『維新前後の政争と小栗上野の死』

 前編 小栗上野の功業と冤死

 十一 小栗上野の人物と性格

 150頁
 (十)小栗の屋敷と土方久元

 小栗上野介の屋敷は、神田駿河臺にあつた。維新以後旗本の屋敷は總て取り上げられたものであり、小栗の家屋敷は、土佐の土方久元の占領するところとなつたが、此の屋敷の中に、小栗上野介は、米國にて體験せし所に從ひ、江戸の最初にして江戸唯一の石造洋館を建てたのであつたる即ち東京としては、洋館住居の第一人者は、確かに小栗上野介であつたのである。面白き話である。
 彼は、政治,經濟、財政、外交等の國務に付て、日本の改造者であつたのみならず、彼は生活問題に付ても、改造者であつた。彼を目して、日本改造の先覺となすも、過言ではなく、誇張ではなく、正しき判決である。

引用・参照

(図01 小栗又一の箇所に黒丸付加)
〔江戸切絵図〕. 駿河台小川町絵図 古典籍資料(貴重書等)/絵図
景山致恭,戸松昌訓,井山能知//編 (尾張屋清七, 嘉永2*文久2(1849-1862)刊)

(図02 小栗上野介の箇所に赤丸付加)
江戸絵図. 1号 古典籍資料(貴重書等)/絵図

『維新前後の政争と小栗上野の死』 蜷川新 著 (日本書院, 1928)
(国立国会図書館デジタルコレクション)