみが、新時代の「愛らしさ」や「清純さ」を提示していて、みどころ。

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