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学名 Draco 略号 Dra 20時の南中月日 8月初旬 星座設定者 プトレマイオス
女神ヘーラーが大神ゼウスのお妃になったとき、大地の神ガイアがお祝いに ヒュペルボレイオス人の地・ヘスペリスの花園にある「黄金の林檎の木」を贈りました。 その黄金のリンゴを食べると不死になることができたのです。そのヘスペリスの花園には巨人アトラースの娘のヘスペリス姉妹がいて、 火を噴く百頭竜ラードーン(ラドン)が黄金の林檎の木を守っておりました。 エウルステウス王から命令された、英雄ヘラクレスの12の難しい仕事の11番目に、 この黄金の林檎をとってくる仕事があったのです。
ヘラクレスはまず「ヘスペリスの花園」が何処にあるかわからなかったので、 まず北に向かいマケドニアへ、そしてイリュリアを通ってエリダヌス川まで行きました。そしてエリダヌス川にいる大神ゼウスの娘にあたるニンフ(精女)たちに「ヘスペリスの花園」 の場所を聞きました。ニンフたちは「海の老人と呼ばれる賢明・温和で予言の力があり、 トリトンの乗る海神ネーレウスに道を聞きなさい。」と教えてくれました。
ヘラクレスは海神ネーレウスのところへ行きましたが、 ネーレウスは水や火などあらゆる姿に変身して逃げ回りなかなかつかまえることができませんでした。 ヘラクレスはやっとこのとでネーレウスを捕まえて、 今度放してしまうと又何かに変身して逃げられてしまいそうなので、 道を教えるまで絶対はなしませんでした。 とうとう根負けしたネーレウスは、ヘスペリスの花園に行く道をヘラクレスに教えたのでした。
海神ネーレウスからヘスペリスの花園に行く道を聞き出したヘラクレスはリビアへ向かいました。 ようやく辿り着いたリビアには海神ポセイドンと大地の神ガイアの子のアンタイオスがおりました。 アンタイオスは巨人で通りすがりの旅人に相撲を挑み、相撲に勝つとその旅人を殺して、 その旅人の持ち物で父ポセイドンの神殿を飾っていたのです。いつもの通りアンタイオスは旅人ヘラクレスに相撲を挑みました。 怪力無双のヘラクレスはアンタイオスを投げ飛ばし大地に叩き付けましたが、 アンタイオスは大地の神ガイアを母に持つので大地に投げられる度に強くなっていきました。 そこでヘラクレスはアンタイオスを持ち上げて首を絞めて殺したといわれております (持ち上げる話は後世に付け加えられたようです。)
ヘラクレスは旅を続けました。ある時眠りについていたヘラクレスは、 ピグミーたちに襲い掛かかられました。 でもピグミーたちはとても小さかったので、ヘラクレスはネメアのライオンの毛皮を脱いで、 その毛皮の中にピグミーたちを包んで縫い込んでしまったといいます。
ヘラクレスはリビアからエジプトに行きました。 エジプト王の暴君ブ−シーリスは飢餓を終わらせるために毎年1人異邦人を犠牲にしておりました。 そしてブ−シーリス王はエジプトにやってきた異邦人ヘラクレスを捕らえて生け贄にしようとし、 また、王は山賊にヘスペリス姉妹をさらってくるように命じていたのです。そこでヘラクレスは山賊を討ち、暴君ブ−シーリスとその息子のアムピダマースを殺して、 生け贄の習慣を止めさせたと言います。
(これには別の話がありまして、ブ−シーリス王や山賊倒し、 さらってこられたヘスペリス姉妹をアトラスに返し、 その地の英雄の欲するものをあたえて、天文を教えたとする所伝もあるようです。)
ヘラクレスは、アジアのリンドス人の港テルミュドライに行って、 牛追いの牛車から牛を奪って大神ゼウスへの生け贄にしました。 牛を奪われた牛追いはヘラクレスにはとてもかなわないので、 山の上に登り呪ったというのです。この故事によりヘラクレスへの儀式で犠牲を捧げる時には、 呪いを唱えることから始まることになったのであるそうです。
それからヘラクレスはアラビア行きエマーティオーンを殺し(注1)、リビアを通り海に出ました。 そこで太陽神ヘリオスから黄金の大盃(2本マストのバーク帆船)を貰って向かい側の大陸に渡り、 カウカソスの山頂に辿り着きました。
カウカソスの山頂には、昔、大神ゼウスの電光を造るペパイストスの鍛冶場から火を盗んで、 ゼウスが人間から奪った火を再び人間に与えた罪(異説あり) で罰を受けているプロメテウスがおりました。 プロメテウスの罰は、岩に縛られているプロメテウスの肝臓を エドキナと「うお座」のお話に出てくる怪物テューポーンの子である鷲に ついばませるというものでした。 夜になると肝臓は再生するので、次の日にはまた鷲が肝臓をついばみに来るという 「いつまでも終わることの無い苦しみ」でありました。ヘラクレスは「ヒュドラーの毒矢」でこの鷲を打ち落として、 プロメテウスを永遠の苦しみから解放してあげました。 この時の鷲が「わし座」に、ヒュドラーの毒が塗ってある矢が「や座」になったという お話もあります。
プロメテウス(先に考える人という意味があります)は、解放してもらったお礼にヘラクレスに 「ヘラクレスよ。ヘスペリデスの林檎は自分で採りに行かないで、 君がアトラスに代わって一時蒼穹(天)を担いで、アトラスに林檎を採りに行って貰いなさい。 その時に・・・・・」とある策を授けてくれました。
ヘラクレスはヘスペリデスの花園のあるヒュペルボレイオス人の地にようやく辿り着き、 天をかついでいるアトラースに出会いました。 ヘラクレスはプロメテウスの教えの通りアトラスにこう言いました。 「天空を担ぐアトラスよ。私はヘスペリデスの花園にあるリンゴがほしいのだが、 あなたが代わりに採って来てはくれないだろうか。その間天空は私が担っているから」 アトラスは一時でも天を担ぐ負担から解放されるので快く引き受けてくれました。天空を担ぐことを引き受けたヘラクレスは、天空のあまりの重さにビックリしました。 ヘラクレスは満身の力を込めて天空を支えました、そのときヘラクレスと親しい女神アテナが来て、 腕と手で軽やかに天空を支えるのを手伝ってくれたのです。(B4)
ヘラクレスがアトラースに代わって天空をかついでいる間、 アトラースは竜が昼寝をしてい時を狙ってヘスペリスの花園に行って、 黄金の林檎を3つとってきてきました。
アトラスはヘラクレスのところに来て 「ヘラクレス。私がこのリンゴをエウルステウス王の所へ届けてあげよう」と言いました。 ヘラクレスは、そんなことをいってアトラスが二度と帰ってこないつもりであることを 感じていましたので、プロメテウスが教えてくれた通りにアトラスに話しかけました。
「アトラスよ。それではあなたがエウルステウス王の所へ行っている間、 私はもう暫く天空を担いでいなければならないね。 今天空を支えている頭がいたので、円座(丸いクッション)を載せたいのだ。 それを頭に載せる間チョット天空を持っていてくれませんか。」それではとアトラスはリンゴを地上に置き蒼穹を受け取ったので、 ヘラクレスはリンゴを拾って立ち去りました・・・ナハ・ズッコイ(^^;
ヘラクレスからリンゴを受け取ったエウルステウス王は、そのリンゴをヘラクレスに贈ったので、 ヘラクレスは女神アテーナーにリンゴを渡し、 リンゴは女神アテーナーにより再びヘスペリスの花園に戻されました。
この竜は長い間林檎の木を守った功績でヘーラーが星座に加えたといわれております。
古代ギリシアでは円盤状の地に、天空のドームが付いているような宇宙を想像していたようです。 次第に自然法則が明らかになったり、地理的見識が広がった結果、「地の果て」「ヘスペリスの花園」 「天国」といったような場所が時代と伴に変化していったようであります。
ヘスペリスの花園はいわゆる「天国」に近い、又は「天国」若しくは「楽園」という ニュアンスも含まれます。 当初花園は円盤の円周にある西の果て大洋オーケアノスの近くにあるといわれ、 後にアトラス山脈の近くに、又はヒュペボレイオス人(ヘスペリデスに何処か発音が似てますね) の国にあると考えられておりました。一説にはリビアであるともいわれているようです。
アトラスの娘ヘスペリデス姉妹はヘスペリスの娘、つまり「夕べの国」意味があります。 後代の話においてヘスペリデス姉妹はアイグレー・エリュテイア・ヘスペラートーサ・ ヘスペリアー・アレトゥーサ他全部で7人であるとされました。
[多くの羊(μη~λα)という単語は「羊」と「林檎」の意味を持っておりました]
今回のお話ではヘラクレスはアトラスに林檎を採って来てもらいますが、 そうではなくヘラクレス自身が採りに行き、黄金のリンゴの木を守っているラドンを ヒュドラーの毒矢を使い倒して林檎をとってきたという所伝もあります。またこの後、ヘラクレスの案内でアルゴ船がヘスペリデスに接岸したときに、 ラドンはまだのた打ち回っていたと言います
また、お話の順序が本によりマチマチでしたので(A1)の順序に従いました。
すみません。ヘラクレスが何の理由でエマーティオーンを殺したかわかりませんでした。エマーティオーンはティートーノスと曙の女神エーオースとの子供です。 女神エーオースはゼウスに、恋人エマーティオーンに永遠の生命を与えてくれるよう頼みましたが、 永遠の若さも一緒に頼むことを忘れてしまったので、エマーティオーンは次第に歳をとり、 やがては声だけになってしまったので、 女神エーオースはエマーティオーンを「せみ」に変えたといいます。
黄金の林檎はヘラクレスから女神アテナに手渡されヘスペリスの花園に戻されたのでありますが、 その間にアテナはこの林檎を女神アプロデーテーに貸しておりますので、そのお話を付け加えておきます。
アタランテーはアルカディアのマイロス王(こぐま座のアルカスの子ともいわれます)の 子供(異説が多くあり)でありましたが、王は後継ぎになる男の子が欲しかったので アタランテーを森に捨ててしまいました。そして森で牝熊がアタランテーに乳をあげているところを猟師が見つけて育てました。 それからアタランテーは月の女神アルテミスのお供の女猟師となったといいます。
彼女は襲ってきたケンタウルスを2人殺し、また、 アルゴ船の遠征(とも・ほらしんばん・りゅうこつ座で予定)に加わり、 カリュードンの猪狩り(ヘラクレス座で予定)に参加し、 後にペーレウスとの相撲にも勝つほどの豪傑であったのです。
アタランテーは両親と再会しました。父は後継ぎが居ないのでアタランテーに婿を貰い 二人でこの国を治めてくれないかと頼みました。アタランテーは無下に断るわけにもいかないので、 条件を出しました。「私を妻にしたい王子は私より足の速い人でなければなりません。そして私と競争して負けた者は 命を失わなければなりません。」
父はその条件をのみ、この条件で婿を向かえるとギリシア全土に使いを出しました。 足の速さに自身がある王子は沢山にいたのですが、みんなアタランテーに負けて殺されてしまい、 ついには一人も勝負を挑んでくる者はいなくなってしまいました。
アタランテーの従兄のメラニオンは、アタランテーを見ると好きになってしまいましたが、 競争したら負けるに決まっているので、思案の末に愛と美の女神アプロディーテーに助けを求めました。女神アプロディーテーはアタランテーが愛と結婚を馬鹿にしていた事に、腹が立って (女神アプロディーテーは月の女神アルテミスと仲が悪いこともあり)おりましたので、 メラニオンに助力してあげることにしました。
女神アプロディーテーは女神アテナの所に行って、 ヘラクレスがヘスペリデスの園からとってきた三つの黄金の林檎 を借りてきてメラニオンに手渡したのです。
こうしてメラニオンはアタランテーに競争を申し込みました。
競争のコースが決められ二人は走り出しました。 アタランテーは何時もの通り槍を持って後からスタートしました。いつも最後に小気味よく抜いて ゴールしたあと、持っている槍で相手を刺していたのです。メラニオンはアタランテーが追いついてくるのを見ると 黄金の林檎の一つを彼女の前に転がしました。 アタランテーはその林檎を見たとたんに、何故かどうしても欲しくなってしまいました。 「少し遅れてもまたすぐに追いつける」と思ったので立ち止まりリンゴを拾いました。
遅れを取り戻そうとするアタランテーはとても早くあ!っと言う間に追いついてきてしまいました。 メラニオンは黄金の林檎の二つ目を彼女の前に転がしました。
アタランテーはまたそのリンゴが欲しくなり、立ち止まりリンゴを拾ってしまいました。 しかしリンゴを拾うと瞬く間にメラニオンに追いついてしまいました。
メラニオンは最後の三つ目の黄金の林檎を投げました。 アタランテーはこれを拾ってもまだ追いつけると思い、走りざまリンゴを拾うと全力で走りましたが、 メラニオンは黄金の林檎のお陰でアタランテーより 一瞬はやくゴールすることが出来たのです。
こうして この二人は結婚しアルカディアの王様とお妃様として幸福に暮らしたと言います。
と、普通、ここで話が終わってしまうのですが、後日談があります。この二人は事もあろうに、ゼウス神殿で交わったのでゼウスの怒りを買い、二人ともライオンに 変えられてしまいました。この後アタランテーはテーバイに向かう七将の一人パルテノパイオス を生んだと言われております。
参考引用文献
A1☆ギリシア・ローマ神話辞典・高津春繁著・角川書店B1☆星座手帳・草下英明著・教養文庫・658・c028
B2☆星座の話・野尻抱影著・ちくま文庫・490・476
B3☆星座神話クラブ・脇屋奈々代著・誠文堂新光社
B4☆星のギリシア神話・シャーデヴァルト著・河原忠彦訳・白水社C1★21世紀星座早見ガイド・林完次著・講談社・B1069