月遅れの七夕
七夕は7/7日それとも8/7日? ▲天文民俗学目次へ■ホームページヘ

●改暦
 七夕の行われる日時は7月7日です。但しこの7月7日の日付は、現在の太陽暦ではなくて 太陰太陽暦(旧暦)と言いますお月様の運行を基にする暦の上での日にちで、 おおよそ江戸時代までのお話でした。  明治になり太陰太陽暦からグレゴリオ暦へと改暦されまして、 太陽の運行を基準とする太陽暦を使うようになり、旧暦を使う行事が混乱を始めました。

 太陽暦は太陽の運行を基準とするので、お月様を基準とする太陰太陽暦と比べて 1〜2ヶ月早く日付が来てしまうのです。 江戸時代までに行われてきた行事を新暦(グレゴリオ太陽暦)で行いますと、 なにより季節感が合わないのですね。

 例えば旧暦七夕(7/7)を単純に、現行太陽暦の7月7日としてしまいますと、 星の行事を梅雨の最中に行う事になってしまいます。 これでは雨ばかりで星など見えないですね。

●七夕はいつか
 そこで民間では新暦7/7日を単純に1月遅れさせて(月遅れ)れという方法を採ったのです。 七夕は一月遅らせて、太陽暦の8月7日に行うようになりました。

 この方法ですと季節感は旧暦と似かよりますが、月齢が合わなくなります。 旧暦ではお月様の運行に合わせて暦を作っていますので、 7日と言えば月齢がほぼ7(上弦の月)なのですね。

 太陽暦ですと月齢が幾つに成るかわからないのです。7月7日は満月の月明かりで 星が大変見にくくなる日にちにあたってしまう時もあります。


●都会と田舎(お盆)
 七夕はお盆前の先祖を迎えるための禊(みそぎ)の意味もあります。 従って七夕はお盆の日付に連動する事が多いようです。 お盆は旧暦の7月15日に行われておりました。

 現在都会ではお盆を新暦の7月15日にしますが、 田舎では月遅れの8月15日にしているのが一般的ですね。そこで 例えば横浜湘南では7月7日を七夕としますが、仙台では8月7日を七夕としますね。

 お盆の月遅れは夏期休暇の習慣にも合い、8月15日で先祖も帰ってくるときなので、 帰省に丁度よく利用されますから、 七夕はお盆前の禊であるので連動して8月7日の月遅れになったという考え方もあるでしょう。

●なぜ旧暦を使わないのか
 このように統一性がないならばいつまでも旧暦を使えば良さそうなものですが、 旧暦の計算は実に難しく観測しては修正を繰り返さないとならないのですね。 つまり通常の方では計算する事は全く不可能なのです。

 また世界の殆どの国はグレゴリオ太陽暦を採用しています。旧暦を使うとなると いつも新暦と旧暦の2つの暦を同時に使うことになり大変不便です。

 そこで太陰太陽暦は太陽暦に比べ平均1ヶ月ほど遅れますので 「月遅れ(8/7)」という方法を採ったのですね。

●月遅れの謎
 七夕はキュウリやナスや麦の収穫を祝う性格がありますので、 新暦ですとまだなり始めの事なんですね。 七夕の行事はある意味収穫祭なので季節が合わないのです。

 川にものを流す「鐘楼流し」や「ねぶた祭り」も七夕の変形なのですが、 新暦の7月7日に水に入るよりも8月7日に水に入った方が良いですね。これも季節ですね。

 もう1つは、太陽暦への改暦が強引であったため、 それまで太陰太陽暦で行っていた行事をどうするか討議しなかったので、 その日取りの扱いが日本中バラバラになってしまったのです。

 権力に近い都会は新暦で行事を、地方は昔ながらの太陰太陽暦を使った事が 今に尾を引いています。 しかし旧暦は素人には計算できない(確か65000年ぐらいで周期を採ります)ので、 旧暦七夕を平均すると大体、 太陽暦の月遅れ8月7日が丁度好いのですね。何より7月を8月にずらすだけなので、 分かりやすいからなのですね。

●3種の日にち
 従って七夕は「新暦7/7」「新暦8/7」「旧暦7/7」の3種の日にちがあります。 地方により異なりますのでご注意下さい。因みに公的にはグレゴリオ暦しか認められていないので、 七夕はいつですかと単純に聞かれたら「新暦7/7」と答えるしかないのでしょうね(^^;

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