『仙台叢書. 第17巻』 仙台叢書刊行会 編

 一七四頁
 航米日錄巻之一

萬延元年戊申春正月十有八日。正使外國奉行。豊前守新見使君。副使外國奉行。淡路守村垣使君。御目付豊後守小栗使君。其外屬官從臣總計七十七人。各輕装にて米州華盛頓へ條約を結んと。廟命を蒙り彼より艤したる。ポーハタン號(船名)へ乘り渡られける。是本邦剖判以來の快事。有志者誰れか陪扈を欲せざらんや。唯人員に限あるを如何せん。予幸にして新見使君に陪するを得る。元より書生にして俗務に暗し。賤事を務むるは當然なり。然れども船中の紛擾閑を得る能はず。且萬里外の地。語音侏離鴃舌更に通ぜず。何を以てか其政事物情を。深く探るを得んや。遺憾といふべし。是を以て予獨見に從ひ漫然記す。定めて誤り多からん。然りと雖も一を以て十を推す。其大略を知る難からざるべし。是他の笑を顧みざるの所以なり。

引用・参照

『仙台叢書. 第17巻』 仙台叢書刊行会 編 (仙台叢書刊行会, 1929)
(国立国会図書館デジタルコレクション)