小栗上野介日記
　(一五-八七頁)

　　　慶応三年丁卯歳正月小

　朔日　辰　天気能

　　一　年始御礼ニ付五時口登城致し御登城後装束着替致し、於大広間御礼御謁相
　　　　済、御退出後ハツ時前退出致ス
　　一　大平備中守年始ニ来ル
　　一　口口半右衛門同断来ル
　　一　万才若松福太夫来ル
　　一　朝雑煮、昼口口其外祝事如例年
　　一　表奥とも年始之礼を請候
　　一　戸田ゟ年始ニ相越侯

　二日　巳　曇

　　一　今日割休在宿致ス
　　一　今日之祝事如例年
　　一　日下数馬殿年始ニ入来
　　一　大久保土佐守同断来ル
　　一　戸田悟水年始ニ来ル
　　一　八木田桂次郎同断来ル
　　一　松野三平次来ル、於奥逢申候
　　一　藤沢志摩守、一色摂津守、古賀謹一郎、御用向ニ付寄合申候
　　一　柴田松庵年始に来ル
　　一　柳栄助同断来ル

　三日　午　天気能

　　一　四ツ時登城、ハツ半時退出致ス
　　一　今日之祝事如昨日
　　一　戸田肥後守年始ニ来ル
　　一　日下寿之助同断来ル
　　一　加納次郎作来ル、逢申候
　　一　滝川播磨守方へ夕刻より被招相越ス

　四日　末　天気能

　　一　四ツ時登城、七ツ半時過退出致ス
　　一　去月廿九日
　　　　主上御不予之処、御養生不被為叶、崩御被遊侯ニ付、御目見且以上之分追而
　　　　相達侯迄、月代為剃申間敷旨、同日於京都被仰出候段御書付出ル、且普
　　　　請鳴物とも停止之旨是又同断
　　一　主上、崩御之趣今日京都より御状御到来ニ付、即日松飾取払、殿中平服と相
　　　　成候段御大目付、滝川播磨守申聞候
　　一　戸田五介年始ニ来ル
　　一　浅田宗伯同断来ル

　五日　申　曇

　　一　例刻早メ登城、薄暮退出致ス
　　一　戸田悟水来ル
　　一　日下寿之助来ル

　六日　酉　曇昼後雨夜雷

　　一　四ッ時登城　薄暮退出致ス
　　一　木村甲斐守来ル、於奥逢申侯
　　一　柴田松庵来ル
　　一　戸田肥後守来ル

　七日　戌　朝雨昼後晴

　　一　四ッ時登城、七ッ時過退出致ス
　　一　又一横浜より今日帰リ申候
　　一　滝川寛太郎来ル
　　一　お見紀来ル

　八日　亥　曇夕雨

　　一　四ッ時登城、暮六ッ時前退出
　　一　又一磨利四天へ参詣いたし候
　　一　日下寿之助、星野、伊藤、又一方へ来ル

　九日　子　天気

　　一　横浜御用有之候ニ付、今朝五ッ時過出張いたし候
　　一　又一、実家へ相越申候
　　一　覚正院様忌日ニ付、保善寺へ堅太夫罷出候
　　一　栄春一来ル

　十日　丑　曇

　　一　留主中
　　一　又一、王子辺迄他行致ス
　　一　忠高院様御忌日ニ付、保善寺へ祐左衛門罷出候
　　一　柴田松庵来ル

　十一日　寅　曇

　　一　横浜表御用済、御船ニ而浜御軍艦所へ罷帰り、夫より登城致七ッ時
　　　　済、御船一一肩浜御軍艦研へ罷帰り、夫より　登城致七ッ時過退出いたし候
　　一　浅野美作守来ル
　　一　駒井孝三郎、悌四郎来ル

　十二日　卯　晴曇北風

　　一　例刻早メ登城、七ッ時過退出
　　一　又一浅草辺へ相越ス
　　一　戸田肥後守悟水来ル

　十三日　辰　曇昼後雪

　　一　昨夜より風邪ニ付頼合今日登城不仕侯
　　一　浅田宗伯、柴田松庵来ル

　十四日　辰　已天気能

　　一　不快二付頼合申侯
　　一　戸田肥後守来ル
　　一　柴田松庵采ル
　　一　浅田宗伯見舞申侯
　　一　尾台良作年始ニ来ル
　　一　栗本安芸守来ル　於奥逢申候

　十五日　午　天気能北風

　　一　不快頼合申
　　一　性覚院態、貞鏡様御祥月ニ付保善寺へ真彦罷出候
　　一　又一、川勝近江守方へ相越ス
　　一　戸田肥後守悟水来ル
　　一　柴田松庵来ル

　十六日　未　晴曇

　　一　不快頼合申
　　一　浅野美作守．瀬川播磨守来ル
　　一　又一、実家へ相越、夫ゟ徳永へ相越申候
　　一　一色摂津守、古賀謹一郎来ル
　　一　石原順之肪来ル、於奥逢申候
　　一　春光院殿此本御逗留被成侯
　　一　浅田宗伯来ル
　　一　柴田松庵来ル

　十七日　申　曇雪

　　一　不快頼合申
　　一　柴田松庵来ル
　　一　古賀謹一郎来ル、於奥逢申侯

　十八日　酉　曇

　　一　今日惣出仕ニ付引込御届同役ゟ差出申候
　　一　戸田悟水来ル
　　一　和田遅醒来ル
　　一　春光院殿今日御帰被成侯

　十九日　戌　天気能

　　一　不快引籠申
　　一　浅野美作守来ル
　　一　萬年新太郎来ル、於奥逢申候
　　一　　駒井甲斐守今日御用召ニ付、又一昼後ゟ相越申侯
　　一　柴田松庵来ル
　　一　日下数馬殿入来
　　一　高臺寺様御祥月ニ付保善寺ヘ代拝堅太夫罷出御祭致ス

　廿日　亥　天気能

　　一　引籠中
　　一　又一今朝横浜江相越申侯
　　一　戸田肥後守来ル
　　一　熊井来ル
　　一　柴田松庵来ル

　廿一日　子　天気能

　　一　不快全快、今日出勤例刻登　城、七ツ時過退出致ス
　　一　小栗上総守、浅野美作守御用向ニ付寄合申候
　　一　柴田松庵来ル
　　一　戸田肥後守来ル

　廿二日　丑　晴曇

　　一　例刻登　城　七ツ時退出致ス
　　一　日下数馬殿来ル
　　一　戸田悟水来ル

　廿三日　寅　曇

　　一　例刻登　城、暮六ツ時退出致ス
　　一　柴田松庵来ル
　　一　加納次郎作来ル、於奥逢申候

　廿四日　卯　天気能

　　一　例刻登　城、暮六ツ時退出致ス
　　一　戸田肥後守来ル
　　一　屋代増之助来ル、於奥逢申候

　廿五日　辰　晴曇

　一　例刻登　城、薄暮退出致ス
　一　滝川播磨守方へ不快見舞ニ相越申候
　一　戸田肥後守来ル

　廿六日　巳　折々雨

　一　朝五ッ半時より高輪接遇所へ応接ニ相越、夫より芝増上寺へ相越御霊屋
　　　御普請所見廻りハッ半時過帰宅致ス
　一　戸田悟水来ル
　一　栄春一事上和田と相成今日来ル

　廿七日　午　晴曇

　一　例刻登　城七ッ時過退出致ス
　一　柴田松庵来ル

　廿八日　未　朝雨夕晴

　一　例刻登　城退出より浅野美作守方へ寄合ニ付相越、夜四ッ時帰宅いたし候
　一　日下数馬殿入来

　廿九日　申　天気能

　一　例刻登　城暮ニ及退出致ス
　一　上和川来ル
　一　戸田五介来ル
　一　加納次郎作来ル、於奥逢申侯

　　二月大

　朔日　酉　天気能 　一　例刻登　城薄暮退出致ス
　一　小笠原刑部来ル、於奥逢申候
　一　戸田肥後守来ル
　一　駒井甲斐守来ル
　一　浅田宗伯、柴田松庵来ル

　二日　戌　天気能南風烈

　一　例刻登　城暮ル及退出致ス
　一　松平周防守殿家来参り於中奥逢申候

　三日　亥　天気能

　一　例刻登　城薄暮ニ及退出致ス
　一　戸田悟水来ル

引用・参照

『群馬県史料集　第七巻　小栗日記』昭和四十七年九月二十日発行
群馬県文化事業振興会