1.サンリオSF文庫って?


 

 1978年7月株式会社サンリオから、当時のSFブームにのって創刊された文庫で1987年の終刊まで197冊発行されました。本格的な翻訳SFを定着させるべく様々な国のSFを精力的に紹介していましたが、今から考えても”マニアック”な品揃えのため一般的な支持は得られず、約10年間で新刊書店からは消えてしまいました。ところが絶版後古書店で扱われるようになってから文庫本としては異例の高値で取り引きされ、数千円からものによっては万単位の値が付いたといわれています。現在値段としては高くても数千円程度と落ち着いてきてはいますが、特定の作品はなかなか出回らなくなっており、全冊集めるのは極めて困難な状況となっています。






2.どんな文庫なの?



a. とにかく極めてマニアック

 SFというもともとマニアックな分野のなかで、先行するハヤカワSF文庫、創元推理文庫との差別化を図ろうとしたためか、知名度の低い作家や作品を多く取り上げており、一層一般読者には受け入れがたいという印象を与えてしまったようです。結果的には名作や愚作の混在する玉石混交と評されますが、いまだにオールタイムベストに挙げられる傑作も確実に存在しています。



b. ワールドワイドな選出

 紹介されることの少ない非英語圏の作品を取り上げてはいるのですが、今回数えてみますと全部で16作品と決して多くはありません。そのうち9つがフランスの作品なのですが、他のSF文庫であまりみかけない現代フランスの作品がこれだけ混在しているのはひとつの特徴といえるでしょう。他の非英語圏作品の内訳はポーランドのレムが3作品で、あとはソ連(当時)、キューバ、中国、スウェーデンが各1作品づつと一応ワールドワイドといっていいかと思われます。残りの約180冊は英米の作品ですが、そのうち約70冊は英国の作品で、この英国作品の多さがサンリオSF文庫独特の雰囲気を作り出していました。



c. ディック作品が大量

 フィリップ・K・ディックの作品は全部で21冊と群を抜いて多く刊行されています。とくにサンリオSF文庫全体の年間の刊行作品が少なくなりはじめた81年あたりから反比例して増えており、年2〜4冊のペースでコンスタントに出版されています。映画「ブレードランナー」で火がついたディックブームを定着させた功績は大きいと思いますが、そのため後期の刊行ラインナップはディックが中心とならざるを得なくなっており、前期でみられた多様性が薄れてしまったのは残念です。



d. その他の特徴

 ミステリやファンタジーなどのSFというには無理のある作品が多数混在していたというのもひとつの特徴です。よく囁かれた悪評としては、訳が悪くて読みにくいとか、値段が高いとか、近刊予定の作品がいつまでたっても刊行されない等々。確かに題名だけは挙げられていたけれど、とうとう刊行されなかった作品は大量に存在しています。ちなみに当HPの表題「銀の知識人たち」とはフリッツ・ライバーの長編The Silver Eggheadsの刊行予定題名から借用しています。この本はいまだにどこからも翻訳されていないと思いますが、いったいどんなストーリーなんでしょうかね。


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