若尾文子 出演作品集
「女は二度生れる」 1961年 日
監督/川島雄三 評価/★★★ カテゴリー/ 
出演/若尾文子、藤巻潤、フランキー堺、山村聡、山茶花究、山岡久乃
受賞/
赤線禁止法発動後の東京。ヤミで売春営業を続ける安芸者(こえん)が主人公。
摘発に疲れてキャバレーのホステスに転身、次いで二号さんとなって心を入れ替えて、ダンナの援助によって
なとりをとるまでに芸の鍛錬に身を入れるも、その頼りのダンナの死によって結局また、売春芸者へと舞い戻る。
でも、割り切ったつもりでも心のどこかがもととは違っていて、心の拠り所を求めて彼女は係累を訪ねて長野へと旅立つ。

これといって見所は無いが、丁寧に製作されていて楽しめる。
エピソードには当時の世相が色濃く影を落としていて、今見ると歴史的な興味も満たしてくれる。社会派お色気ドラマ、といった感じ。

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「からっ風野郎」 1960年 日
監督/増村保造 評価/★★★ カテゴリー/ 人生
出演/三島由紀夫、若尾文子、川崎敬三、船越英二、志村喬、根上淳、神山繁
受賞/
三島由紀夫の主演+彼の作詞・歌唱による主題歌と言う異色の愚連隊映画。
組長の息子として生まれ、暴力の世界に生きることを余儀なくさせられた男朝比奈武夫(三島)と、その組長の寵愛を受けて法学士にまでさせてもらった彼の親友愛川(船越)、そして、武夫が生まれて初めて心底愛した女芳江(若尾)が繰り広げる、未来のない青春の軌跡。
敵方の組長を刺傷させて罪での刑期を終えた武夫は、否応なく組間抗争の只中へと投げ出される。彼を堅気にしようとする愛川の努力も空しく、臆病さを押し隠すように荒ぶる武夫は、ただひとり敵に戦いを挑んで行く。その中で出会った堅気の女芳江は、何の見かえりもなく彼を愛し、武夫はその愛の深さと強さの前にひれ伏す。そして、武夫が裏社会を捨て、彼女と生きる未来を思い描いたそのとき、悲しい運命が彼を葬ってしまう・・・。

まあ、ストーリーはよくあるチンピラ純愛ものと言ってしまえばそれまでだが、自身体を鍛え、右翼活動に強く傾倒しつつあった三島が、門外漢とはつゆ思えない迫真の演技でこの悲しい主人公を生き生きと演じぬいているのには驚かされる。魔性の女優若尾やベテラン船越ら並み居る主役級の助演陣に一歩も引けを取っていないのだ。そう言う意味で、鑑賞して見て意外な収穫のあった作品だ。

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「雁の寺」 1962年 日
監督/川島雄三 評価/★★★★ カテゴリー/ 人生
出演/若尾文子、木村功、高見国一、三島雅夫、山茶花究、中村鴈治郎、菅井きん、西村晃
受賞/
水上勉の原作を見事に映像化。
由緒ある禅寺に住み込んで雁の屏風絵・襖絵の製作に没頭し、業半ばにして死んだ画家の囲われの身で、後にそのまま寺の住職の妾の納まった女(若尾)。金は渋るがそれなりの寵愛を受けて不自由ない彼女の唯一の気がかりは、陰気な寺の住み込み小僧。彼女は毎日住職の厳しい仕打ちを受ける彼の貧しい親元や捨て子であった生い立ちを聞くうちに同情余って彼と関係してしまう。戒律と欲望の狭間、罪の意識と矛盾に満ちた現世に混乱した小僧はある夜、ほろ酔いで帰宅した住職を撲殺する。
自ら寺に生まれた水上の描く腐敗に満ちた仏教界の現実とそこに芽生える怨念のどろどろした世界は絶品だ。その原作が本作では生きたイメージとなって見事にフィルムに焼き付けられている。
檀家の通夜のあと、一人経を唱えつつ寺内を徘徊する小僧。死者の棺を開蓋し、住職の亡骸を運び入れ、再び閉蓋する。その唱経の声と、釘を抜き差しする金属音とが観終った後も不気味に脳裏に鳴り続ける。


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「祇園囃子」 1953年 日
監督/溝口健二 評価/★★★★★ カテゴリー/ 人生
出演/木暮実千代、若尾文子、河津清三郎、進藤英太郎、浪花千栄子、菅井一郎、小柴幹治
受賞/
母の死を機に義理の姉美代春 (小暮)を頼って舞妓の修行を始めた少女栄子(若尾)。資産のない舞妓や芸妓は高級娼婦としての生計を余儀なくされる花街の厳しい現実に曝されながらも、現代っ子らしくはっきりとした意思を持ち凛とした所作で独自の生き方を模索する美しい栄子と、彼女を汚れた現実から守ろうとする中で、老いた自分の存在意義と生き甲斐を見出して行く美代春の二人三脚の日々を鮮やかに描き出した、秀作中の秀作。あどけない若尾文子はもう、狂おしいほどに愛らしい。頼るものもなく置きやの門を叩く不安げな表情、人権の考え方について師匠に詰め寄る利発で現代的な姿、晴れて舞妓となった日のあでやかな出で立ち、そして、幼いなりに得意の才気を発揮してダンナ衆を翻弄して見せる奔放さの片鱗・・・。場面毎にくるくると変貌して行く彼女をただ追って行くだけでも、心が浮き立ってくる。

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「傷だらけの山河」 1964年 日
監督/山本薩夫 評価/★★★★ カテゴリー/ 人生
出演/山村聡、若尾文子、高橋幸治、川崎敬三、丹阿弥谷津子、高松英郎、船越英二、東野英次郎、村瀬幸子、北原義郎、穂高のり子
受賞/
脚本は新藤兼人。石川達三の小説の映画化。
卓越した事業家。彼の展開する公益事業という大義名分の影で、弱小庶民や声なき家族たちが犠牲となり、人生を破壊され、命さえ絶って行く矛盾。そして事業だけが発展・成功を続け、彼の名声は空しく高まって行く。
一人の事業家の夜と昼の姿を通じて、個人の幸福より公衆の利益を優先させた国家基盤整備を是とする世相に鋭くメスを入れる社会派大作。
モデルは小田急電鉄を思わせる。
若尾は、売れない画家の恋人のフランス留学援助と引き換えにこの事業化と妾契約を交した勝気な女を存在感たっぷりに演じる。
男尊女卑と思われるかも知れないが、男性社会では美貌は女の最大の武器だ。女性が男性と対等に張り合うには様々な障害があるが、女にしかないこの武器をひとたびかざせば、人生のステージを如何様にでもジャンプアップさせられる。その末路が男の欲望の犠牲者となるかどうかは、彼女の利口さにかかっている。若尾演じる女は勝者だ。彼女の後釜に座った若い芸者も、恐らく勝者だろう。逆に、妾宅に安住して年老い、子供までつくって抜き差しならなくなった二人の妾たちは、古典的な敗者なのだろう。
現代のジンギスカンとも呼べるこの老いてますます精力的な実業家のあくなき発展欲の行路をぼんやり眺めながら、ふとそういうことを思った。

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「好色一代男」 1961年 日
監督/増村保造 評価/★★ カテゴリー/ 恋愛
出演/市川雷蔵、若尾文子、中村玉緒、船越英二、中村鴈治郎、水谷良重
受賞/
井原西鶴の名戯曲を、雷蔵&文子&玉緒の豪華キャストで名匠増村監督が映画化。
女という生き物をこよなく愛し、女の幸せの為に尽くし、でも意外に一人の女に執着が無い不思議な放蕩青年世之助を若い雷蔵が疾走感たっぷりに演じる。
台本・役者・スタッフともにこの上ない取り合わせにも関わらず、いささか粗製に過ぎる印象が否めない。
多過ぎるエピソード、主役陣の平板な演技もさることながら、時間がなかったのか端役陣の演技指導がなっておらず、まるで学芸会のよう。物語上町人とのカラミが多く、ボディーブローのようにこうしたほころびが蓄積して映画の印象を貶めている。
若尾文子は世之助がなんと一千両で身請けするプライド高き遊女夕霧太夫を優雅に演じている。
世之助の父親であるしぶちんな商人を演じた鴈治郎が実にいい味を出していてgood。特に、死ぬ間際に勘当の身ながらちゃっかりと帰って来た世之助とのやりとりが狸と狐の化かし合いのようで面白い。

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「最高殊勲夫人」 1959年 日
監督/増村保造 評価/★★★★ カテゴリー/ 恋愛
出演/若尾文子、川口浩、丹阿弥谷津子、船越英二、東山千栄子
受賞/
東京国際映画祭協賛企画「増村保造レトロスペクティブ」によるリバイバル上映での鑑賞。

娘二人が次々と社長の兄弟と玉の輿結婚し、衆目は三女と三男の動向へ。夫が社長を継いで得意満面で「ゴリ押し社交」を繰り広げる長女のやりかたと、自分たちをひっつけようとする魂胆に反発した二人は、結託して「結婚しない」ことを密約し、協力し合って戦線を張るのだが、それが逆に二人の距離を近づけてゆく。そして遂に、二人は愛を告白し合い、結婚してしまう!

「青空娘」の流れを引き継ぐ増村監督快心のラブコメディ。持ち前のスピーディな演出はコメディにピッタリとはまる。本当ならこんなピッチで会話をすることなどあり得ない猛スピードの台詞回しなのだが、劇中ではちっとも不自然に思えない。

「中華思想」で大立ち回りを見せる長女を演じた丹阿弥谷津子と、彼女に頭が上がらない夫を演じる船越のちろ取り合わせがジャストフィットで素晴らしい。

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「しとやかな獣」 1962年 日
監督/川島雄三 評価/★★ カテゴリー/ 家族
出演/若尾文子、川畑愛光、伊藤雄之助、山岡久乃、浜田ゆう子、山茶花究、小沢昭一、高松英郎、船越英二、ミヤコ蝶々
受賞/
新藤兼人の原作・脚本。
娘を妾に出し、息子には勤め先で横領をさせて、それらのあがりで両親が暮らすというトンデモナイ恥知らず一家と、その息子とグルを装って彼からさらに金を巻き上げて、おまけに社長や税務署役人までその美貌と体で丸め込んで財を成したコブ付きの魔性の女が繰り広げる化かし合いと死屍累々。
今で言うと、火曜サスペンス劇場、といった感じのお茶の間テレビドラマ風作品である。
浦山桐郎風の、長い階段の図を用いた内省シーンが唯一、映画的である。
高層アパート、ジャズ全盛、プレスリー、来日外タレブーム、テレビ・冷蔵庫といった三種の神器の一角。ラジオからはしかし今だ謡が響く。当時の世相を色濃く反映したディテールは、記録映像としては貴重であり興味深い。
ストーリー的には、ただただこの一家の常識はずれた暮らしぶりとあまりの無頓着ぶりに唖然。常にタカリ先を探すことにか頭にない元大佐という主人と、そんな彼に古風な従順と敬意を示す妻の姿には、吹き出しそうな滑稽さが溢れる。

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「女経 第一章 耳を噛みたがる女」 1960年 日
監督/増村保造 評価/★★★ カテゴリー/ 人生
出演/若尾文子
受賞/
増村保造、市川崑、吉村公三郎の三監督による様々な女の生きざまを描いたオムニバスの第一作。

主人公は、船上生活から足を洗うために次々と男を手玉にとって金を稼ぎつづけるキャバレーの売れっ子ホステス(若尾)。
さんざん貢がせた挙げ句、身体を任せることなくスルリと逃げる。悪評が立つほど貪欲に男を食いものにし続ける彼女には、船上生活者であるために結婚直前にフィアンセに逃げられたという苦い想い出が。そして今、唯一彼女が心底惚れた大企業御曹司に、自ら進んで純情を捧げた彼女は、直後に彼がその日政略結婚することを聞かされる。さすがにふさぎ込む彼女だが、式の朝彼女の想いに打たれて彼女の許を訪れた御曹司を、金と引き換えに追い払う。
こういう、魔性と純情が同居した女を演じさせると、若尾は最高だ。

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「処刑の部屋」 1956年 日
監督/市川崑 評価/★★★ カテゴリー/ 青春
出演/川口浩、若尾文子、宮口精二、岸輝子、川崎敬三、梅若正義
受賞/
いまや、東京都知事となった石原慎太郎の原作を市川崑が映画化。助監督には増村保造が着いている。

ダンパ(ダンス・パーティー)に明け暮れ、バンカラを気取りながらも就職を機に簡単に精神を売り渡してしまう、反骨と妥協の同居した学生たちの実際と、そんな風潮にひとり竿刺そうとした青年の末路を描く社会派作。

青年の矛先は家庭内でも大学でも常に男子に向けられており、対して女性は愚鈍で得体の知れぬ、扱いにくい存在として描かれている。そして主人公はその得体の知れぬ者によって「処刑」を受ける。得体に知れぬもの=神に通じる。男子学生のどんな殴打よりも、彼女の一撃は彼の肉体と精神に大きなダメージを与えたのだ。

日本版「勝手にしやがれ」(というか、こちらの方が古いので「元祖・勝手にしやがれ」というべきか)とも言うべき、あらゆる統制を失い始めた戦後社会を舞台にした青春群像である。

川口浩が石原裕次郎ばりの「青い」演技で、大勢に流される周囲をよそに一人突っ張り、なにかを掴み取ろうともがく大学生・島田克巳を熱演する。若尾は、大晦日に克巳らにナンパされ、一服盛られて手篭めにされるゼミの同級生・青地顕子を演じる。

増村保造監督作品における若尾文子を見馴れていると、本作のように、美貌=お高くとまった女子学生=恋愛=裏切られて逆上、といった「普通の女」の行動様式を演じる彼女の姿には戸惑いを覚えてしまう。
本作は、原作の社会性によって評価はされるが、映画としては平凡な出来映えであるし、顕子役は若尾で無くても、近づき難い美女であれば誰が演じても成立したであろう。

川口演じる青年を中心に男子学生に重点を置いて描いた分、女性の描き込みは非常に淡白で、ためにラストシーンでの行動に至る顕子の精神の流れが見えず、非常に唐突な印象を受けてしまう。

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