ミューズのお話

星のお話ではないですが2度ほど質問があった項目です。

◆ミューズってなに?
●ミューズってなに?
 ミューズは古代ギリシア・ローマの文芸・音楽・天文などの知的な活動を司る9人の女神のことを いいます。

 ミューズの名前のもとはムーサ(Musa単数形)と言い、複数形はムーサイ(Musai)といいます。

◆ムーサの誕生
●ムーサの誕生
 大神ゼウスは女神ムネモシュネ(記憶)との婚礼のとき、 集まった神々に向かい「まだ足りないものはないか」と訊ねたのだそうです。 神々は「讃える女達!」と答えました。

 ゼウスは女神ムネモシュネと九夜の間一緒に過ごし、 1年後女神ムネモシュネはオリュムポス山の頂上付近で9人の同じ気性の娘ムーサイを産みました。

 彼女達の生まれたオリュムポスの高嶺の舞踏場を館として、 ムーサイはカリスやエロスの分身ヒメロスと住んだと言われております。  9人のムーサは不死の神々を称える讃歌を歌いながらオリュムポスに赴き、 9人のムーサがオリュムポスの頂に着くと雲に包まれて、 彼女たちが歌う美しい歌声は夜しか聞こえなくなったと言います。

●ピッポクレネの泉
ムーサイが歌うと天や星など万物が立ち止まったといいます。

 ヘリコン山でさえうっとりとして、天まで大きくなってしまったので、 海神ポセイドンが天馬ペガソスにヘリコン山を蹴飛ばさせ、 その蹴飛ばした跡にピッポクレネ(馬の泉)ができたといわれております。

◆音楽競技
●タミュリスとの歌合戦
 タミュリスはヘラクレスに竪琴を教えたリノスに師事した伝説的な音楽家で、 ギリシアの後世の音楽家は音楽の技法などは、 すべてタミュリスが行ったのだと言うほどの竪琴と歌の名手であったそうです。

 タミュリスはムーサイに「私が勝利したらムーサ達9人全てと床を伴にする」ことを条件に 音楽の競技を持ち掛けました。

 しかしタミュリスは音楽の競技に破れて、ムーサイに「視力」と「音楽の技」を 奪われてしまいました。

 競技に破れたタミュリスは竪琴をペレポネソス半島にあるバリュラー河に投げ捨てたといいます。 バリュラー(Balyra)とはBal(なげる)+lyra(リラ:竪琴)の組み合わせであるとする 河の語源の解釈となっております。

●セイレーンたち
 セイレーンは上半身が女で下半身が鳥の姿をしている海の怪物であります。 人を魅了する歌い手で、カリュブディスの近くの住んでいて、近くを通る船に向かい歌いかけて、 船乗りを誘惑して、セイレーンたちのいる島に上陸させ命を奪ったと言われております。

 このセイレーンたちはムーサイに歌合戦を元持ち込み負けたといわれています。 またアルゴ船を誘惑しようとして失敗し海に身を投げたともいわれています。 誘惑するお話に付きましては「アルゴ座かこと座」あたりに予定しています。

このときたまたま出かけていていなかった1人が、 今度はオデッセウス(ユリシーズ)を誘惑しようとしたようですね。

●ムーサの審判
 ローマでマルシュアースの河神(オーボエの音楽の発明者)といわれ、 サテュロス市の守護神の、ギリシア神話でのお話です。

 女神アテナはオーボエの笛を発明したのですが、 オーボエを吹くと「ほほ」が変に膨れて顔が醜くなるので、作ったオーボエを捨ててしまいました。

 マルシュアースはアテナの捨てた笛を拾って練習し、実に上手く吹けるようになったのです。 図に乗ったマルシュアースは「勝者は敗者を自由にする事が出来る」という条件で、 アポロンに音楽の競技を申し込んだのです。

 アポロンはムーサイに審判を頼みキタラ(大型の竪琴)を演奏しました。 この競技の審判となったムーサイはアポロンに勝ちを告げました。

 負けたマルシュアースは木に縛られ生皮を剥がれたとも、スキュティア人に刻ませたといい、 その時の血、または彼の死を悲しむものの涙からマルシュアースの河が流れ出したといいます。

●にせムーサイ
 ムーサイには全然別のムーサイと全く同じ名前の9人の姉妹がいたと言うのです。 そしてこの別のムーサイが本当のムーサイであったそうなのです。

 にせムーサイが歌うとあたりが暗くなってしまい誰も歌に耳を傾けないといいます。 本物のムーサイが歌うと天や星など万物が立ち止まったといいます。  しかしどうした事か、にせムーサイは本当のムーサイと歌合戦して勝ち、 破れた本物のムーサイは鳥の姿に変えられてしまったといいます。 (このお話は随分と特殊な所伝であるようです。D)

◆ムーサの役割
●ムーサの役割
.ローマ表記名前役割持ち物
1Kaliope(ia)カリオペー 叙事詩書板と鉄筆
2Kleioクレイオ 歴史巻物或いは巻物入れ
3Euterpeエウテルペー 抒情詩
4Thaleiaタレイア 喜劇喜劇のお面・つたの冠・羊飼いの杖
5Melpomeneメルポメーネ 悲劇悲劇のお面と靴・葡萄の冠
6Tersichoraテルプシコラー 合唱隊・抒情詩・踊り竪琴
7Eratoエラトー 独吟抒情詩竪琴
8Ply(hy)mniaポリュームニア 讃歌
9Uraniaウーラニアー 天文
●各ムーサのお話
  1. カリオペー
     カリオペーは、琴座のオルペウス・アルゴ船を誘惑しようとしたセイレーン達・ ヘラクレスに竪琴を教えたリノス・レーソスの母であるといわれております。

     アフロディーテーとペルセポネとがアドーニスを争ったときに、 カリオペーが仲裁に入ったといいます。

  2. クレイオ
    お話は見つかりませんでした。
  3. エウテルペー
    お話は見つかりませんでした。
  4. タレイア
     アポロンとの間にコリュバース達を生んで、更にはグプニスの愛人となったと言われております。
  5. メルポメーネ
    お話は見つかりませんでした。
  6. テルプシコラー
     テルプシコラーは一説には、セイレーン達・リノス・レーソスの母であると言われております。
  7. エラトー
    お話は見つかりませんでした。
  8. ポリュームニア
     竪琴と農業の発明者とも言われ、エロス・オルペウス・トリプトレモス・ケレオス・ケイマロオスの 母であるとされることもあります。
  9. ウーラニアー
    ウーラニアーは1.リノスとヒュメナイオスの母。2.アフロディーテーの呼称の1つ。 3.オーケアノスの一人でペルセフォネの従者であると言われます。
◆ムーサ歴史
●最初は3人
 ムーサイは当初アポロン神殿にあるデルポイやシキュオーンでは3人。 レスホスでは7人とされていたようでありますが、ヘーシオドスが彼女らを9人としまして、 この9人が正規の数になったようであります。

 またムーサイはハルモニアーの子供である・ウラーノスとガイアの娘であるという説もあるようです。

●アリストテレス
 アリストテレスの学校にムーサイを祭る宗教団体があったことに因んで、 アレクサンドリアで教育・研究機関を表す言葉としてムーセイオン(ムーサの神殿) という名がつけられたといいます。

参考引用文献

  1. ギリシア・ローマ神話辞典・高津春繁著・角川書店
  2. ギリシャ神話小辞典・B.エヴスリン著・教養文庫
  3. ギリシャ神話・アポロードロス著・岩波文庫(紀元1−2世紀)
  4. ギリシア神話−神々の時代○カール・ケレーニイ著○中公文庫
  5. 仕事と日○ヘシオドス著○岩波文庫
  6. 神統記○ヘーシオドス著○岩波文庫
  7. ギリシア神話−英雄の時代○カール・ケレーニイ著○中公文庫

細かい説明を抜きにしてしまいましたので、のちに付け加えようと。。。は、思っています(^^;
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