イソップ寓話

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イソップ

 イソップはギリシア語でアイソポスと言います。 歴史としてアイソポスと言う名が出てくるのは、ヘロドトスという歴史家の書物に 紀元前6世紀頃の人物として書かれています。

 伝承によりますとアイソポスは寓話を作った最初の人と言う事になっておりますが、 寓話は民衆の中で育つ「道徳」「処世術」と言ったものでありますので、 それまでにあった話をアイソポスの才知により集められまとめられたもの、或いは、 出所が分からない話を寓話を作った最初の人と言われるアイソポスものもであると 権威付けした結果と言ったものなのでありましょう。

 古代ギリシアにおいては少年教育で作文の練習課題として使われたそうであります。


内容

●神話に関わるもの
 イソップ寓話はお話を日本流に、或いは子供に分かりやすくなどの理由で書き換えられている ものが殆どです。ここでは皆さんがご存知であろう寓話からギリシアの神々が関わるものを 少しだけ抜き出してみました。
●ふれると何でも金になるお話
 業突く張りの王様は願い事を言いなさいと言われて 「触れるものは何でも金になるようにして下さい」と頼みます。 その願いが聞きいれられ、触れるものは何でも金になりましたが、 その願いは大変な事であったのです。

 王様は娘に触ったとたん娘は金に変わってしまいました。 食べ物を食べようとすると食べ物も金に変わってしまい、せめて水でもと思いましたが、 喉に入ってから水は金に変わり窒息してしまうと思い、 触るものが何でも金になる願いを取り消して欲しいと嘆願するお話です。

 このお話はミダス王のお話なのですが、ミダス王は太陽神アポロンが太陽を牽いているしか 能がなく、黄金の光を振り撒く浪費家だ。と悪口を言ったのが事の始まりでした。 その悪口を聞いたアポロンは「では何でも望む事を言いなさい。そうなるようにしてあげよう」と 言うのですね。ミダス王に自分の力はそれだけでは無いという事と、 神を侮辱するとどうなるか思い知らせるために「望みをかなえるふり」をしたわけです。

●王様の耳はロバの耳
 王様はロバの耳をしてして、それをひた隠にしますが、 いつも髪を刈りに来る床屋は王様はロバの耳である事を知っていて口止めされておりました。

しかし床屋は何時までも黙っている事が出来ず、井戸の奥に向かって「王様はロバの耳」と 大声を出して叫びますが、その声があらゆる井戸の伝わって井戸と言う井戸から「王様はロバの耳」 と聞こえ、皆にロバの耳を知られてしまった王様は「これは皆の意見を良く聞けるように ロバの耳になっている」と打ち明けるお話です。 (井戸ではなくささやいた言葉が風に乗ってというお話もあります。)

 さてこのお話は「さわると黄金になるお話」の続きなのです。 アポロンはミダス王の願いを取り消す事には同意しましたが、 罰はまのがれないと言いミダス王の耳をロバの耳にしてしまいます。

 そして耳の事が皆にわかってしまったことを知り、 もともと耳の事を知っているのは床屋ただ1人であると分かっているので、 その床屋を殺そうとしますが、 アポロンも自分を殺す十分な理由があるのに許してくれたのだからと床屋を許してやります。

 そこへアポロンが現れ「良く床屋を許してやったな。お前の罪をといてやろう」 と耳を元に戻してもらうのですね。 人に対する寛容さを説いたお話となっています。

●金の斧・銀の斧
 正直者のおじいさんが湖に斧を落としてしまい困っていたところへ、池の精が出てきて、 あなたの落とした斧はこの斧ですかと金の斧を見せ、違うというので銀の斧を見せ、違うというので 本物の斧を見せたらハイこの斧ですと答え、あなたは正直者だと3つとも全部斧をもらいます。

 これを聞いた良く出てくる業突く張りのおじいさんは(^^;正直おじいさんの真似をして斧を池に投げ、 金の斧ですかで早くも(^^;ハイと答えたので自分の斧でさえ 返してもらえなかったと言うお話です。

このお話は実は「池の精」ではなくて「伝令神ヘルメス」なのです。 このおじいさん、手が滑って斧が河に飛んでいってしまったのです。 堤防で泣いているおじいさんを見たヘルメスが気の毒に思って河に入り斧をとってあげるお話が 元々の話となっております。

 神々は正しい人には援助するが、不正な人にはその反対の事をするという教訓が語られております。

●ヘラクレスとアテナ
 少し話が変わりますが最後にもう1つお話をあげてきましょう。

 ヘラクレスが狭い道を旅しているとリンゴの様な物が落ちていました。 ヘラクレスがそれを踏んづけると2倍の大きさになったのです。ヘラクレスはもっと力を入れ 踏んづけ棍棒で殴りつけましたが、リンゴの様なものは膨れ上がり道をふさいでしまいました。

 すると女神アテナが現れ「よしなさい兄弟よ、それは口喧嘩です。人が相手にしないで ほおっておくとそのままですが、相手にするとこのように膨れ上がるのですよ」


参考引用文献

  • イソップ寓話集・山本光雄訳・岩波文庫・赤103-1
  • ギリシア神話神々と英雄たち・Bエスブリン著・三浦朱門訳・教養文庫1314D259
  • 歴史・ヘロドトス・岩波文庫

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