三十六計  瞞天過海(第1計)
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●表題
 三十六計の第一計は「瞞天過海(まんていかかい)」。 天を瞞(あざむ)いて、海を過(わた)ると読みます。
●内容
 備周則意怠、常見則不疑、陰在陽之内、不在陽之対。太陽、太陰。
●意味
 備(そな)えが、周(あまね)く行き届いると思えば警戒心が薄くなる。 日常の事と見れば疑いを抱かなくなるものだ。陰とは陽の内にあるもので、 陰は陽と対立するものではない。太陽は太陰なのである。

解説
●狼(おおかみ)少年
 お話が逆で失敗したケース。羊飼いの少年は「狼が来た」と嘘(うそ)をつき、 皆が慌てて駆けつけたのを見て、おかしくて何度も「狼が来た」と嘘をつきました。

 あるとき本当に狼が来たので、「狼が来た」と叫んだのですが、どうせまた嘘だろうと 誰も来なかったので羊は皆狼に食べられてしまったお話があります。

 少年の嘘が日常化していたので、誰も警戒心を抱かなくなってしまったわけですね。

●大史慈
 大史慈は中国の三国時代「呉の孫権」に仕えていた武将で、その若い頃のお話です。

 北海の「孔融」が黄巾(こうきん)と言う賊に城を包囲されてしまった時でした。 孔融は日頃から大史慈の老母に栗や反物を贈っていたので、老母から孔融様を助けに行きなさいと言われ、 大史慈は恩義から賊の囲みを抜け孔融の恩返しに行きました。

 孔融は城の兵ではもう持たないが援軍を呼びに行くにも、相手が余りに多いので 囲みを突破できるものがいないのだと話をしました。

 大史慈は次の日。腹ごしらえをして夜明けを待ちました。 夜が明けてから騎士二人に弓の的(まと)を持たせて、城門からでました。黄巾は慌(あわ)てて 脱出を阻止(そし)しようとしました。大史慈は城門から出て直ぐに壕(ほり)に入って行きました。 そこに弓の的を立たせて、のんびり弓の稽古を始めました。 持っていった矢を射尽くすと、そのまま城の中に戻りました。

 次の朝大史慈はまた弓の稽古を始めました。黄巾賊は警戒する者もいれば、ニヤニヤ笑って見ている 者もいます。そうして大史慈は持っていった矢を射尽くすと、昨日と同じように そのまま城の中に戻りました。

 さて三日目。また騎士二人に弓の的(まと)を持たせて、城門からでました。今度は黄巾賊は 寝転がったままで、起きて警戒しようとするものはいなくなりました。大史慈はこれを確認するや 馬に鞭(むち)をくれ、一気に包囲を突破しました。

 こうして大史慈は平原にいる「劉備」に助けを求め、黄巾賊は援軍に駆けつけた劉備軍に 蹴散(けち)らされました。

 「いつもの弓の稽古」と思わせたのが大史慈のねらい目だったわけですね。


蛇足
●三国時代
 さて三国時代。高校の教科書にはチビットしか出てきませんが、江戸時代に三国志は ベストセラーでロングセラーだった本。群雄が割拠し、あい争う時代。日本で言えば天下統一した 秀吉君ですらまだ小国の一主ぐらいなものですから規模も壮大です。

 後漢の国が衰退し、各地の諸候が覇権を争う時代で、戦いの中で次第に諸候は 淘汰され「魏・呉・蜀」の3つの国になった時代です。今回の大史慈のお話はまだ群雄が割拠している 時です。大史慈はやがて呉の武将となり、孔融は魏に属することになり、劉備は三国の1つ 「蜀」の国の君主となります。


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